掲載日 : [2017-11-08] 照会数 : 5902
尹東柱碑除幕…生前最後の写真に納まった地に
[ 新白虹橋のたもとに建つ碑 ]
生誕100周年
京都・宇治市
【京都】韓国の国民的詩人、尹東柱を偲ぶ「記憶と和解の碑」が宇治市の宇治川にかかる新白虹橋(しんはっこうばし)のたもとに完成した。建立現場は尹が同志社大の学友らとハイキングで訪れた場所。生前最後の写真に納まった天ケ瀬つり橋から約300㍍上流の右岸側に位置する。地元の志津川区(梅原孝区長)が区有地を提供した。今年は尹の生誕から100周年の節目にあたる。
記念碑は高さ約2メートル、幅1・4メートル、奥行き約1メートル。韓半島と日本産の御影(みかげ)石を1枚ずつ使い、それぞれに尹の詩「セロウン・キル(新しい道)」がハングルと日本語で刻まれている。これは延喜専門学校(延世大学の前身)を卒業して日本への留学を決意したころの作品。専攻の文学研究を深めたいという進取の気概がうかがえる。
制作したのは市民でつくる記念碑建立委員会(代表・安斎育郎立命館大特命教授)。「戦時下の抑圧の事実を記憶し、相互理解による平和実現のため尹の生きた証しを残そう」と2005年に発足した。
10月28日の除幕式には韓国から遺族らも参列し、碑の前で市民と一緒に「セロウン・キル」を朗読した。この後、宇治市の日本基督教団宇治教会礼拝堂に場所を移して「記念のつどい」を行った。ここでは音楽と朗読による構成劇が行われ、尹の愛唱歌も披露された。
安斎代表は「市民による地道な取り組みで実現にこぎ着けた。国際的な平和活動の発信地になるだろう」と、長かった道程を振り返った。
遺族でおいにあたる成均館大教授の尹仁石さん(61)は「大変なご労苦に感謝します。この詩碑が世界の平和と人間の尊厳を確認する発信地になるよう祈ります」と述べた。
尹は42年日本に渡った。留学先の同志社大などで当時は禁止されていたハングルで詩を書き、独立運動に加担したという治安維持法違反容疑で逮捕され、45年2月に福岡刑務所で死亡した。
(2017.11.8 民団新聞)