掲載日 : [2005-06-29] 照会数 : 3498
【読書…Books】
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『韓国の伝統文化』
『金正日 隠された戦争』
『韓国食生活文化の歴史』 ]
韓国の伝統文化…古代から密接関係の韓日
金渙著(風媒社2200円+税 ℡052(331)0008)
副題に「日本文化とのかかわりの中で」とあるように、韓国と日本の文化の類似性に言及した一冊。
韓国の檀君神話と日本の天孫降臨神話から始まる第1章「神話」には、天孫が神の命を受けて下界を治めるために天降りしたなど、3つの顕著な共通性がある。また、「ここは遠く韓国に面し」との表現から、日本の神話は檀君神話が受容されたものであり、日本の支配層のルーツが渡来人だったことを裏付けると述べている。さらに、日本書記に記されている「すさのおのみことは新羅国に天降られて、そしもりというところにおられた」とあるが、そしもりとは韓国語で牛の頭を指し、日本の古代国家の創建者が、江原道地方にある牛頭山、牛頭原から出雲地方に来たと結論づけている。
第2章の「伝説」にはエミレの鐘など9つが解説され、第3章には97年にユネスコ世界記録遺産に登録された「訓民正音(ハングル)」の起源について書かれた「韓国のことばと文字」がある。
このほか、中国の漢詩に影響を受けた新羅の詩歌が「郷歌」と呼ばれていること、また、「白村江の戦い」で敗れた百済の高官らが日本に亡命したことが、「万葉集」に大きな影響を与えているという記述に接すると、改めて古代朝鮮と日本との深い関係が浮き彫りになってくる。
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金正日 隠された戦争…金日成突然死に陰謀の影
萩原遼著(文藝春秋1524円+税 ℡03(3265)1211)
金日成の死と大量餓死の謎を解く。89年12月、ルーマニアの独裁者、チャウシェスクが民衆の蜂起によって処刑された。当時、平壌にいた記者は、北の内部事情に詳しいソ連外交官を通じて、事態に恐れおののく金父子の姿を知るようになった。
処刑の日、金正日は55年4月に金日成が行った昔の演説を労働新聞に全面掲載させる。内容は「階級の敵を憎悪し、断固として闘え」というものだった。政権の危機は、階級闘争にすりかえられた。
その1カ月後、またしても過去の長文演説(59年3月)が紙上によみがえった。ターゲットにされたのは、咸鏡北道である。同道の「党組織の課題」が俎上にのせられた。中央組織に従わず、勝手に動いていると指弾されたのだ。
やり玉にあがった咸鏡北道に、やがて悲劇が訪れる。飢餓による餓死が集中するのである。
全土が食糧危機に覆われた国をどうするか。この難題解決をめぐって、金父子の対立は深刻になり、日に日に溝が深まっていく。このままでは自分の立場が危うくなる。息子正日の目には偉大な父親が邪魔になってくる。
そこで、息子が取った驚愕の行動が、父を亡き者にするということだった、と著者は分析する。とっぴな発想かどうかは、読者の判断にゆだねたい。
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韓国食生活文化の歴史…風土と社会環境にも視点
尹瑞石著(明石書店6800円+税 ℡03(5818)1171)
人類はすべての歴史を通して、生命を維持し健康を増進させるために食糧生産と調理加工の技術開発を継続してきた。食物は心を満たし、他者と分け合うことで人間のつきあいが深まり、社会性を高める。調理し加工して貯蔵する行為は、人間だけの知恵であり、食生活が文化に名を連ねるゆえんであると著者は説く。
74年に『韓国食品史研究』を世に問い、40余年を食の研究に捧げてきた。本書はその集大成である。第Ⅰ部で自然環境と食生活文化の関係を解説した後、韓国の食生活文化の歴史、儀礼規範と飲食の関係を掘り下げた。
各民族固有の料理は、風土と社会環境によって育まれ、集団の結束強化と同一性意識を芽生えさせる。同時に、異なる食生活について、優劣をつけない姿勢が、文化の画一化をも抑制できるという。
主食に合わせて食器が決まり、食事形式によって民族の衣装もおのずと決まるという指摘は新鮮だ。韓国の古代上流層は、椅子とテーブルの食事形式だったため、チマの幅が狭く、チョゴリの丈が長い。朝鮮朝ではオンドルが一般的になったため、座って食べる形式が定着、チマのすそが広がり、チョゴリの丈が短くなった。近代になると、アパートに住むようになり、洋服が一般化して再びテーブル式に戻ったという。目からウロコが落ちる一級の読み物だ。
(2005.06.29 民団新聞)