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与野党に警告と機会を与えた統一地方選
第6回全国統一地方選挙の開票作業(4日、水原体育館)

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政府「安定論」VS「審判論」
一方には加担せず…「7・30ミニ総選」に持ち越し

 史上6回目の統一地方選挙は、韓国社会に一大衝撃をもたらしたセウォル号の沈没(4月16日)から49日目、不明者の捜索がなお続き、沈うつな雰囲気が消えない特殊な状況下で実施された。

 結果について識者やメディアは、「引き分け」「与野党双方に今一度の警告と機会を与えた」とする見方でほぼ一致している。朴槿恵大統領と与党・セヌリ党には執権主体としての自省を強く求める一方、野党・新政治民主連合には与党を牽制する力を与えながらも凌駕はさせず、執権準備政党として政策中心主義への脱皮を促すメッセージを送ったとの解釈だ。

課題を先送り

 朴大統領の支持率は就任2年目としては歴代最高の60%台前半で推移し、セヌリ党も新政治民主連合に20%近い差をつけていた。野党側は選挙を戦う有効なテコを用意できない状況にあったとさえ言われた。

 そこに、最大変数として浮上したのがセウォル号惨事だ。韓国社会の積弊が招いた人災であるのに加え、政府当局が初動対応で不手際と混乱を見せつけたことは、野党にとって想定外の追い風となり、与党には逆風となった。

 国民の悲憤や責任追及世論を背に「セウォル号審判論」を前面に押し出す野党の前に、防戦一方となった与党は「朴大統領を助けるために1票を!」と訴えるまでに追い込まれた。結局、地方選挙でありながら朴槿恵政府をめぐる「安定確保論」(与党)と「審判論」(野党)の激突に終始した。

 そこにはまた、与野党ともに実績が乏しい事情もあった。だからこそ、野党は沈没惨事に便乗し、与党は急落しても50%前後の底堅い支持率を維持する朴大統領にすがった。結果を見れば、与党は絶対不利の逆風をしのぎ、野党は追い風に乗り切れなかったことになる。

 12年12月の第18代大統領選挙では、首都圏と地方の人口・経済格差を背景に、農漁村地域の振興を与野党とも主要政策に掲げた。今回の統一地方選は、その公約をより具体化する場となり得たはずである。しかし、2割自治と皮肉られる構造的な問題や地域振興策は争点化せず、深刻な課題を先送りしたことは否めない。

積み残しの罪

 沈没惨事は確かに、政府当局の無能ぶりを浮き彫りにした。しかし、野党も勢い余って滑り過ぎた感が強い。「朴大統領が人間の価値を軽視したのが原因だ」「朴政府が『朴フィア』(朴大統領とマフィアの造成語)を任命したせいだ」といった主張がそうだ。

 野党は李明博前大統領までまな板に乗せた。建造から20年が経過した船舶(セウォル号のこと)が輸入され、運航されていたのは、李政府時代の09年に海運法施行規則を改定し、旅客船の運用可能船齢を20年から30年に引き上げたためだという理屈である。

 そうなれば責任・原因はさらにさかのぼる。清海鎮海運を含む国内旅客定期航路事業者に対し、安全管理体制の確立や施行の義務を免除したのも、韓国沿岸で運航する旅客船にも03年から国際安全管理規約を適用しようとしながら、02年10月に準備不足を理由に断念したのも金大中政府だ。その主務官庁は海洋水産部であり、準備期間中に長官を務めていたのは後に大統領となる盧武鉉氏だった。さらに、船員の負担を軽減するとの理由で救命ボートの使用訓練など安全教育を事実上免除したのも、盧武鉉政府下でのことである。

 セウォル号沈没を大惨事にした最大の責任が時の政府にあることは否定できないとしても、歴代政府の積み残しに罪過があることもまた無視できない。朴大統領とセヌリ党に攻撃を集中させるには無理があったと見るべきだろう。

