掲載日 : [2008-04-16] 照会数 : 4004
<読書>オモニー在日朝鮮人の妻として生きた母 死の直前に知る父への愛
貧困、差別と偏見、抑圧、暴力と酒、家族離散と、本書が描く世界はまさしく梁石日氏の『血と骨』を彷彿させる。救いは、どんな過酷な状況下にあっても、ひたむきに生きようとする日本人の母親のけなげな姿だ。
解放前、母親は家族の猛反対を押し切って大好きな在日韓国人の父親の胸に飛び込んだ。しかし、韓国には夫も知らなかった名目上の正妻がすでに控えていた。夫に伴われて韓国に足を踏み入れた母親は、下女同然に扱われる。韓国で生を受けた著者も、よけい者でしかなかった。
解放後、両親は福岡県内の同胞集住地区を点々としながら必死に生きる。ある日、密造酒取り締まりの網にひっかかり、両親は収容され、著者は妹とともに養護施設に引き取られる。当時まだ9歳だった。生業を失った父親は酒におぼれ、母親への暴力に明け暮れるようになる。
母親への愛情とは対照的に父親に向けられる憎しみが心に突き刺さる。だが、やせ細って死を待つばかりの父親を前にしたとき、初めて、在日として人知れず苦労を重ねてきた父親を理解し、慈しみの感情が芽生える。本書はタイトルこそ「オモニ」だが、在日の父親の存在が大事なテーマとなっている。
幻冬舎・フジテレビ共催の「第2回感動ノンフィクション大賞特別賞」受賞作。
(小野順子著、幻冬舎1300円+税)
℡03(5411)6211
(2008.4.16 民団新聞)