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今春クランクインの「テコン」 総指揮者・北村龍平監督が語る
映画「テコン」のイメージ画
「在日」との絆に思い込め

 「この映画を見た全員に伝わるかは分からない。それでもその中の100人でも10人でもいい、その人の人生が変わるような映画を作りたい」。日本映画「あずみ」や「ゴジラファイナルウォーズ」などを手がけた大阪出身の北村龍平監督(41)が、大阪・鶴橋を舞台に、テコンドを題材にした新作映画「テコン」を今春にもクランクインする予定だ。構想から2年。本作には自身の大切なメッセージが秘められている。

遊び場だった鶴橋を舞台に
混沌・パワー活写したい

「撮影が簡単にいかないから止めるくらいのモチベーションだったら、最初から僕はやりたくない。強いモチベーションで作った作品というものは必ず、伝わっていくものと思っている」

 07年から活動の拠点を置いたハリウッドから一時帰国して、製作総指揮として臨む。メガホンをとるのは、北村監督の監督補としてだけでなく、脚本、スチル、メイキングなどを手がける向井宗敏さん。初監督作品となる。

 映画「テコン」は、日本人の不良少年の主人公が韓国のテコンドに出会い、在日一家と絆を深めながら、ようやく自分の居場所を見つけ、人間として成長していくという内容。在日少女とのラブ・ストーリーも描かれる。撮影は鶴橋をはじめ、セットを組む大阪・住之江区のアジア太平洋トレードセンター(ATC)、韓国でも予定している。

日本人の視点で

 大阪・豊中市出身。子どものころから鶴橋は遊び場で、在日の大親友がいた。韓国と韓国映画、そして格闘技が好き。はっきりした性格は、たびたび韓国人に間違われることもあるそうだ。

 本作を手がけるきっかけは約2年前、一時帰国したときに韓国の仲間たちと「テコンドの映画がない」という話が出たことだった。このとき、今も心に強く残る映画が浮かんだ。

 84年に第1作が公開され、大ヒットしたアメリカ映画「ベスト・キッド」。内気な子どもが格闘家の師と出会い、修行を積みながら心身ともに成長していくという物語。アメリカを舞台に、アメリカ人の主人公が空手を習うなどの設定が、多くの人たちの心をとらえた。昨年は26年ぶりにリメイクされた。

 「日本人が空手の映画を作っても話題にはならない。日本人の視点からテコンドの映画を作ったらどうか」。大阪には日本最大のコリアンタウンがある。日本人と在日、そしてテコンドという話のなかで、ぱっと見えた。「『ベスト・キッド』みたいな映画ができるんじゃないか」

 これまで共同制作のパートナーを探しに、何度か韓国に足を運んだ。出会った人たちは皆、意表を突かれたように「どうして日本人がテコンドなのか」と聞いた。「まさに、そこからじゃないと面白くないと。エンタテイメントの映画というのは、そこから出発する。僕が物を作るとき興味が引っかかるところは何か、当たり前のことを当たり前にやることには何の魅力も感じない。『そんなことをやるのか』というところからやっていかないと面白くない」

 鶴橋は混沌としながら情熱とエネルギーに満ち満ちていると話す。それはロスのコリアンタウンにもない雰囲気だ。「鶴橋のような街はなかなかない。ここを舞台にどうせならど真ん中でやりたいと思った」

「テコンド魂」に焦点

 だが、日本の映画業界の人間に構想を話すと「鶴橋ではロケはできない」の一言で終わってしまう。「大変なことを大変だから止めようという発想が、昔から僕にはない。大変なことを諦めて、簡単なことをやるんだったら誰にでもできる。大変なことをやらないで何の意味があるんだと思って僕はずっとやってきた」

 大ヒット漫画「あずみ」の映画化は長い間、困難とされてきた。実際に北村監督が作品を撮るときも「実写は不可能だ」と言われ、「ゴジラ…」のときも、そしてハリウッドに挑戦するときも「そんなのは無理」だと否定された。

 「僕は難しいことの方が燃える。それを成し遂げた映画でないと、見た人に対して説得力がないと思っている。『テコン』のような作品だったり、僕のやっている作品のほとんどは、何かを伝えたいという思いがある。それは簡単にやったことと、全身全霊をかけてやってきたこととは伝わり方が全然、違う」

 自身もまた、子どものころに見た映画から多くのことを学んだ。8歳から一時期、オーストラリアで暮らした。すぐさま、いじめの対象になった。「肌の色が違うから問答無用です。ぼこぼこに殴られているような毎日だった」

 それでもへこたれなかったのは、生きる力や目標を与えてくれた映画があったからだ。「『ベスト・キッド』や『ロッキー』のような映画を見て、弱い人間でも頑張れば強くなれると思ってきた。僕はそういう映画からエネルギーをもらって育った」

 だが残念ながら今の日本には、人生に影響を与えるような映画はほとんど見当たらないという。「僕は若い人たちにエネルギーを与えたい。無理なんてことは関係ない。お前がやるって言ったら、やればいいだけだというメッセージは、まさに『テコン』での話になっている」

 本作がテーマとしたテコンド魂には理由がある。60年初頭、自分たちの国技であるテコンドを普及させるため、道着一つを持って、世界中に出ていった韓国の若者たちがいた。彼らには強固な覚悟があった。この覚悟こそが、礼節、廉恥、忍耐、克己、不屈のテコンド魂だという。

 「無謀なこととか、垣根を超えて自分の信じる道を貫いていこうする人たちがたくさんいた。それが僕にとってのテコンド魂だ」

在日らの協力も

 準備期間に2年余りを要した。大阪市の協力が得られ、韓国の世界 挙道連盟の後援も決まった。多くの在日たちが協力を名乗り出ている。だが、まだ資金集めで苦労するなど、全てが順風に進んでいるとは言い難い。

 長編第1作のバイオレンス・アクション映画「ヴァーサス」では、「どうやって生きてたのか分からない状況で作った」というほど、苦労の連続だった。それでも確固たるはがねの意志と目標、そして情熱は多くの人たちの心を動かし、運も呼び込んで一つに集結した。奇跡を少しでも残していくこと、それが映画だという気がしている。

 北村監督が伝えたかった二つめのメッセージは「人と人の絆」だ。

 「在日のことは人がフタをしようが、われわれの生活のなかに溶け込んでいるもの。自分の祖国は、国旗は何だ、ということは大事。だけど個人的には、人と人の絆じゃないのかということを言いたくて『テコン』を作っている」

 威勢のいい在日の大親友とは気があった。その親友とは韓日の歴史問題などをめぐって殴り合いの喧嘩をし、ぶつかり合った。そんなコミュニケーションの結果、2人の間に強い絆が生まれた。

 「僕と大親友とは、祖先の時代はそうだったかも知れない。でもそこばかりを見ないで、僕とお前がまず仲間になって、ここから一緒にやっていこうぜと思ってきた」

(2011.1.1 民団新聞)
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