掲載日 : [2022-01-19] 照会数 : 3207
歴史事実伝え20年…高麗博物館が記念企画展開催中
[ 過去の企画展から反響の大きかったものを紹介している ]
市民による市民のための高麗博物館
韓日関係史を多角的に紹介してきた高麗博物館(新井勝紘館長)が東京の新宿・大久保に開館してから昨年12月で20周年。準備段階までさかのぼると31年が経過した。これを記念する企画展が同館で開催中だ。テーマは「共生社会の実現をめざしてーわたくしたちの31年」。特定のスポンサーはなく、一般からの寄付と会費だけで誰にも気兼ねなく運営してきた市民による市民のための博物館だ。
同博物館の目的の一つは韓半島と日本の間に起きた歴史の事実をありのままに伝えること。これまでに通算65回の企画展示を行ってきた。
1つの展示を実現するには調査から始まり、2~3年かけてきた。すべてボランティア市民の献身が頼りだ。そのかわり大手博物館では見ることのできない企画をタイムリーに生み出してきた。
「『韓国併合』100年と在日韓国・朝鮮人」(後編、2012年)では解放後、日本に残留した在日韓国・朝鮮人が厳しい差別のなかでどのように生きてきたのかを多角的に考察した。
関東大震災「描かれた朝鮮人虐殺と社会的弱者」(2018年)は大震災から95年を迎えての節目企画。3・1独立運動から100年目の19年にも「東アジアの平和と私たち」という展示を実施した。
同館が設立されたのは朝日新聞「論壇」(90年8月16日付)に載った在日女性書画家、申英愛さんの投稿がきっかけ。申さんは「韓半島を植民地支配した事実を知らない日本人が在日韓国・朝鮮人への迫害を引き起こしている」と指摘し、強制連行犠牲者の慰霊塔の建立と「朝鮮美術館」の設立を訴えた。
記事に共鳴した牧師の東海林勤さんが稲城市の教会を事務局に「高麗博物館をつくる会」を発足した。目標の一つは「まずは歴史を知らせること」。91年には在日同胞の宋富子さんが加わり、全国で一人芝居「身世打鈴」を475回公演しながら多いときは900人の会員を集めた。
同館の入居する「第2韓国広場ビル」の家賃が、在日同胞オーナーの好意で相場の半分以下に抑えられていることも20年間維持できた理由だ。同館関係者は「この場所がなかったらこんなに続けられなかった」と述懐している。
開館時間12~17時(月・火曜日休館)。入館料400円(中・高校生200円)。東京都新宿区大久保1-12-1 第2韓国広場ビル7階。03・5272・3510。
(2022.01.19 民団新聞)