判決は、北韓政府が事実と異なる情報を流布し、原告らを誤信させた上で北韓への渡航を決断させ、渡航後は自由な出国を認めず、過酷な環境下で長期間の生活を余儀なくさせたと指摘。一連の行為について「継続的不法行為が成立する」と判断した。神野裁判長は、「原告らは被告によって人生の大半を奪われたといっても過言ではなく、精神的、肉体的苦痛は甚大だ」と述べた。
北送事業は1959年から1984年までの25年間にわたり実施され、在日同胞や日本人の妻ら約9万3000人が北韓に渡った。原告らは、北韓で強制労働や監視下での生活など過酷な状況を強いられ、人権を著しく侵害されたとして、2018年に北韓政府を相手取り、1人あたり1億円、総額4億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。1審の東京地裁は請求を退けたが、控訴審の東京高裁は、北韓政府の不法行為を認める余地があるとして原告側の主張を支持し、審理を東京地裁に差し戻していた。
一方、北韓政府を相手取った訴訟は極めて異例であり、判決で命じられた賠償金をどのように回収するかが今後の課題となる。弁護団は、日本国内にある北韓関連資産への強制執行などを検討する方針を示している。
原告で控訴人の川崎栄子さん(83)は、「家族の安否も分からず、不眠症が続いている。私の最終的な目的は、北韓にいる家族と再会すること、それも生きて再会することだ。時間が足りない。最近は本当に健康状態も悪く、日本政府に動いてもらいたい」と切実な思いを語った。
福田健治主任弁護士は、「北韓政府に対して賠償を命じる初の判決がようやく下された。ここまで闘い続けてきた原告の皆さんに敬意を表したい。これは始まりにすぎない。回収するまでが弁護団の仕事だ」と述べ、今後も支援を呼びかけた。
集会では、元読売新聞記者で金沢星稜大学教授の菊池嘉晃さんも発言。「原告の皆さんは高齢で、なおかつ家族が北韓にいるという極めて困難な状況の中、一歩間違えば命の危険すら感じられる。その中で努力を重ねてこられた結果が、今日の判決につながった。北韓問題を取材してきた者として、こうした日が来るとは信じがたい思いだ」と述べ、原告と弁護団の努力に敬意を示した。
(2025.2.11民団新聞)