注目の再・補選

 与野党は、12議席(6議席追加の可能性も)を争う7月30日の国会議員再・補選で再び激突する。勝敗は延長戦に託されたといっても過言ではない。

 セヌリ党からは鄭夢準氏ら7人、新政治民主連合からは3人が国会議員職を辞して自治体首長選挙に出馬した。この10人に12年4月の総選挙における選挙違反確定者2人(セヌリ党1、新政治民主連合1)が加わる。ほかにも大法院の宣告待ちが4人(セヌリ党2、統合進歩党1、新政治民主連合1)、破棄差し戻し審が進行中の2人(セヌリ党1、新政治民主連合1)、計6人がいる。

 新政治民主連合の報道官は5日、「(選挙結果は)与野党が力を合わせ、新しい韓国をつくれという国民の命令」であるとし、「謙虚に受け止める」と表明した。まさに、その通りであろう。

 しかし、すでに稼働している国政調査を中心に「セウォル号国会」が本格化する。国務総理など政府人事や、「安全韓国」への国家改造プロジェクトの在り方をめぐって与野党の攻防が激しくなるのは必定だ。7・30ミニ総選でこそ、国民のより厳しい判断が下されるのかも知れない。

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屈折した投票行動
セ号ショック重く…仁川・京畿の低調際立つ

 今回の統一地方選における有権者の意識はかなり複雑だったのではないか。史上2番目に高い56・8%の投票率についても評価は分かれる。初めて実施された期日前投票が11・49%を記録したことで、投票率は60%台に乗るのも可能と予想されていた。だが、前回の54・5%から2・3ポイント伸びたに過ぎない。

 投票率をめぐっては、増幅された政治不信が押し下げ要因になるのか、それとも、この状況だからこそ意思表示をすべきだとの気運や、野党の「審判論」に危機意識を募らせる保守層の積極的な防衛投票が押し上げ要因になるのか、様々な観測が交錯していた。

 沈没惨事は国民の社会活動全般を委縮させ、選挙運動も自粛を余儀なくされた。総括的に見て、期日前投票が行われた割に投票率が伸び悩んだのは否定できない。この種の仮定が成立するか否かを不問にすれば、もし期日前投票制度がなかったならば投票率は前回を下回った可能性さえある。

 セウォル号が出港した仁川市、多数の犠牲者を出した檀園高校のある京畿道は、広域17自治体(ソウルなど主要8市と9道)の中で、投票率は53・7%、53・3%と最低クラスだった。安山市檀園区に至っては47・8%とさらに5・5ポイントも低い。

 今回の統一地方選は、韓国社会がセウォル号事態にひと区切りをつけ、今後の課題に前向きに取り組む契機ともなり得た。だが、未だにショックが重くのしかかっていることを強く印象づけた。

ねじれ現象も

 当選結果もかなりねじれている。広域17自治体の首長は、選挙前の与党9、野党8から与党8、野党9に入れ替わった。だが、基礎自治体226(市郡区)の首長では新政治民主連合が92から80に後退、セヌリ党は82から117に躍進した。

 ソウル市長選で敗北したセヌリ党は、京畿道と仁川市で勝利し、全国で最もセウォル号惨事の影響を受けている地域で2勝1敗となった。民心のバロメーターとされる首都圏での成績は、与党がかなり善戦したことを意味する。

 広域自治体の議会議員選挙で政党への支持性向が現れる「比例代表投票」でも、セヌリ党が全国で1104万9856票を獲得、新政治連合に165万2856票の差をつけ17中12で勝利している。市長選で新政治民主連合が圧勝したソウルでもセヌリ党がわずかながらリードした。

 忠清地域の首長選では新政治民主連合が北道・南道、大田市・世宗市のすべてをもぎ取り、現在のセヌリ党につながる保守系の強かった「中原」を席巻した。しかし、この北道・南道でも比例投票ではセヌリ党がそれぞれ53・4%、53・5%を獲得、39・0%、38・5%の新政治民主連合を余裕で凌駕した。セヌリは党支持度の優勢を首長選挙にはつなげられなかったことになる。

 ただ、この比例投票では統合進歩党が97万2003票、正義党が82万2600票を集めている。汎野党圏の合計は1119万1603票となってセヌリ党を14万票余り上回った。

