掲載日 : [2009-01-01] 照会数 : 11647
自治体外国人会議広がる 「多文化共生」の実態映す
[ 09年提言に向けて一般市民から意見を聞く川崎市外国人市民代表者会議オープン会議(写真は教育分科会、08年12月) ]
外国人市民会議を設置して外国人市民の意見を聞き、行政の施策に反映していこうという自治体が、外国人居住数の多い関東、東海、関西地方を中心に少なくとも16都府県に広がっていることが分かった。いずれも外国人市民の地域社会への参画を促し、多文化共生のまちづくりを目指している点が共通している。外国人人口は近年増加の一方だけに、多文化共生志向は今後さらに広がっていくものと見られる。永住外国人の地方参政権実現にも追い風といえよう。各地の外国人市民会議の動向を探ってみた。
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神奈川
独自の居住支援システム確立
外国人市民会議の設置根拠を見ると、「条例」か「要綱」に分かれる。「要綱」という位置づけは首長の諮問機関程度の影響力しかなく、議会に対しても強制力はない。これに対して「条例」は地方自治法の「法」に相当する。議会に対しても権限と責任を持つ。96年からスタートした川崎市外国人市民代表者会議は全国で初めて「条例」で設置された。
公募で選ばれた代表者26人は特別職の地方公務員として処遇される。任期は2年。年4回(1回あたり2日)会議を行い、調査審議の内容などを年1回、市長に報告する。市長は年次報告(提言)を尊重し、その内容を市議会に報告する。提言については全庁的な会議で施策反映に取り組み、代表者会議に提言への取り組み内容を毎年報告している。
市のまとめた「提言集」(96〜05年度)を見ると、担当局が「一定の成果を得た」と判断したものに「A」、「取組中・検討中」としているものに「B」の評価が示されている。「A」評価の中でも外国人への入居差別を禁じる文言まで入った川崎市住宅基本条例の施行と「居住支援システム」(04年)は「画期的」と言われている。1期と2期の委員長を務めた李仁夏さんは「不動産業者からはもはや外国人だという理由で断ることができないという声も聞いた」という。
韓国から視察に訪れた大学院生は05年、レポートで次のように報告している。
「単純に外国人住民の増加による行政上の難点を解決するために措置がとられるという段階からより一歩進み、外国人市民に対する観点を根本的に見直し、彼らの参政権を尊重するために条例に基づいて連続的に機能できる制度的なフレームを作ったという点で意義が大きい」。
川崎市ふれあい館の重度館長は「地方参政権の完全な実現に至るまでには多くの段階があり、その段階の一つとして、諮問機関である外国人市民代表者会議が重要な意味を持つのではないか」と指摘している。
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大阪
民団が設置働きかけ…定住者施策 着実に前進
「外国人市民会議」の設置にあたっては、各地の民団も主導的な役割を担ってきた。これは在日韓国人が多く住む地域で顕著に見られる。民団は内なる国際化にも貢献しているのだ。
大阪市外国籍住民施策有識者会議と大阪府在日外国人問題有識者会議の二つは、民団大阪府本部が長年自治体に要望してきた懸案だった。金秀事務局長は「外国人市民会議ができるまでは、国籍条項だったら人事、高齢者福祉だったら民生と、窓口がバラバラだった。外国人の諸問題を一つの有機体として組織の中で吸い上げ、問題の所在を分析して、抜本的な方向性を出してもらう必要があった」という。
府は92年10月、同じく市は94年11月の設置。設置根拠はいずれも要綱だった。委員の構成は外国人と日本人の有識者合わせて10〜14人で、行政による指名。会議は年に2回程度開かれている。
大阪市は解放前から一貫して韓半島出身者が全国一の多住地域だけに、施策の重点は当然、定住外国人に置かれている。市は各委員からの助言や意見を踏まえ98年3月、「市外国籍住民施策基本指針」を策定した。このなかで①外国籍住民の人権の尊重②多文化共生社会の実現③地域社会への参加という3つの目標を掲げた。
外国人施策も進んできた。現在、大阪市の外国人施策を所管しているのは市民局人権推進グループで、外国籍住民施策担当の課長を配置している。
金事務局長は、「窓口部局ができてから在日の住民としての諸問題をオール大阪の問題として取り組んでいく態勢ができた。その意味で外国人会議はとても大きな意味があった」と喜んでいる。
府も会議の中で委員から言われた意見に基づいて定住外国人に対する施策を総合的に推進していく「指針」を策定した。府政参画では各種審議会への幅広い人材の登用も盛り込まれた。
府有識者会議委員の高龍秀さん(甲南大学教授、「民族教育基金」代表)は「係官から説明を受けて意見を言うが、会議は2時間半と短く、じっくり議論できないのが難点。ただ、府の担当者と直接話ができるので、民族学校や民族学級の現場でなにか問題があれば会議の場で反映できる」と話している。
