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「かぞくのくに」体験を映画に…2世ヤン・ヨンヒ監督に聞く
梁英姫監督
「かぞくのくに」の一場面
「かぞくのくに」の一場面

離散の哀しみ、今なお重い
 ドキュメンタリー映画「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」のヤン・ヨンヒ(梁英姫)監督による初フィクション映画「かぞくのくに」(配給=スターサンズ)は、1959年12月から始まった北送事業を背景に、離散した自身の体験をモチーフにした。70年代、北送事業で北韓に渡った兄ソンホ(井浦新)が、病気治療のために日本に一時帰還するところから物語は始まる。実直な妹リエ(安藤サクラ)、旗振り役の総連幹部として息子を北韓に送り出した父、そして母を通して、引き裂かれた家族の悲しみを描く。

「知らぬふりできぬ」…問う「北送」とは、「家族」とは

 「地上の楽園」との虚偽宣伝のもとに59年12月から始まった北送事業は、84年7月まで行われた。北韓に渡った在日同胞は、その日本人妻を含めて9万3000人余におよぶ。

 映画は、北送事業で北韓に渡った3人の兄を持つ、ヤン監督自身の実話が基になっている。実際に、70年代に帰国船に乗った兄たちを新潟港で見送った。ヤン監督は映画製作に至った一つの理由に、「目撃者として、それを知らないふりはできない」と話す。

 主人公は、ヤン監督の兄3人を1人の人格にしたソンホと、自身を投影させたリエだ。

 病気治療のために3カ月間の滞在を許されたソンホ。その後に監視役がついて来る。ソンホは仲間たちとの再会を喜び、リエと買い物にも出かける。一方、ソンホの治療のための検査が行われるが、担当医に3カ月では責任を持って治療できないと言われてしまう。父親は滞在の延長を申請しようとし、リエは違う医者を見つけようと頑張る。だがその翌朝、「明日、帰国するように」との指令を受けたソンホは、母に「明日、急にピョンヤンへ帰ることになった」と告げる。

 その事実を知ったリエは、監視役に駆け寄り「あなたもあの国も大っ嫌い」と、思いのたけをぶつける。

■北韓の実情を語れぬつらさ
 選択の機会が全くない北韓社会で生きるソンホと、生まれた時から自由に生きてきたリエのコントラストは、離ればなれの家族の悲しみをさらに浮き立たせる。

 印象に残るのは、ソンホが仲間たちやリエから北韓について説明を求められると、口をつぐんでほとんど語らない場面だ。日本に来てまでも北韓の体制の重しは、はずれない。

 今回のキャスト陣の中で、特に目を引くのが安藤サクラの迫真の演技だ。

 ヤン監督は「演技を超えている。本人も『本当に怒っていた』と言っていた。それは、お兄ちゃんを持って行かれる、お兄ちゃんの病気を治したいのに治させてくれないとか、何で、何でって、本当に妹になり切っていた」と語る。

 当時、多くの在日同胞は、北韓へ行けば幸せになれるとの宣伝キャンペーンを信じて海を超えた。だが、その実態は全く異なる。総連幹部は日本での生活を楽しみながら、「あの国は素晴らしい」と平然と言っている。厳しい管理下に置かれ、自分の意志をも表現できない北韓の在日同胞と、その家族に謝罪すらしていない。

■離れ離れでも情愛こそ支え
 映画は家族の姿を通して、国家とは何か、家族とは何か…。という普遍的なテーマを問いかける。さまざまな重荷を背負いながらも、揺るがない家族の情愛は、北韓と日本に分かれて暮らす家族の心の支えになっている。

 北韓に暮らす在日同胞らは、苦境を強いられている。それでも彼らは今を、必死で生きているのだ。家族を引き裂き、悲しみのどん底に突き落とした元凶は北送事業にある。そして今も続く北の体制。

 未だに再会を果たせない在日同胞家族がいることを忘れてはならない。

 「かぞくのくに」は8月4日から、テアトル新宿、109シネマズ川崎ほか全国ロードショー。

◆ヤン・ヨンヒ
 1964年11月11日大阪市生まれ。05年に初の長編ドキュメンタリー映画「ディア・ピョンヤン」を発表、ベルリン国際映画祭で受賞し高い評価を受ける。09年に2作目「愛しきソナ」を発表、今年3作目になる「かぞくのくに」を発表し、ベルリン映画祭国際アートシアター連盟賞を受賞した。

(2012.7.25)
 

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