韓国の映画振興委員会は11月20日、今年の国内での韓国映画観客数が初めて1億人を突破したと明らかにした。1000万人を超えたのは2作品、400万人超えは8作品になった。同年に公開された2作品が1000万人を超えたのも今年が初めてとなった。
30〜40代 呼び戻す
社会派作品への敏感さ反映
1000万人2作品が動員
同委員会の映画館入場統合電算網によると、イ・ビョンホンが初の時代劇に臨んだ「光海(クァンヘ)、王になった男」は、9月13日の公開からわずか18日目で522万8422人の観客を動員、11月22日時点で1200万1875人の累積観客数を記録した。「光海、王になった男」は現在も1日1万人以上を集めている。
一方、「泥棒たち」は、7月25日の公開から11日間で観客動員600万人を突破し、歴代韓国映画、洋画封切りの中で最も早い大台超えを記録した。10月2日には、韓国映画歴代興行成績1位だった「グエムル」(06年)の1301万9740人を上回る1302万人に達し、最多観客記録を打ち出した。
「泥棒たち」は「光海、王になった男」を抜いて現在トップ。だが、両作品とも、動員数を伸ばしているので、最終結果が出るまでには時間がかかりそうだ。
先月の20日時点で400万人以上を動員した映画は「犯罪との戦争」「建築学概論」「僕の妻のすべて」「風と共に去りぬ」「オオカミ少年」「私の妻のすべて」など8作品。10月31日に封切られた「オオカミ少年」は26日目に600万人を超え、韓国の恋愛映画では過去最高の記録を作った。配給会社のCJ E&Mは「韓国映画の主流である20〜30代女性客のハートをキャッチしたのが大きい」と分析している。
00年代に入って急速に成長した韓国映画は06年に9791万人を動員、その翌年からは下落傾向に陥った。06年に63・8%まで上昇した韓国映画のシェアは50%未満まで落ち込み、収益率はマイナス43・5%と最悪の数値を記録した。だが今年は観客動員数が1億人を超え、シェアも59%(11月20日現在)まで回復した。
その理由の一つは、大企業の影響力が強まったことだ。同委員会による配給会社別のシェア統計によると、10月に国内業界1位のCJ E&Mのシェア(流通配給市場の占有率)は72%にも達している。「光海、王になった男」は、CJが内部チームを立ち上げ、3年間シナリオを練り上げ監督と制作会社を指名・完成させた作品。投資や配給だけではなく、制作にも影響力を持ち始めている。
また、映画振興委員会のキム・ボヨン映画政策センター長は、幅広い観客層をターゲットにした多様なテーマやジャンルの映画が登場し、観客の裾野が広がり、社会問題を描いた映画は、映画離れの30〜40代を呼び戻したと分析した。
上映館を独占マイナー困窮
だが、韓国ではスタッフの基本時給や再教育の機会など、制度的な保障はほとんど整っていない。
また、大企業が経営する映画館のスクリーンの80%は、大企業が投資、制作・輸入した映画で埋まっているために、中小映画会社や低予算の独立映画は上映館を確保するのに四苦八苦している。大企業の力が増す一方で、韓国映画の多様性を縮小させる、大企業による独寡占問題は映画界の成長を妨げるという声も高まってきた。
今、韓国の映画産業は、発展か、衰退かという狭間に立たされている。
(2012.12.1 民団新聞)