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地方参政権運動の歩みと展望(04.1.1)
地方参政権獲得へ意気込みを示した婦人会の決起集会(昨年6月)
積上げた成果結実めざして 粘り強く運動すすめよう
広がる地方自治体の賛同…次期国会に法案再上程へ

 在日韓国人は日本での居住が戦後だけでも58年になります。戦前の1世の時代から計算するとすでに100年近くにわたり日本に住んでいる同胞も少なからずいます。在日韓国人は永住資格を有し地域「住民」として納税などの義務と応分の貢献を果たしながら生活しております。自治会や町内会、PTAなどの役員もしており、その居住実態からして、また永住外国人の人権保障の面から、地方自治へ参画できるよう地方参政権を付与すべきだという声が80年代から強くなってきました。

 在日韓国人が4、5世になる時代に、「住民」としての権利を制度的に認める社会的条件を整備することが時代の要請として求められてきました。また、「在日韓国人への地方参政権付与の実現は、日韓関係の新たな基礎を築く重要なテーマ」ともなっています。

1.運動の主要経緯

 私たちは87年に、「在日韓国人の権益に関する全国統一要望」活動を展開し、その中で「住民」として日本の地方自治体選挙への参加を要求する活動を開始しました。

 91年1月に、在日韓国人3世以降の法的地位及び処遇等を取り決める、いわゆる「91年間題」の韓日外相覚書の合意があり、「在日韓国人の地方自治体選挙権について、大韓民国政府より要望が表明された」と明記されました。

 94年4月、本団は地方参政権の獲得を権益擁護運動の総括として推進することを確認し、地方自治体議会での意見書採択と日本国会での法制化運動を推進してきました。

2.運動の基本理念

 運動の基本理念は、日本の地域社会で、在日韓国人をはじめとする永住外国人が同じ住民として地方自治に参与できる「住民権」の保障と、民族や国籍の相違を乗り越え人権を尊重する「共生社会」の実現にあります。

 また日本における民主主義の成熟と真の「国際化」の実現、並びにアジアの平和と内外人平等に基づく人権確立への寄与を運動の理念としています。

3.司法判断

 94年10月、福井地方裁判所で、「市町村次元の定住外国人の選挙権は憲法の許容範囲内にある」との判決が出ました。95年2月には日本最高裁判所が、永住外国人への地方選挙権付与は「違憲ではない」とする憲法判断を示しました。

 この判決の意義は、永住外国人住民への地方選挙権付与についての違憲論争に終止符を打ったことです。また、違憲ではないとの判示によって帰化論が抑止されたことです。

4.地方自治体動向

 1993年9月、大阪府岸和田市議会が全国自治体の中で初めて定住外国人への地方参政権附与を日本政府に求める意見書を採択して以来、付与に賛同する全国自治体の意見書等の採択数は、全国約3300自治体中1518自治体に至っており、採択率は45・94%です。外国人住民不在の町村約600自治体を除外するとすでに過半数以上の56%の採択率となります。

 日本の人口比でみた採択率は75・50%です。私たちの大多数が居住している都市部では、534市が決議しており、採択率77・1%です。このように多くの自治体が私たちを同じ住民として認知しており、国や国会に対して早期の法整備を求めています。国会は諸般の政治情勢を口実にこれ以上自治体の声を無視してはなりません。民主主義のルールに従って早期に自治体の要請を反映すべきであります。

5.世論の動向

 これまでの定住外国人に対する地方自治体参政権付与に関する世論調査をみると、99年3月に行われた読売新聞全国世論調査では、賛成65・6%、反対24・5%。00年10月の毎日新聞全国世論調査では賛成58%、反対32%。00年11月の朝日新聞全国世論調査では、賛成64%、反対28%で、賛成が多数を占めています。

6.地方選挙権法案の国会審議状況

 98年10月に、地方選挙権法案が民主党・新党平和(当時)から初めて国会に提出されました。法案提出の2日後に、日韓首脳共同宣言が行われ、「在日韓国人が日韓両国民の相互交流・相互理解のための架け橋としての役割を担い得るとの認識に立ち、その地位の向上のため引き続き協議を継続していく」ことで意見の一致をみました。

 同日、金大中大統領は日本国会演説で、「地方参政権の獲得が早期に実現できれば、在日韓国人だけでなく、韓国国民も大いによろこび、世界も、日本の開かれた政策を積極的に歓迎してやまないでしょう」と述べ、地方参政権の付与を強く要請しました。

 99年8月、法案が初めて国会で審議され、同年10月には連立与党が「3党で議員提案し成立させる」と合意しました。00年7月には与党2党(公明・保守)、野党(民主)が3回目の法案を提出しました。

 00年11月には、日本国会が民団前中央団長等から参考人聴取をし、採決してもよい段階にまで審議も進みました。

 しかし、一部与党の狭小なナショナリズムをふりかざした反対によって、01年の通常国会で採決に至ることができず、継続審議となりました。本団はこれに抗議するため全国から4000人が参集し、「永住外国人に地方参政権を!6・5全国決起大会」を都内で開催し、あわせて国会請願と街頭示威活動を行いました。

■□
2003年の参政権運動

《法案再付託》

 地方選挙権法案は、1月の第156回通常国会に再度付託されました。法案を作成し成立を推し進めてきた公明党の冬柴鉄三幹事長は、「法律制定を最初に決意した限りは、議員でいるかぎり最後までやりぬく」と決意を語っています。

