掲載日 : [2003-03-12] 照会数 : 4009
等身大の隣国理解に貢献 韓国語ALT(03.03.12)
[ 韓国語ALTの金智賢さん(中)=大阪府立阪南高校で= ]
大阪、鳥取、長崎で採用
JETプログラム(語学指導などを行う外国青年招致事業)を利用して韓国からやってきた外国語指導助手(略称、ALT)が大阪、長崎、鳥取の3自治体で4人活躍している。その役割は公立高校の学校現場での韓国語授業の補助にとどまらない。教材作成、国際理解教育にも関わり、身近なところで等身大の隣国理解に貢献している。
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高校を拠点、市民講座も
韓国語ALTは鳥取県が招請したのが初めて。やがて大阪、長崎へと広がっていった。
長崎県は厳原市にある県立対馬高校で韓国語講座を開設するため昨年4月から韓国語ALTとして金廷さん(28)を招請した。県としては初の試み。金さんは4月の開講に向けて教材の手配やカリキュラムの編成にたずさわってきた。
同校の菅藤邦輔校長は「手探りからの出発だったので金先生に指導してもらい助かった。国際交流部の部活動では本場のサムルノリを指導してもらった。韓国をそのまま体現している人が身近にいることは大きい。韓国に留学したいという生徒も出ている」と話している。
鳥取県では米子と仁川間に週3便の定期便があり人的交流が盛ん。県民の韓国理解が進んでいることで知られる。県立高校では28校中6校で韓国語授業が行われているほど。現在、2人の韓国語ALTを採用している。
2人はそれぞれ県立米子高校と倉吉産業高校を拠点校に、複数の学校で韓国語の授業を担当している。クラブ活動や講演にも積極的に関わり、韓国の歴史や文化の紹介に努めている。この結果、「韓国語ALTとの人的なつながりを通して生徒の韓国への関心が目に見えて高まった」(県教委の話)という。このほか、各学校で毎週土曜日に開催する「開放講座」では一般の市民を対象に韓国語を教えている。
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CD教材制作にも寄与 大阪
大阪の韓国語ALT金智賢さん(28)は民団大阪府本部からの要請を受け、府が招請した。
府立阪南高校と長吉高校の2校で指導助手を担い、韓国語授業の定着と活性化に貢献してきた。特に阪南高校では在日同胞の任喜久子教諭のアシスタントとして同校「国際文化コース」の韓国語の選択授業を担当、任教諭との「ティーム・ティーチング」が好評を博した。これは任教諭が教職経験のない金さんを指導助手として育てあげた功績が大きいといわれている。
任教諭は「韓国から来た先生が日常的に学校にいて、言葉を交わしたり質問したりして『あー、違うんだ』『なんだ、一緒やん』とか、韓国をとても身近に感じたのではないか」と韓国語ALTの効果を話している。
金さんの「生きた本場の韓国語」は小・中・高校の国際理解教育の現場や、府教委がCD教材を制作した際にもいかんなく発揮された。大阪府教委の松宮新悟指導主事も「JETプログラムによる金さんの派遣は大きな成果があった」と認めている。
金さんは3年間の勤務を終え31日に帰国する。4月に赴任する後任をめぐっては「後任は阪南高校に来ていただくという決定はしていない。たった1人の招致だけに大阪府立高校の間で取り合いになる現状」(阪南高校の奥本隆校長の話)だという。
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JETプログラム(語学指導などを行う外国青年招致事業)
国際交流員、スポーツ国際交流員、外国語指導助手(ALT)の3つに分かれている。外国語教育の充実と地域レベルの国際交流の推進を目的に地方自治体が87年8月から国と共同で実施している事業。招待対象言語は英語圏が中心だったが、98年に韓国語と中国語が加わった。現在、韓国からは65人が参加している。このうちALTは4人。
(2003.03.12 民団新聞)