掲載日 : [2008-09-03] 照会数 : 3944
<読書>韓の国の家族 わかちあう喜怒哀楽の情
83年の夏、テレビのディレクターだった著者は、陶磁器に関する番組取材で訪韓し、陶芸の地、京畿道・利川で中堅陶芸家と出会う。
陶工の地位は、韓国では「常奴」と蔑視される最下層よりもさらに低いと言われ、名門大の卒業生が選ぶ職業ではないと一般的には思われている。にもかかわらず、両親の猛反対を押し切って陶芸家になった男と、その家族がかもし出す人間的な魅力に心引かれ、休暇のたびに訪韓するようになった。
そこまで心酔した陶芸家の魅力とは、単に個人の人柄を超え、朝鮮王朝五百年の間に培われた儒教文化の重みがもたらす徳であると言い切る。韓の国で正月にトックを食べ、ユンノリに興じるひと時は、東京での渇きが満たされる至福であった。楽しみも喜びもともに味わい、ともにわかちあう韓国人の姿に、韓国人の人間関係の原型を見る。
韓国を苦しめてきた国家としての日本と、現実を生きる一人ひとりの日本人との間には、距離があると伝えたいとの思いが根底にあったのであろう。日本語をまったく理解しない子どもたちと直接話がしたいと、独学で韓国語も学び始めた。
政治問題になると一瞬にしてギクシャクする両国関係とは対極をなす韓日の心の交流を地で行くノンフィクションである。
(多胡吉郎著、淡交社1500円+税)
℡075(432)5151
(2008.9.3 民団新聞)