掲載日 : [2008-04-16] 照会数 : 3738
<読書>収容所に生まれた僕は愛を知らない 北の闇から奇跡の脱出
父の甥が韓国戦争の時に越南したという理由だけで、65年のある日、一家は突然「強制収容所」送りになった。父は仕事ぶりが認められて結婚を許された。その収容所で囚人の子として生まれ、奴隷のように23年を生きてきたのが著者である。
支配者・金父子のことも知らされなかったというから、そこは北韓でありながらも北韓ではなく、社会から一切隔絶された闇の中であった。
夫婦は収容所内で一緒に住むことができない。9歳の頃の夕方、仕事場に母を迎えに行った少年は、保衛員に性的仕打ちを受ける母を目撃してしまう。母だけでなく、収容所に生きる数万人の女性の共通体験だと言い放つ絶望感に言葉を失う。別の日、体調が悪化して意識を失った母を待っていたのは、ノルマを果たさなかったことへの拷問と仲間からの集中批判であった。
父とは仕事中に出くわしても、互いに知っているという素振りすら見せることができなかった。規則で禁じられていたからである。
父母兄弟に肉親の情を感じる情緒も育たず、本書の題名通り、愛を知らずに生きてきた。一度入ると一生出られない「完全統制区域」から唯一奇跡の脱出を果たした記録に慄然としつつ、人を人と見ない人権蹂躙の仕組みが今も北韓にあるという現実を、まずは知らねばならない。
(申東赫著、KKベストセラーズ820円+税)
℡03(5976)9121
(2008.4.16 民団新聞)