大阪ではこのほか、東大阪市と豊中市でも同様の外国人市民会議が設置されている。民団中央本部の呉龍浩監察委員は東大阪市外国籍住民懇話会の公募委員で現在、副座長を務めている。
呉さんは「一市民として、在日全体の地位向上のために応募した。委員になってからは行政における民団の地位も格段に向上した」という。
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兵庫
ニューカマーとも連携
兵庫県では外国人県民を取りまく課題に対し、行政と外国人団体が協議する兵庫県外国人県民共生会議ができている。設置要綱は99年8月30日の施行。地元の民団、総連、華僑総会など13団体が参加している。
民団兵庫県本部の李圭燮副団長は「副知事など高位層が出てくるので、民団の抱える懸案で県との直接交渉の場となる」とメリットを強調する。華僑総会や他の外国人団体との協力関係ができるのもプラスだという。
神戸市でも03年から外国人市民会議が組織されており、民団兵庫県本部の任職員が当然職として参加している。第1期委員を務めた当時の事務局長、尹達世さんは「観光地の案内が英語と日本語の2カ国語表記となっていたので、アジアに目が向いていないと苦言を呈したことがある。その場は聞き置くという感じだったが、いつのまにか解決されていた。いろいろ問題はあるとしても、こういう場が設置されていることは意義がある」という。
現在、兵庫県と神戸市の両外国人市民会議で委員を務める金相英民団兵庫県本部事務局長は、「神戸ではゴミ収集とか防災とか外国人施策イコールニューカマーとなっている。オールドカマーの立場からいろいろ提案しているが、年に1,2回の会議では限界がある」ともらしている。
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静岡
静岡市外国人市民懇話会(05年7月設置)も民団側の意見反映の場となっている。現在は民団静岡県本部から金勇事務局長に代わって権竒鉉総務部長が副会長として加わっている。
来年2月に市長に手渡す提案書には、外国人市民の地方参政権の国への働きかけと、外国人市民の審議会への登用が盛り込まれる。実現すれば、静岡市では初めてのことだ。権副会長は「2年間時間をかけて地方参政権の必要性を訴え、ようやくメンバーの理解を得られようになった」という。
静岡県浜松市ではこれまで要綱で設置していた浜松市外国人市民会議を廃止し、08年度からは条例で浜松市外国人市民共生審議会として再スタートさせた。日本人有識者と公募の外国人8人で構成。市の担当者は「外国人市民会議の延長線ながらワンランクアップさせた」と話している。引き続き、委員として在日韓国人が1人入っている。
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岡山
岡山外国人市民会議は05年2月の設置。市によれば、第1期提言を受けて施策への反映を順次実施しているところだという。民団岡山県本部の孫泰欽事務局長は「団員も1人入っているので、民団の立場を施策に反映できる。会議で話し合われたことを真摯に捉えて市政に反映させ、外国人住民が住みよい社会づくりに貢献できるのを期待している」とのこと。
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愛知
愛知県は都道府県別では東京都、大阪府に次いで外国人登録者が多い。しかし、外国籍県民あいち会議ができたのは02年8月と比較的遅かった。県内在住外国人の増加に伴い、外国人の視点を生かした多文化共生社会づくりが目標だ。来年3月に初めての提言を出す。
民団愛知県本部の姜裕正事務局長は「愛知は外国人の人口密度からいえば全国一なのに、外国人施策が進んでいなかった。やっとできたという感じだ。当時は行政もこれほどニューカマーが増えるとは思いもしなかったのでしょう。ニューカマーとかオールドカマーとかにかかわらず、外国人会議は大切」と、これからの多文化共生施策に期待を寄せている。
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広島
ニューカマーの増加に合わせ、広島市でも外国人市民施策懇談会ができている。外国人市民と日本人市民の協働による多文化共生社会づくりめざすというもの。
李英俊委員(青商連合会会長)は、「災害時の対応とか、施策の重点がニューカマー中心になるのはしょうがない。在日の立場から積極的に意見をいうのではなく、ニューカマーの立場を受け入れる度量の広さも必要。広島としては、懇談会がないときのことを考えれば外国人市民施策は前進しているといえる」と歓迎している。
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岐阜
同じく、外国人によるまちづくり会議で会議の中心的存在となってきた民団岐阜県本部の董勝正事務局長も「在日は言葉の面でも会議を主導する立場。歴史的経緯もあり、ニューカマーのメンバーが耳を傾けてくれる」と話している。
(2009.1.1 民団新聞)