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ルーツ生かして「新韓楽」 ジャズピアニスト在日3世のハクエイ・キムさん
ハクエイ・キムさん

 2005年5月、DIW(ディスクユニオン)よりデビュー・アルバム「Open the Green Door」を発表し、日本のみならずフランスのジャズ誌『JAZZ MAN』で4つ星の高評価を受けるなど、ジャズ界で活動する在日韓国人3世のジャズピアニスト、ハクエイ・キム(金伯英)さん。12年から毎年、在日同胞の韓国伝統楽器奏者、ミン・ヨンチ(閔栄治)さんらと組んだユニット「新韓楽」公演が2月18・19日、東京・新宿区の韓国文化院ハンマダンホールで開かれる。韓国伝統音楽とジャズの出会いは、音楽シーンに旋風を巻き起こし、日本はもちろん韓国でもファンが急増中だ。

伝統音楽と衝撃の出会い
コラボで世界に挑む

 09年にジャズトリオ「トライソニーク」を杉本智和(b)、大槻"KALTA"英宣(ds)と共に結成。10年8月には、サックス奏者の渡辺貞夫氏のツアーグループに抜擢されなど、ジャズピアニストとして活躍中のハクエイさんが目指す音楽の一つの形が「新韓楽」だ。

 ミンさんが率いる韓国伝統音楽家たちとハクエイさんが率いる「トライソニーク」のコラボレーションは、独自の新しい世界を創り出し、両国で高い評価を得ている。双方の情熱のぶつかり合いに、聴衆は圧倒されるに違いない。

 今回参加する韓国のチュ・ポラさん(カヤグム)とイ・ポングンさん(パンソリ、ヴォーカル)は、海外での演奏経験も豊富で、多彩な文化にも触れている実力派。メンバー同士のあうんの呼吸はぴったりだ。

 ハクエイさんがミンさんに出会ったのは6年ほど前。ライブを聴きに来たミンさんを紹介された。当時、高校卒業後に留学したオーストラリア・シドニー大学音楽院から11年ぶりに帰日して間もない頃。自分らしいジャズのスタイルで身を立てなければならず、何かにつなげるという発想には至らなかった。

 その頃、ハクエイさんの師匠で、同院で教えていたオーストラリアジャズ界の重鎮、マイク・ノック氏からドキュメンタリーDVD「人はなぜ歌い、人はなぜ奏でるのか/オーストラリア人ドラマーの旅」をプレゼントされた。ジャズ・ドラマーのサイモン・バーカーさんが、シャーマン音楽界の首領である金石出氏の音楽を聴いて衝撃を受け、パンソリなどの音楽家たちと会いながら、金氏のいる釜山へ旅する物語だ。ノック氏はいつも「僕のルーツを大事にし、絶対にそれを自分の音楽に生かしたほうがいいと言っていた」。

 ハクエイさんは「それまで自分のなかで在日韓国人で誇りに思うとか、何をもってというのが無かったのが、韓国の伝統音楽を聴いて、僕のルーツにもこんな素晴らしい音楽があったんだというのが衝撃で、もっと知りたいなと思ったときにミンさんを思い出した」。

 5年ぶりに再会したミンさんと音合わせをした時、「これはいける」と2人による共同の曲作りが始まった。そのままの勢いで開催したのが、東京・王子ホール(12年)と大阪・BIGCAT(13年)の公演だ。「今まで僕たちが経験したことのないような感触だった。僕にとって彼らとのユニットはライフワークだなと思えるようになった」と振り返る。

 14年のソウル公演では「お客さんからエネルギーをもらったときに、自分の中にも韓国的な熱さというのがあるというのはすごく感じた」。

「いいな在日」その日夢見て

 ハクエイさんはミンさんとの出会いをきっかけに、韓国との関わりが増えていく。

 12年に公開された、浅川巧の半生を描いた韓日共同制作映画「道〜白磁の人〜」(高橋伴明監督)のエンディングテーマ曲の作曲と演奏を担当。韓国ではデモンストレーションやワークショップなども行っている。今年から韓国語の勉強を始めたそうだ。

 現在、「新韓楽」の公演は日本と韓国だが、いずれは「世界に持っていきたい。国境をまたいで世界に発信できるクオリティーのものを僕たちはやっている」と言葉に熱が入る。公演には多くの在日の子どもたちも聴きに来るという。

 「本名を名乗り音楽の世界で生きてきて、韓日の人から羨ましいと思えるような存在になりたい。在日であることが、いつの時代になるかは分からないけど『いいな在日で』と言われくらいにならないと」

 在日である自分を受け入れるまでに約33年かかったという。自分の姿を通して、若い在日たちの生きるヒントになればと話す。「在日であることが僕は有利だと思う。だって人と違うんですよ、人と同じじゃ困る業界にいるし、人と違うことは素晴らしいんだって思っている」。ハクエイさんの新たな挑戦は始まったばかりだ。今後の活躍を見続けたい。

■□
留学で「音楽観」を培って

 ハクエイ・キム 韓国人の父と韓日のルーツを持つ母との間に、京都市で生まれ、北海道で育つ。5歳の頃からピアノを始め94年YAMAHA主催「ティーンズミュージックフェスティバル札幌」でベストキーボーディストを受賞。高校卒業後、シドニー大学音楽院に入学。マイク・ノック氏に4年間師事し、音楽観に多大な影響を受けた。

 11年1月、ユニバーサルミュージックジャパンの新レーベル「area azzurra(アレア・アズーラ)」の第一弾アーティスト/作品として「トライソニーク」でメジャー・デビュー。タイトル曲はテレビ東京系列全国ネット「美の巨人たち」のエンディング曲に採用された。

 同年12月、初のソロ・ピアノ・アルバム「ブレイク・ジ・アイス」を日本と韓国でリリース。翌年2月にはDVD「ソロ・コンサーツ」をリリース。13年7月10日に「トライソニーク」として初めてエレクトリック・サウンドを採用した最新作「ボーダレス・アワー」を発表した。

■□
「新韓楽」公演

 2月18、19日(19時開演)は、韓国文化院ホームページ、FAX、往復はがきのいずれかで申し込み。各回300人。1日締切。詳細は同院ホームページ(http://www.koreanculture.jp)。


(2015.1.28 民団新聞)
 

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