掲載日 : [19-01-18] 照会数 : 12956
あらゆる差別を禁止...国立市人権条例施行へ
さまざまな差別に対して「行ってはならない」と明確に禁止を促す条例が東京都国立市で制定され、4月1日から施行される。昨年12月21日の市議会本会議で成立した。条例に罰則規定は設けられていないが、禁止条項に違反した行為については、救済のための具体的な措置の実施を市長に課している。2016年に国会で成立した「ヘイトスピーチ対策法」(解消法)からさらに踏み込んだ。
条例の名称は「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和な街づくり基本条例」。人種、民族、国籍、性自認、障害、職業、被差別部落出身といった13項目を明示し、これらを理由とした「不当な差別」を、心身への暴力も含めて「行ってはならない」としている。人権・平和のまちづくりの推進に関して、市は必要な実態調査を行い、施策に反映していく。
もし、人権侵害が起きた場合は市長の諮問機関の「人権・平和のまちづくり審議会」が必要な調査などを行って救済措置を検討し、市が人権救済に必要な措置をとると規定した。罰則はなくとも、被害者には希望の灯となりそうだ。
市に寄せられた140件のパブリックコメントには、専門的知見を持った人を中心に被差別マイノリティー当事者を審議会委員に選任するよう求める意見も見られた。審議会は市長が委嘱する10人以内の委員をもって組織する。市長は審議会の意見を聴きながら基本方針と推進計画を策定していく。
また、市の責務に対しては「末尾を努力義務ではなく『~しなければならない』と禁止を強くするべき」という意見が見られた。
条例の制定が実務動かす
<解説>この条例では「人種、皮膚の色、民族、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、しょうがい、疾病、職業、年齢、被差別部落出身その他経歴等」という13個の類型があげられたうえで、これらにかかわらず一人一人が個人として尊重され(2条)、「これらを理由とした差別を行ってはならない」とされた(3条1項)。
差別の禁止を条例で明確に規定したものといえる。13個のうち「人種、皮膚の色、民族、国籍」の4つが在日韓国人に関係している。日本の法秩序では「憲法」⇒「条約」⇒「法律」⇒「条例」の順序だ。4つによる差別の禁止はすでに人種差別撤廃条約で禁止されている。条約は法律や条例よりも上だ。
しかし、日本では憲法や条約で規定しただけでは実務が動かず、中央政府の場合は法律、地方自治体の場合は条例で明確に規定しないと実務が変わらないという現実がある。今回の条例は地方の実務を差別禁止に向けてさらに動かしていく、という意義を持つ。
(寄稿 殷勇基弁護士)
(2019.01.16 民団新聞)