掲載日 : [2007-06-06] 照会数 : 6736
<読書>在日朝鮮・韓国人と日本の精神医療 自殺の引き金は精神疾患
在日同胞の自殺率は、日本人よりも相対的に高いとされる。その遠因として著者は、精神疾患が考えられるというのである。
今から思えば、書評子の知人が自死したときもその前兆があった。外界・周囲と断絶して部屋に閉じこもり、「隣人から覗かれている」としきりに猜疑心を口にしていたからである。
解放前、日本統治下の韓国から渡航し、貧困と日常的な蔑視にさいなまれながら、社会の最底辺で重労働に従事していた1世が、各地を点々とするうち、ちょっとしたことから「日本の国家権力による朝鮮人迫害」という妄想にとらわれ、「問題行動」に移ったとしても決して不思議でないと著者は指摘する。
一例として、80年代の事例を挙げる。都立松沢病院に勤務していた筆者は、診療録を通して在日同胞の精神疾患・精神障害が予想以上に多いのに驚く。身近で遭遇した症例を通して、「歴史的に形成された朝鮮・韓国人へのステレオタイプ視が、安易な統合失調症のレッテル張りに結びついたのではないか」という結論を導き出した。
診療録から抜き出して具体的な分析を加えた10のケースは、それまでの「タブー」に挑戦したものとして貴重だ。日本の精神医療学会への痛切な問題提起になっているからである。
(黒川洋治著、批評社1800円+税)
℡03・3813・6344
(2007.6.6 民団新聞)