掲載日 : [2019-05-29] 照会数 : 11311
北送から60年…当事者の証言集発刊へ…「記録する会」2021年発刊めざす
[ 昨年7月大阪で開いた証言集会から(写真提供「記録する会」) ]
「地上の楽園」を夢見て裏切られた9万3000余人にのぼる北送同胞とその日本人妻たち。いったい北韓でどのような生活を送ったのか。第1船が新潟港から出港してから12月で60年を迎えようとしているいま、「在日」が北韓で生きた記録を残そうと「一般社団法人『北朝鮮帰国者』の記憶を記録する会」が結成され、聞き取り調査と取材を始めた。
聞き取り対象は命からがら北韓から脱出して日本と韓国に住む元在日同胞たち。2020年までに最低でも50~60人との面談を終え、21年末までには記録集『在日帰国者は北朝鮮でどう生きたか(仮題)』と題して刊行する。
記録作業にあたるのは在日韓国・朝鮮人と日本人の有志たち。これまで日本と韓国に在住する10人余りから聞き取りを終えた。
事務局長の石丸次郎さん(ジャーナリスト)は、「帰国事業は差別と貧困にあえぐ在日朝鮮人を祖国に帰す人道事業、『慶事』として在日朝鮮人と日本人が共同して押し進めてきた。だからこそ、在日韓国・朝鮮人と日本人が責任をもって協働・共同して進める必要があった」と話している。
これまで聞き取りに応じてくれた当事者たちは、「この苦難の体験を誰かに知ってもらいたいし、日本社会にも関心をもってほしい」「このまま事実が埋もれてしまうのは悲しい」と感じているという。
「記録する会」は市民、研究者、ジャーナリスト、人権活動家などが中心となって17年10月に正式発足した。賛同人で詩人の金時鐘さんは「苦境に陥っている帰国同胞の救援はおろか、消息をたどる仲立ちひとつしない朝鮮総連幹部たちの、良心のかけらもない無耶ぶりには同族であること自体が絶望です。帰国者がどのように生きたかの記録を調べ、整理する仕事は猶予ならない」と危機感を募らせている。
会員を募集中…寄付、カンパも
「記録する会」では会員となって聞き取り作業を後押ししてくれる支援者を募っている。正会員は年間1万円、賛助会員は個人が年間5000円、同じく団体(法人)は3万円。寄付金、カンパも歓迎している。
▽三菱UFJ銀行天六支店 普通0263367 北朝鮮帰国者の記憶を記録する会▽ゆうちょ銀行 店名四〇八 普通45220051 一般社団法人北朝鮮帰国者の記憶を記録する会▽郵便振替 口座記号番号00980‐5‐196482 北朝鮮帰国者の記憶を記録する会
このほかHP「記憶する会 お買い物と支援」からも入会手続きと寄付ができる。
(2019.05.29 民団新聞)