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掲載日 : [22-01-20]   照会数 : 1158

実母と異なる戸籍記載…「親子関係存否確認」の訴えを

Q

 私は在日韓国人の父と母の間に生まれました。韓国の戸籍(除籍謄本)に実母と異なる韓国人の女性(A)が母として記載されています。事情を調べると、父は母とは婚姻届を出しておらず、私が父と実母と間に生まれた後、父がAさんと婚姻届を出し、Aさんとの子として私の出生届をしたようです。

 父も実母も、Aさんもすでに10年前に死亡しています。韓国の戸籍(家族関係登録簿)の記載を訂正するには、裁判所で親子関係存否確認の訴えを提起して判決をもらう必要があると聞きました。

 この訴えを提起するには、出訴期間の制限があるとのことですが、私の場合、出訴期間の制限にかかって、訴えが提起できないのでしょうか。

A

◆親子関係存否確認の訴え

 質問にあるように、韓国の戸籍(除籍謄本)に、実母又は実父と異なる人が戸籍に記載されているというケースは、希にあります。このような場合、韓国の戸籍(家族関係登録簿)の記載を訂正するには、あなたが聞いたように、裁判所で親子関係存否確認の訴えを提起する必要があります。

 あなたや、父母、Aさんといった関係者は全員韓国籍ですので、韓国民法の865条に規定されている「親子関係存否確認」の訴えを提起する必要があります。

 親子関係存否確認の訴えとは、実母との母子関係が存在すること(又は戸籍上、母と記載されているAさんとの間で母子関係が存在しないこと)を裁判所の判決で確認する手続きです。

 実母との親子関係の存否についての判断を示してもらえるだけでよければ、日本の家庭裁判所から判決を受けるだけで終わりにすることも考えられます。韓国の戸籍を訂正したいのであれば、直接、韓国の家庭裁判所から判決をもらう方法、または日本の家庭裁判所で判決をもらった後、韓国の裁判所から、さらに執行判決(日本の家庭裁判所の判決を韓国で使うことを認める韓国の裁判所の判決)をもらう方法のいずれかをとる必要があります。
 

◆出訴期間の制限

 質問のケースで、韓国民法865条に基づく親子関係存否確認の訴えを提起する場合、あなたが原告となり、実母を被告として訴えを提起することが典型例です。

 しかし、実母はすでに死亡しているため、被告とすることはできません。そのような場合、法律では、実母の代わりに検事を相手に訴えを提起することになっています。

もっとも、あなたが聞いているように、実母の代わりに検事を相手に訴えを提起する場合には出訴期限の制限があります。実母の死亡を知った日から2年以内に訴えを提起しなければなりません。

 Qのケースでは、あなたが実母の死を知った時からすでに10年が経過していると思われますので、あなたが原告となって韓国民法865条に基づく親子関係存否確認の訴えを提起できないことになります。

◆あなた以外に原告となれるのは?

 このように、あなたが原告となった場合、出訴期間の制限にかかってしまいます。そのため、あなたに代わって、他の者が原告となって訴えを提起することができないでしょうか。例えば、あなたの子ども(実母から見れば孫)が原告となって、あなたと実母の間の親子関係の存在を確認する訴えを提起することはできないでしょうか。

 結論から申し上げると、そのような訴えを提起することはできます。あなたの子どもが、あなたを被告として、あなたと実母の間の親子関係の存在を確認する訴えを提起することができます。あなたが被告になるのはよいとして、死亡した実母の代わりに検事も被告にする必要があるのではないかと思うかもしれません。

 しかし、韓国の大法院の判例では、確認する親子関係の当事者である、あなたと実母のうち、いずれか一方が生きている場合は、生きている人のみを被告にすれば足りる、とされています。Qのケースでは、あなたの子どもが原告となって、あなたのみを被告とする訴えを提起すればよいわけです。

 そして、被告となるべき人がひとりでも生きている場合は、2年の出訴期間の制限に服しません。あなたの子どもが、あなたの実母が死亡したことを知っているか否か、また知ってから2年以上が経過しているか否かにかかわらず、あなたの子どもは訴えを提起することができることになります。

 もっとも、あなたの子どもが、あなたと実母の間の親子関係の存在を確認する判決をもらうことで、現在の紛争の解決につながるかについては慎重に検討することが必要です。

◆兄弟姉妹は原告になれるか?

 上記の例で、原告となれるのは、あなたの子どもだけでしょうか。たとえば、あなたの兄弟姉妹が原告となることはできないのでしょうか。

 韓国の大法院は、従前、韓国民法865条の訴えは、韓国民法777条でいう「親族」に該当する者であれば、誰でも提起できる、と判示していました。韓国民法777条でいう「親族」とは、①8親等内の血族②4親等以内の姻族③配偶者-のことをいいます。

 しかし、近時、上記大法院判例の変更がありました。大法院2020年6月18日宣告の判決(2015ム8351)は、韓国民法865条の訴えを提起できる者の範囲を、以下の者に限定する判断を示しました。

 その内容は①親子関係の当事者である父、母、子②子の直系卑属とその法定代理人③夫婦の一方が自身又は他方と子との間の親子関係存否確認をする場合を前提に▼夫婦の一方に成年後見人がいる場合、成年後見人▼夫婦の一方が遺言で親子関係を否定する意思を表示している場合、遺言執行者▼夫が子の出生前に死亡した場合、夫の直系尊属又は直系卑属▼夫婦の一方が嫡出否認の提訴期間(2年)内に死亡した場合、夫婦の一方の直系尊属又は直系卑属④他人間の親子関係の存否についての判決確定によって権利を得又は義務を免れる等の法律上の利害関係がある第三者-です。

 2020年大法院判決を前提とすれば、兄弟姉妹であることだけで原告となることはできません。あなたの兄弟姉妹が、上記④のいう法律上の利害関係を有することが必要となります。

大阪弁護士会所属 弁護士 韓雅之

 

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