掲載日 : [2019-05-11] 照会数 : 5899
時のかがみ「釜山の海上展望台」…桃井のりこ(編集者・プロデューサー)
[ 五六島スカイウォーク(鈴木圭撮影) ]
近年のLCC(格安航空会社)のめざましい成長で、日本の地方都市と釜山を結ぶ路線の新規就航、既存路線の便数も急増。物理的に釜山が近くなることで、親近感も増すのではと期待している。東京在住の私も、札幌に住む家族と釜山での待ち合わせが容易になり、うれしい限りだ。
そんな中、当地を訪れる観光客に季節感ある釜山を楽しんでもらうことが、旅の満足度を上げ、再訪へとつながるのではと思う。
海洋都市の釜山には、海を生かした観光名所が多く、それが釜山らしい旅を演出してくれる。さわやかな青空と澄んだ空気、まばゆいほどの新緑が広がるこれからの季節、私がおすすめしたいのは、市内にいくつかある海を望む展望台だ。
まずは、一昨年、海雲台区の青沙浦に完成した「青沙浦タリットル展望台」。
青沙浦は赤と白のツインの灯台がシンボルの小さな港。海沿いにはチョゲグイ(貝焼き)や刺身専門店が並び、おしゃれなカフェも点在する。地元でも人気が高いスポットだ。
この港の東に設置された半月型の展望台は、陸から海へと突き出ているのが特徴。長さは72m強、幅3~11m強、海上高さ20mほどの造りとなっている。正面に広がる雄大な水平線を目に、海の上の展望台を進むと、海と空の狭間に吸い込まれていくような不思議な感覚が味わえる。先端は床の一部がガラス張りで、足元に広がる水面に、思わずひやりとさせられる。
ちなみに名称のタリットル(飛び石)は、灯台近くの5つの岩礁が飛び石のように見えることから名付けられたとか。
そして、南区の海上展望台「五六島スカイウォーク」も最近、外国人観光客でにぎわう撮影スポットだ。
南区の沿海に浮かぶ五六島(国家指定文化財名勝第24号)は、昔から釜山定番の景勝地。一カ所に6つの奇岩島が集まり、その中のパンペ島とソル島は下の部分で繋がっており、満潮時は島がふたつに見える。干潮時には下の部分も姿が現れてひとつになり、ウサク島という名の島となる。このように潮の満ち引きによって、全景が5つ、6つと変わるため、五六島と呼ばれている。
さて、この五六島を間近にするのが、五六島スカイウオークだ。絶壁から海上へと張り出す、U字状のガラスの道で、海上高さ35mの空中散策が楽しめる。眼下に波打つ碧い海、ダイナミックでスリリングな体験に、多くの人が感嘆する。
なお、長崎県の対馬島と釜山は49・5㎞の近さで、快晴の日にはここから対馬島も一望できる。
青沙浦タリットル展望台と五六島スカイウォークは入場無料。悪天候時には入場制限となる。どちらも風光明媚なロケーションにあり、釜山の海の魅力を存分に感じられる。
私も家族、友人知人を連れて、これらの地を訪れている。みんなの感動と笑顔を見るたび、釜山の海はいつでも両手を広げて、来訪者を歓迎しているのだなと、認識するのである。
(2019.05.10 民団新聞)