掲載日 : [2007-07-04] 照会数 : 4728
<読書>ナム 在日歴30年をたどる人生の詩闇から光へ
多彩な表情を詩にたくして
母国語の詩集でいくつもの賞を受賞してきたワン・スヨンさんが、初めて日本語で書いた詩集である。
冒頭の「挨拶」はさわやかな薫風を感じさせる序曲ともいえる詩。だが、読み進むうちに、この作品集は四季のように多彩な表情を見せ、読者にうれしい戸惑いと多くの期待感を抱かせてくれるものになるはずだ。
前半は日本に住むようになって間もないころ詠んだ作品だろうか。懐かしい祖国への少女のような憧れにあふれていて初々しい。
やがて季節はめぐり、めくるめくような夏の恋。作品からは、はじけるような幸福感が感じられる。
そして最愛の伴侶を失い、異国に取り残された孤独を静かに見つめつつ、作品は内省的になっていく。ここには雑誌記者として訪日してからの在日30年の歴史が透けて見えるかのようだ。
ワンさんがこの詩集の中でいちばん愛着があるという作品の「約束」は、たった1人の子息への深い愛情に根ざしている。ワンさんがある集会で朗読したところ、たくさんの人が感動の涙を流したといういわくつきのもの。
日本語で書いてあっても、韓国語の韻だけはしっかり伝わってくる。ギリギリまで削り取った言葉の端々からプリズムのように放たれる光が悲しくも美しい。
(ワンスヨン、〈王秀英〉著、企画ユニナ2000円+税)
℡042(499)2144
(2007.7.4 民団新聞)