掲載日 : [2009-01-14] 照会数 : 5169
<韓人歴史資料館>見て知る在日100年の生活
収蔵品を図録に
在日同胞100年の歴史を写真と解説、関連する文学作品などからの引用で立体的に浮き彫りにした『写真で見る在日コリアンの100年=在日韓人歴史資料館図録』(A4版159㌻、在日韓人歴史資料館編著)が明石書店から発刊された。掲載写真約700点余は在日韓人歴史資料館(東京港区、韓国中央会館別館内)の収蔵品が中心。一目で「在日コリアンの100年」を理解できるのが最大の特徴だ。
本名消された通信簿
解放喜ぶ手製太極旗
本書を開くと各頁に数点ずつ配した大判の写真が目に飛び込んでくる。解説は最小限にとどめ、写真の理解を助けるための脇役に徹している。各時代の文学作品などから抜粋した一文が当時の時代背景を如実に伝え、興味が尽きない。
全20章構成。植民地下の渡航から始まり、在日韓国人が日本社会の最先端で活躍する現在までの姿を時系列で振り返る構成となっている。
一枚の切符が語る植民地下
東京行きと印刷された解放前の平安北道江界発の切符。当時は1枚の切符で韓半島と日本がつながっていたという現実をあらためて思い知らせてくれる。
第5章「解放前のくらし」には見慣れないヨガン(おまる)の写真が。これはトイレ事情が劣悪だった当時の在日同胞社会の住宅事情を物語るものだ。また、創氏改名で本名を消された通信簿からは「皇国臣民化教育の狂気」(第8章)がうかがえる。
第9章「解放の喜び・帰国」を開くと、宮本百合子の著作『播州平野』の一節が引用されている。
「彼等の言葉は朝鮮の言葉であった。ひろ子が、この旅の往き来で見かけた朝鮮人たちはすべて西へ西へ、海峡へ海峡へと動いた」
どん底生活も子らに明るさ
第10章からは「戦後の在日」。解放の喜びは「手作り太極旗」にもうかがい知ることができる。物不足のなか、「日の丸」の赤い円に巴の半分だけ黒く塗り、四隅に卦をあしらった。各地でこのように作られた太極旗が少なくなかったという。写真を見る限り、生活はどん底でも、同胞集落で暮らす子どもたちの表情に不思議と暗さは見られない。
巻末には「在日100年年表」、寄贈者・提供者・協力者名、開設当時の賛同金拠出者の一覧を資料として掲載した。
24日に出版記念会
24日には韓国中央会館8階大ホールで出版記念会を開く。会費は『図録』付きで3000円。問い合わせは在日韓人歴史資料館(℡03・3457・1088)。
「さらに新資料を」姜館長の願い
姜徳相館長は『図録』の発刊が埋もれた資料の発掘の呼び水になればと、次のように語った。
写真を見て、解説を読み、当時の文学作品を通じて時代背景を読み取る三位一体の構成とした。背広を着てゲタを履いた写真を見れば、当時の在日同胞がどういう状態に置かれていたのかが分かるというものだ。
1世は懐かしい昔を思い出すことだろう。2世世代には祖父母が差別と監視という排外状況を克服し、日本社会に着実に根を下ろしてきた歩みに思いを馳せてほしい。日本の人たちには、見慣れた隣人から生活習慣の違いという新しい発見があるのを期待している。
『図録』が呼び水となって、もっともっと埋もれた資料が出てくることを願っている。
(2009.1.14 民団新聞)