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韓国人挺身隊訴訟

不二越が和解申請
3500万円の解決金で



 第二次大戦中、富山市の工作機械メーカー「不二越」の軍需工場に徴用された女子勤労挺身隊員など韓国人男女3人が同社を相手取って未払い賃金と計2000万円の損害賠償を求めていた問題が11日、最高裁第1小法廷(町田顕裁判長)で和解に達した。不二越自ら原告側に和解を申し入れていたもので、これを最高裁が仲介するという異例の形をとった。企業の戦後責任を問う他の訴訟の行方にも影響を与えそうだ。

 不二越訴訟支援者によれば「解決金」は3500万円。原告の3人と米国で新たに提訴準備中の4人、及び被害者の所属団体である太平洋戦争犠牲者遺族会と同会の金景錫会長(74)に支払う。一人当たり400万円に相当し「高いレベルの和解内容」(支援者の話)となった。

 和解そのものは最高裁が仲介する形を取ったが、原告団への申し入れは不二越側からだった。富山地裁での1審、さらに名古屋高裁金沢支部での控訴審でも時効や20年立つと損害賠償請求権そのものが消滅する「除斥期間」の壁を打ち破れずにきた。しかし、米国でのクラスアクション(代表訴訟)の動きが引き金になり、今年三月になって不二越側が急きょ和解を持ち出したという。

 交渉の席では原告側の謝罪申し入れを不二越側がかたくなに拒否した。原告側は被害当事者が高齢化していることから謝罪要求はあきらめ、「解決金」に同意した。原告団長の金会長は「会社に罪の意識があればこそ金を払う。実質的な謝罪と受け止めている」と話している。

 訴えていたのは韓国在住の元女子勤労挺身隊員の李鍾淑さん(68)、崔福年さん(69)と、元徴用工の高徳煥さん(77)。三人は不二越社員からの「女学校に通わせる」「良好な労働条件を保証する」などという条件で来日。1943〜44年から不二越で劣悪な環境の下で研磨、旋盤など男性並みの作業に従事した。この間、給料は支払われず、学業の保証といった条件も履行されなかった。崔さんは作業中、右手人差し指の一部を切断した。

 原告3人は金会長の呼びかけで92年、「実態は強制連行・労働で、賃金も未払いだった」として富山地裁に提訴。1審判決では強制連行・労働に相当する行為や賃金の未払いを認定したが、賃金請求権は提訴直前に時効になっており、損害賠償請求権も「除斥期間」を適用して請求を退けた。また、控訴審でも同様の判断だった。

 このため、原告側は国際人道法を基準とした個人の請求権を認めさせようと昨年から米国での代表訴訟を準備、近々審理が開始される手はずになっていた。戦後補償に詳しい日本人弁護士は「不二越は民間企業として、米国での企業活動にマイナスになると判断したようだ」と話している。

 企業の戦後責任を問う訴訟はこのほかにも、三菱広島元徴用工被爆者補償請求訴訟、西松建設強制連行訴訟、三菱名古屋朝鮮女子勤労挺身隊訴訟などが控えている。今回の和解はこれらの審理の行方をも左右しそうだ。

(2000.7.19 民団新聞)



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