掲載日 : [2005-09-07] 照会数 : 3964
【読書】
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マイノリティ・レポート
◆どこか変だよ日本社会
副題に「在日」だから見える?とあるように、在日2世だからこそ気づく、日本社会のあり方に関する疑問を呈した一冊。在日であると意識した瞬間から、日常生活の中で見えてくる日本社会の不思議さ。著者の経験にわが身を重ね合わせると、うなずくことも多いのではないか。
例えば、地域住民が近隣にできる新マンションの建設反対運動を起こす。利害がからまない著者はその運動に気が進まないが、執拗な誘いと同時に在日であることを認知されたい症候群が首をもたげて参加する羽目になる。
ところが、いったん関わると、言いたいことを言い、動きたいように動く在日の性(さが)が災いして(功を奏して)、反対運動のリーダーに祭り上げられる。そして、建設側との交渉が暗礁に乗り上げると、「日本人同士なら何でもない交渉が…」という民族差別を匂わせる発言が飛び出す始末。最終的には発言の撤回と謝罪を勝ち取るが、仲間であったはずの住民は、著者を厄介者扱いし、村八分状態にしてしまう。
そのほか、自治会の会長を押し付けられる過程での人間描写は、在日のメンタリティーの共通性を改めて思わせる。「出る杭は打たれる」という処世術を理解しつつも、日本社会の妙なしきたりに盲従していいのか、という葛藤がペンを取らせた。
玄善允著/同時代社
1200円+税
℡03(3261)3149
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不思議な力 夜間中学
◆知への欲求満たす原点
教育現場の荒廃が叫ばれて久しい。生徒による学校内での殺人も起きるほどすさんだ世相である。右派政治家らは教育基本法の「改正」に躍起になっている。
その一方で、本当に教育を受けたい人たちに、「読み書きそろばん」をはじめ、学ぶことの大切さを教えている学校がある。夜間中学である。敗戦後の混乱期、昼間に登校できないおびただしい数の長欠生徒らを救うため、1947年に開設された。
夜間中学校と言えば、在日には目新しい言葉ではないだろう。植民地時代という時代的背景と女に教育は必要ないという男尊女卑の考え方などによって、教育の機会を奪われた1世のハルモニも通っているからである。山田洋次監督の映画「学校」にもそういうハルモニが描かれていた。
本書は、廃止勧告を突きつけられながらも、学校の増設を全国行脚をしながら訴え続けた卒業生の思いをはじめ、日本に来てただひたすら働き、生きるためにがむしゃらだったハルモニらが、「いきがとまるほどかなしいことがあった。はぎしりするほどくやしいこともあった」体験を綿々とつづっている。文字が読めない、書けない、教育を受けられなかったという事実が、ずっと彼女らにつきまとってきた。その哀しみを救ったのが、夜間中学校である。教育の原点に立ち返る一冊。
守口夜間中学編集委員会編/宇多出版企画
1800円+税
℡06(6991)0637
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まんが 大長今
◆漫画でチャングム物語
NHKのBS衛星放送で現在好評放映中の「宮廷女官チャングムの誓い」が、全編カラーの漫画シリーズになってお目見えした。
韓国で50%もの視聴率を支えたストーリー展開もさることながら、きれいな絵と生き生きとした表情に、漫画の醍醐味を味わうことができる。たかが漫画などとあなどれない仕上がりだ。
次に、本編のせりふは日本語だが、巻末にルビ付きの韓国語対訳もあるので、生きた韓国語の勉強にもなる。これなら漫画に対してまゆをひそめる古い世代も、子どもや孫へのプレゼント用に重宝するかもしれない。
また、チャングムが女官になってからは、韓国宮廷料理が次々に登場するので、その奥の深さを知ることは、グルメならずとも興味をそそるだろう。
この漫画発刊も韓流の影響と言えるだろうが、一方では国粋主義の金縛りから抜け出せない連中が、韓流に狙いを定め、韓国のあることないことをてんこ盛りにした嫌韓マンガを出したという。「ゴーマニズム」何とかの続編のような代物だが、そういう後ろ向きの世界に浸るより、1500年当時の人々を苦しめた身分制度を、わが身を危険にさらしながらも打破し、韓国で初めて医女になった女性の波乱万丈の物語に触れることの方が生産的だろう。
キム・ヨンヒョン原作、オ・スー脚本・画/晩聲社
1400円+税
℡03(5283)3721
(2005.09.07 民団新聞)