掲載日 : [2003-04-16] 照会数 : 3466
長生炭鉱事故テーマの紙芝居 DVD化で普及に拍車(03.4.16)
[ 紙芝居で歴史の事実を語り継ぐ市民団体(西光寺で) ]
在日同胞が協力…加害の歴史知って
徴用韓国人131人が犠牲
【山口】解放前、山口県宇部市で起きた海底炭鉱の浸水事故で多数の韓国人徴用工が犠牲となった長生炭鉱の悲劇をテーマにした「アボジは海の底」が紙芝居となり、いまもなお学校や地区の学習会で活用されている。紙芝居を作成した市民団体では、未来を担う子どもたちに歴史の事実を語り継ぐ材料にしてほしいと期待をかけている。
この紙芝居は長生炭鉱でおきた水没事故を語り継ぎ、掘り起こす活動を続けている山口県内の市民団体「長生炭鉱の『水非常』を歴史に刻む会」(山口武信会長)が96年夏、子供向けフィールドワークの教材として作成した。
主人公は慶尚北道出身の「朴鐘浩」(21)。実在した人物ではないが、事故の生存者の1人をモデルとした。紙芝居では「朴鐘浩」自身の体験を通じて、韓国人労働者が半強制的に韓半島から連れてこられたこと。坑道の中に水が出て、いつ崩れるか分からない危険な状況下で労働を強制されてきた事実を明らかにしている。
坑内の様子や当時の状況は「刻む会」代表の山口武信さんが、生き証人からの証言をもとに忠実に再現した。紙芝居の原版は「刻む会」の山内弘恵さんが友人の主婦2,3人の助けを借りて描いた。絵はカラー21部構成で、ダイナミックな仕上がりとなっている。
紙芝居はこれまでにも折りあるごとに上演され、過酷な強制労働の実態を伝えてきた。長生炭鉱事故に関するまとまった資料はないだけに、大人にも問題の所在がよくわかると歓迎されている。
子どもたちには史実の一端を知って未来を考えていくうえのきっかけともなっているようだ。
昨年11月に「刻む会」から紙芝居を借りて自ら主宰する「大和高田ケグリ・オリニ会」で上演した金康子さん(40)は、子どもたちが思った以上に興味を示したことから「刻む会」へのお礼の意味も込めて、3月から紙芝居そのものをDVD(デジタル多様途ディスク)化する作業に取り組んでいる。子どもたちが吹き込みを担当、脚本、演出、編集作業などは金代表自身があたっている。
紙芝居はオリジナルで1部しかないことから、「刻む会」でもDVD化で普及に弾みがつくと期待を寄せている。
「刻む会」は91年に結成された。毎年2月に追悼式を開催、碑の建立、事故現場に今も残る排気口(ピーヤ)の保存、事実調査にも取り組んでいる。
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長生炭鉱とは
山口県宇部市西岐波で1933年から操業していた海底炭鉱。日本が真珠湾を攻撃して間もない42年2月3日に水没事故が起き、183人が犠牲になった。その7割、131人が韓国人だったとされる。遺体はいまもなお海底に沈んだまま。現場の海にはコンクリートで作られた円形型の排気口、入気口がいまも残る。韓国の遺族会では遺体の引き揚げを実現したいと頑張っている。
(2003.4.16 民団新聞)