掲載日 : [2007-12-05] 照会数 : 4206
<読書>パンソリに想い秘めるとき 波乱万丈の在日人生70年
父は北韓への「帰国協力会」の幹事として、旗を振り続けた一人だった。ところが、1960年8月、8・15解放15周年慶祝訪朝団の一員として北を訪問した折、15年間の理想が一朝の夢だったことを身を持って体験した。
帰日後、10カ月も懊悩の日々を送ったあげく、『楽園の夢破れて』を著した。「地上の楽園という幻想を捨て、祖国建設に寄与する覚悟がなければ帰国する意味がない」との必死の訴えは、朝鮮総連から「帰国事業を妨害する裏切り行為」との汚名を着せられることになった。それから父と娘の断絶が始まった。朝鮮大学に勤めていた夫も窮地に追い込まれ、ついには大学を辞めざるを得なくなった。
しかし、夫は組織に対する「節操」を守るため、生まれ故郷の南の土地を訪ねることもなく、親の死に目にも会えないという、儒教の国で最も恥ずべき親不孝をしたのだった。81年に夫は金達寿、姜在彦両氏とともに玄界灘を越えたが、民族を裏切る行為だと指弾された。両親の墓前に跪き夫が慟哭したのは、死後15年が経過した後だった。イデオロギーが肉親の情を断ち切ったのである。
このほか、商社マンの息子がペルーの日本大使館で左翼ゲリラに襲われ、人質にされるという事件や娘の急死もあった。まさに波乱万丈の在日70年の人生である。
(呉文子著、学生社1800円+税)
℡03(3857)3031
(2007.12.5 民団新聞)