またも世代差

 12年の第18代大統領選挙における得票率は、朴槿恵候補が30代から28・3%、60代以上からは74・7%、野党の文在寅候補は逆に、30代から71・1%、60代以上からは25・2%だった。この世代間の際立った違いは今回も変わらなかった。キャスティングボートを握る40代が「審判論」に乗って野党に流れた分、朴政府揺さぶりに不安を抱いた50代以上が強固に結束したと言われる。

世宗市の異変

 忠清南道に位置する新行政都市・世宗市は、紆余曲折を経ながらもセヌリ党の前身・ハンナラ党の朴槿恵代表が地元の強い要望に応えたことで誕生した。ところが、この市長選挙でセヌリ党は負けている。

 最近までに世宗市に移転した中央部署の公務員は1万5000人ほどだ。公務員が集中する地区の事前投票約1800票のうち、セヌリ党候補が300票、新政治民主連合候補が1400票だったとの分析がある。

 朴政府は、セウォル沈没惨事で明らかになった公職社会の悪弊を一掃すべく、「官フィア(官僚+マフィアの造語)」をターゲットとする公職社会改編構想を打ち出した。公務員とその家族の投票行動がそれへの反発だとすれば、政府の「国家大改造」プロジェクトには危険な暗礁が控えていることを意味するだけに、鋭意注視を怠れない。

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別物だった教育監選挙
「保守」割れ…「進歩」躍進

 「セウォル号審判論」は、教育監選挙で表出したとの見方がある。教育に関心の高い「怒れるママたち」が競争より平等優先の教育を求め、その心情が「進歩」系候補に流れたというのだ。

 広域17自治体の教育監選挙は、前回の「保守」10人、「進歩」6人に対し、今回は「進歩」が13人と躍進した。「保守」は3人、「中道」は1人。この結果、幼稚園・小中高718万人の84%が「進歩」系の管轄下で学ぶことになる。教育監には幼稚園・小中高に対する指揮・監督権、教師・教育庁公務員の人事権、教育予算編成と条令制定権など強力な権限がある。中央政府が推進する政策も教育監が拒否すれば遂行できない。

 しかも、今回当選した「進歩」系教育監は、大部分が全教組(全国教職員労働組合)の幹部出身か全教組の支援を受けてきた。事実上、全教組が教育権力を握ったと言われるのも当然だ。

 全教組は金大中政府時代に合法労組と認められて以来、国家保安法廃止などの政治的主張を掲げ、民族自主・統一の名の下に北韓を称える教育を露骨に行い、厳しい糾弾を受けてきた。03年に9万4000人だった組合員が13年には6万人を下回るまでに減った。だが、活動力はきわめて旺盛だ。

 4年前当選した「進歩」系教育監は連帯ベルトを形成し、政府の政策に反旗を翻しては教育現場を混乱させた。今回の当選者たちも政府との対決を予告している。

 彼らは共同公約で、自私高(自立型私立高)の縮小・廃止、無償給食の拡大、代案歴史教科書の発行などを掲げた。

 自私高は教育達成度が高く、生徒・保護者からの支持が広がったことで、教育平等主義者たちから槍玉に挙げられるようになった。代替歴史教科書とは、建国以来の韓国現代史を否定的に記述しようとするものだ。

早くも警戒感

 彼らの無償公約は給食にとどまらず、乳児教育、学用品、高校授業料、制服、通学バスなどにも及ぶ。だが、全国で100を超える学校で教室・施設が直ちに修理しなければ、崩落など災害が避けられない状態にあると指摘されてきた。「進歩」系教育監が無償公約を押し通せば、限られた予算がしわ寄せを受け、教育現場の災害危険性が放置されかねない。

 今回当選した「進歩」系教育監の得票は大部分が30%台だ。「保守」系の敗因は、「進歩」が候補を単一化したのに対し、3〜6人が乱立したことにある。「進歩」系教育監があからさまに偏向すれれば、現場の混乱を深めずにおかないだろう。有権者の多数は「進歩」系以外の候補に投票したことを重く受けとめるべきだ。

(2014.6.11 民団新聞)
 

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