掲載日 : [2003-01-01] 照会数 : 3360
高齢化社会担う同胞実践者−大阪市同胞窓口(03.01.01)
[ 生野区の同胞高齢者宅で相談を受ける宋貞智さん(右) ]
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福祉サービス橋渡し
大阪市同胞高齢者窓口−宋貞智さん
生野区の在宅サービスセンター内に大阪市が設置した在日同胞を対象とした高齢者福祉の専門窓口がある。西区の高齢者総合情報センターでは電話による相談が主だが、生野区の相談分室では自宅まで訪問し、各種相談や情報提供、区役所をはじめとしたサービス機関への付き添いも行う。
生野分室に相談員の一人として勤務する在日2世の宋貞智さん(43)は在日同胞高齢者からの相談をただ待つだけではなく、あらゆるツテを使って探し歩いている。そのほうが効率的だからだ。
大阪市は高齢者福祉の分野では先進的地域とされる。区在宅福祉サービスセンターを起点に中学校区、小学校区ごとにお年寄りをケアするための住民ネットワークシステムができているからだ。
にもかかわらず、在日同胞高齢者に行政からの情報が十分行き届かず、福祉サービスから取り残されている現状に宋さんはいらだちを隠せない。
ある家庭では高齢のハルモニが重い後遺症を抱える40歳過ぎの息子の介護にあたっていた。宋さんが調べたところ、このハルモニは地域のネットワーク推進委員の訪問を受けながら、「だいじょうぶです」と答えていたという。福祉の分野では申告制が基本。当事者が支援を求めなければ、福祉サービスからこぼれ落ちていく。
こうした現状は今に始まったことではない。在日同胞高齢者は長年の体験から役所にいいイメージを持っていないし、自ら進んで助けを求めようとはしないという。だからこそ宋さんは同胞家庭を訪ね歩くのが重要だと説く。そのための地域ネットワークづくりが宋さんの課題だ。
具体的にはボランティアの世話人「在日コリアン高齢者福祉をすすめるネットワーク委員」(仮称)を募り、周囲の同胞高齢者を常に見守ってもらうようにしたいという。
まず、身近に在日同胞の高齢者がいるかどうかの確認から始め、在宅していれば1週間に1回でものぞいてもらうのが基本。周囲に困った同胞がいないか、元気で生活しているか。何かあれば宋さんら相談員に連絡してもらうようにする。生野区から始め、いずれは市内24区すべてに広げたいという。
宋さんは「高槻むくげの会」の専従職員当時から一貫して福祉の分野で取り組みを進めてきた。90年代に大阪市社会福祉協議会(市社協)にヘルパーとして入ってからは市社協とともに「コリアンヘルパーチーム」をつくり、福祉サービスから取り残されがちな在日コリアン高齢者福祉に取り組んできた。
忘れられないのは生野区が97年10月、在日同胞高齢者のニーズにあわせた「在日コリアン高齢者の1日デイサービス」を大阪市と共同で行ったときのこと。当時、行政としては全国で初めての試みだった。
参加したハルモニから「これ、毎日やってくれるの」と聞かれた。このころ、生野区では在日同胞の文化、生活背景を考慮した福祉サービスはほとんどなかった。
これがきっかけとなり宋さんは昨年9月、ボランティアで在日同胞高齢者を対象にしたデイサービスなどを行うNPO法人「大阪多民族共生人権総合福祉センター『ぱだ』(うみ)」を生野区でオープンした。
来年からはここからヘルパーを派遣していくことも考えているという。
(2003.01.01 民団新聞)