掲載日 : [2009-03-11] 照会数 : 5149
<読書>猛牛と呼ばれた男 韓日戦後史の闇将軍を照明
荒廃した戦後の東京で、腕力を武器に千五百人の構成員を擁する暴力団「東声会」の首領として一躍その名を轟かせたのが、在日2世の町井久之こと鄭建永である。
その一方で、日本の政財界の大物とのパイプを築き、韓日国交正常化では水面下で動いた。朴正煕大統領の信任も厚かったという。
猛牛と呼ばれ、総連の前身である朝連との泥沼の闘いでは、大山倍達(極真空手創設者)とともに、一撃で相手を倒すことで、敵対組織の戦意を喪失させた。建青東京本部副委員長を皮切りに、民団や体育会など、在日組織の立役者でもあった。
暴力一掃を掲げる祖国の方針に沿って、組を解散。在日初の韓国五輪委員や政府勲章受章、そして実業家への転身など、数々の栄光もあったが、異民族ゆえの挫折も味わった。02年に他界したが、生前、自分のことは一切表に出すなと言っていた彼の歩みは、知る人ぞ知るタブーの領域だった。本書は在日の裏面史を象徴する生き様を、未亡人からの聞き取りをもとに、照明を当てたものである。
同胞であることを隠し続けた力道山とは、兄弟のように付き合った。その深い絆が児玉誉士夫との出会いにつながり、やがて韓日会談の呼び水となった。「北送事業」で望郷に揺れる力道山の北行きを引きとめたこともあった。
(城内康伸著、新潮社1600円+税)
℡03(3266)5611
(2009.3.11 民団新聞)