東京の民団葛飾支部(李徳和支団長)が主催する、韓国語教室の講師として、今年20年目を迎える魏聖銓さん(44、日本語・日本文学博士)の手がけた韓国語テキスト『New! 韓国語&会話』(CD付き)が2日、右文書院から発売された。対象は入門・初級者。長年の指導経験を生かし、受講生たちの反応が良かった会話例を収録するなど、学習者が最後まで楽しく学べるよう工夫がちりばめられている。
「花と水が学び合う」
「このテキストは欲張っていない。ダイエットして本当に必要なもの、使えるものだけを載せた」
テキストは文字編、発音編、会話編で構成されている。会話編は自己紹介、待ち合わせ、電話でのやり取りなど、韓国旅行のさまざまな場面で使える12例が紹介されている。1課から8課までの「本文」「単語と表現」「文法」「練習問題」など、すべてにふりがながついているが、9課からは本文にはついていない。いつまでもふりがなに頼らず、ハングルを読んでほしいとの思いからだ。そしてCDの吹き込みは、本文を聞くだけで暗記できるようにと、読む速度を2段階にした。
また、辞書がなくても韓国語の学習ができるように、使う頻度の高い単語(ハングル能力検定試験4〜5級レベル)や表現などを巻末に、韓日・日韓単語リストとして収録するなど、学習者の意欲を高める工夫が凝らされている。
1992年9月に来日。東京・豊島区のサンシャイン日本語学校池袋校で1年間学び、93年12月に日本語検定試験の1級、そして大東文化大学に合格した。
民団葛飾支部に関わったのは93年から。大学時代、都内でアルバイトをしていた飲食店の常連客に、同支部役員の申正意さんの妻の姉がいた。
94年4月、支部の建て替え工事のため、韓国語教室を閉めていたころ、同胞青年たちが立ち上げた親睦サークル「ホドリ会」から、韓国語学習を要望する声が上がった。常連客の姉を通じて、会のメンバーだった申さん夫妻に初めて会った。何度も先生になってと誘われた。当時、日本語はつたなく、教えた経験もない。迷った挙げ句「1回やって、無理だったら辞めよう」と心に決めた。
「そうしたら、無理して日本語を使うことはない。韓国語だけでいいからと皆さんに励まされてきた」。人との出会いがあった。教室が終わった後、メンバーたちとともにした食事の席で、生きた日本語を学ぶことができた。
当時、韓国語の教材は限られていた。「自分でプリントを作ることで、教え方を学んできた」。山積みになったプリントを見て「いつかは本を作りたい」と思ってきた。
民団の教室で広く普及願う
今回、テキストの出版を喜んだのは、李支団長をはじめ、受講生たちだ。 李支団長は「20年前に韓国語教室を始めた時、魏先生は留学生で、自身の日本語上達のためもあった。その中でどうやったら楽しく勉強できるかなどの研究をしていた。今でも韓国語教室を通して自分の日本語を磨いている。そんな熱心な魏先生を尊敬している」と評価し、「葛飾支部の韓国語教室が今回のテキスト出版のきっかけになったのはとても嬉しく感じる。ほかの民団の韓国語教室でもぜひ、使ってもらいたい」と語った。
受講生たちの中には「自分のレベルに合わなくても買うからサインして」という人も。現在、同支部をはじめ、法政大学、専修大学、同大学付属高校などでも教えている。
もともと韓国語を教えたいと思った訳ではないが、運命を感じている。 本来は日本語学日本語教育、韓国語学韓国語教育、認知言語学などの研究が主だ。学会にも出席し、論文も書く。「研究よりも韓国語講師がメーンになっている感じ」だと笑う。
「皆さんの愛身にしみて」
「皆さんは、大事な時間をやりくりして教室に通って学んでいる。そういう方々の思いより、私の論文の方が大事かと考えたら、そんなことはない。だから私も一生懸命やりたい。私は皆さんの愛があったから継続できた」
「毎日、花に水をやるような、継続的な関心、身近な目標設定をしていけば韓国語の勉強は続けられる」。そして「5分でも良いから週に3回以上、韓国語に触れること」だと学習の秘訣を教えてくれた。
定価1800円+税。問い合わせは右文書院(℡03・3292・0460)。
(2013.4.12 民団新聞)