 5月には「首都圏外国籍住民会議」(東京、神奈川、埼玉、川崎)が開催され、議題の一つとなった外国籍住民の行政参加促進で、権利としての地方参政権付与を求める声が各委員から相次ぎました。

《韓国大統領の要請》

 6月、盧武鉉大統領が公式訪問し小泉首相との共同記者会見で大統領は、「在日韓国人に対する地方参政権附与問題について日本政府の誠意ある対応を要請した」と述べ、同胞幹部との懇談会でも、「継続的に努力する」と答えました。日本国会演説で大統領は、「在日韓国人はこの間、日本で地域社会と韓日関係発展のため多くの寄与をして来た。在日韓国人に地方参政権が附与されれば、韓日関係の未来にも大きな助力となる」と、その実現を強く要請しました。

 7月には、民団東京本部が参議員会館内で集会を開き、早期成立を求める国会要望活動を展開しました。この集会に出席した自民党幹部議員は、「大統領の要請については、全国会議員がよくわかっている。公党間の約束であるが、自民党内に異論があり最後の段階で党内がまとまらなかった。国と国との約束でもあり、早期に決着することを願っている」と述べました。

 また、激励の挨拶で与党幹部の一人は、「実現できるまで頑張る。永住外国人住民への地方選挙権付与は、基本的人権の問題」と語り、「日本民族だけでこれからの時代をやっていけない。皆さんは地域に貢献しておられる。『共生』の象徴がこの地方参政権です。人権や地方分権の面からも是非実現させていきたい」と述べました。

《石川・長野が意見書100%達成》

 9月に石川県で、12月には長野県で全自治体が意見書を採択しました。神奈川県、大阪府、奈良県についでの100%達成です。石川県においては、金次郎県本部団長が先頭に立って各自治体を回り、これに県親善協会や公館が全面的に協力していったことが100%達成につながりました。これは、指導者が逆風の中でも熱意を持って回れば勝ち取れるということを証左しています。

 長野県は鄭進前団長(現中央副団長)、崔再龍団長が辛抱強く運動してきた成果であります。長野の場合、特に自治体数が全国で北海道についで多く、120自治体もあり、そこにおける100%達成は非常に価値のあるものです。

《衆議選候補者アンケート調査》

 衆議院議員選挙を前に、朝日新聞が衆議員候補者にアンケート調査を実施しています。「永住外国人の地方参政権を認めるべきか」の設問に対して党別に区分した回答を出しており、付与に賛成が公明、社民、共産。どちらかといえば賛成が民主。どちらかといえば賛成とどちらともいえないの中間が保守(当時)。どちらともいえないとどちらかといえば反対の中間が自民でありました。

 衆議員選挙後に、自民・公明の連立政権合意書が交わされ、席上冬柴幹事長はこれまでの連立政権の合意事項をふまえ、「地方選挙権法案を再度次の通常国会に出させてもらう。連立政権合意を踏まえ尊重してほしい」と強調し、これに対し小泉首相は「従来から法案提出をやっており、当然の話だ」と述べ、安倍幹事長も「十分に協議させていただきたい」と答えています。

 12月にはソウルで第29次韓日議連合同総会が開かれ、韓国側から、「在日韓国人の宿願であり、韓日間において避けることのできない歴史的産物であるこの法案が、できるだけ早く再上程され成立するよう」日本側の積極的な理解と協力を再度要請しています。

《今後の運動推進について》

 法案は10月10日、衆議院解散により自動的に廃案となっています。今度は4回目の法案上程になります。北韓の拉致問題や核問題、またイラク問題など、諸般の政治情勢によって不利な条件にありますが、私たちはこれまで積み上げてきた成果を土台に、中央・地方・支部が緊密に連係し、実現するまで根気強く獲得運動を前進させていかなければなりません。

 与党幹部の一人は、「地方参政権は住民の直接選挙であり、最高裁がその権利を認めた。反対する議員連盟をつくるなどの状況にあるが、最後までやっていきたい」と力強く述べています。

 私たちは今後も、国会での早期立法化のため、国会議員に対する要望活動の強化管内自治体の意見書100%採択活動地域の市民団体との連帯と世論の拡散自体内の研修及び勉強会の継続的開催。この4つを基本にして全国運動を粘り強く進めていきます。

《住民投票権の付与》

 この間の地方参政権獲得運動の成果の一環として、特に永住外国人に対する住民投票権付与が実現しています。全国的な市町村合併問題を契機に、同じ住民として永住外国人に住民投票権を付与し地方自治参与を積極的に許容する自治体が増加しており、この2年間ですでに84自治体(12市1特別区54町17村)が付与しています。この動きは今後益々定着していく傾向にあります。

 私たちは民族・国籍差別に負けることなく、これまでの長期にわたる運動を通じて蓄積した成果を生かしながら、住民としての義務を果たしつつ権利である地方参政権獲得に向け粘り強く運動を持続させていきましょう。「人権」という思想は誰も否定できない普遍的なものです。地方参政権は私たちが実現させるのだという強い意思がある限り、必ずや勝ち取れるものです。粘り強く運動を進めていきましょう。

(2004.1.1 民団新聞)
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