掲載日 : [2009-04-29] 照会数 : 4313
<読書>在日一世の記憶 生きた歴史傾聴する営み
植民地時代から戦後を生き抜いてきた在日1世52人の証言を、03年からプロジェクトを立ち上げて取材し、2人の大学教授がまとめた。
歴史資料館の姜徳相館長や大阪で民族教育一筋に尽力した金容海氏、BC級戦犯として法廷で闘う李鶴来氏、詩人の金時鐘氏らのほか、すでに他界した李仁夏川崎教会牧師、北九州に強制連行された同胞の遺骨を収集し、納骨堂を建設した崔来善氏、映画「海女のリャンさん」の主人公、梁義憲さんらの生前の肉声が収められている。
取り上げられるべき人が登場していないのでは、と思う向きもあるだろうが、すでにこの世にいなかったという事情もある。遅きに失したと思うのは、2世以降の共通した思いだろう。
有名・無名を問わず、一貫しているのは、彼・彼女らの人生が日本の植民地支配によって、いかに翻弄されてきたかという事実である。土地を奪われ、亭主を働き手として連れて行かれ、どれほどの慟哭があったのか。にもかかわらずと言うべきか、だからこそと言うべきか、裸一貫からよくぞここまで這い上がってきたと、そのたくましさに脱帽するしかない。
皆さんの両親をはじめ、周囲のオルシンが健在なうちにぜひ肉声を聞いて残すことをお薦めしたい。わが家の歴史は、貴重な同胞史になる。
(小熊英二・姜尚中編、集英社新書1600円+税)
℡03(3230)6391
(2009.4.29 民団新聞)