掲載日 : [2009-01-14] 照会数 : 8109
<民団中央新年会>力合わせ経済・組織活性化
[ 江田五月参院議長 ]
世界的な経済危機のなかで迎えた2009年。しかし、在日同胞社会や韓日政界の指導的人士ら約700人が参集した9日の民団新年会は、閉塞感を打ち破ろうとする気概に溢れるものとなった。韓国と日本は連携を強化し、経済危機に共同で対処する姿勢を固めており、民団も共生社会実現の旗印のもと、韓日共同発展の一翼を担うとともに、創団63年の伝統と新たな創意の結合を力に変え、同胞の夢と生活を大切に前進する決意を新たにした。会場で参加者から今年の抱負を聞いた。
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参加者たちの声
共生理念をテコに民団支える基盤の強化を
世界経済の同時不況は、在日同胞経済を圧迫しているばかりか、民団の組織活動をも萎縮させかねない。参加者からもこの問題への言及が相次いだ。
婦人会中央本部の余玉善会長は「先の見えない不安感があるが、すぐに答えが出せる問題ではない。民団も本当に大変になると思う。だけど、苦しければ苦しいほど、皆が一丸となって助け合うべきだ」と述べ、「愛の精神と絆を深め、勇気づけ合って、切り抜けましょう」と自ら言い聞かせるように語った。
民団神奈川本部の安亨均副団長は「金融恐慌のシワ寄せは同胞社会にも押し寄せている。今年はかなりまずいと思う」と危機意識を明確にし、「まず急がれるのは、中小零細にも確実に資金が回るようにすること。民族金融機関の努力だけでは限界がある。民団が乗り出さないとだめだ」と強調した。
「広告代理店をやっているので、不況風をもろに感じる」という青年商工会連合会の李英俊会長は「景気がいいのはごく一部で、大半が苦しんでいる。明日は我が身かなとも思う」と言いながらも、「こうした苦境を乗り切るにはまず、情報の共有だ。今年は韓商連とともに、業種別のセミナーを開催していく。即効性はなくとも打開のきっかけをつくりたい」と前向きだ。
遊技業者の中からは、「パチンコ店は慢性的な人手不足だ。一方では、派遣切りが社会問題になっている。民団系のホール業者が民団を通して、派遣社員を相当数雇用する考えがあってもいい。日本の経済・社会問題の解決に貢献するだけでなく、民団の多様な役割を知らせることにもなる」との構想も聞かれた。
本国投資協会の梁龍雄会長は、「在日は本国投資の活性化や韓日技術提携の橋渡しを通じて、本国経済の発展に貢献しながら、本国の力を同胞経済の活性化につなげる発想があっていい」と語りかける一方、「新韓銀行の日本法人設立を契機に、在日がつくった韓国の銀行と民族信組との協調関係を築き、在日経済の活性化に結びつけるべきだ」と指摘した。
未来引っ張る人材育てたい
梁会長はまた、「韓日両国は新しい協力の時代に入った。未来の韓日両国を引っ張る人材の育成に力を入れたい。まず、本国で学ぶ在日同胞の学生を支援するため、今年から奨学金制度を実施する。1月末が締め切りだが、多くの人に応募してもらいたい」とアピールした。
経済的な困難さはあるとしても、同胞のための団体として、やるべきことを着実に進めたいとの声も多かった。その中でもやはり、参政権獲得の思いが強く聞かれた。
「不況と言われるが、1世の苦労を思えば道は切り開かれる」と表情を引き締める民団宮城本部の李根団長は、「これまで以上に、民団の仕事を手堅く進めることが重要だ。昨年初めて実施した多文化共生祭を今年も行い、参政権問題などを市民に訴えていく。また、民団の基礎事業であるオリニ教育、青年育成と敬老・福祉業務に力を入れる」と結んだ。
民団新潟本部の李鐘海団長は、「本部の財政は厳しいし、支部機能も停滞している。だが、カネを出せなければ労力を惜しまない気持ちで、組織に活を入れたい。日本の市民団体との連携を強化し、民団を支える周辺基盤を強化するつもり」と意欲的だ。
2回開催したシンポジウムを通して、地方参政権獲得の機運が高まっていることを肌で感じているという民団鳥取本部の薛幸夫団長は、「今国会では最低限、法案提出などの突破口を開いて欲しい」と述べる一方で、「しかし、ただ立法化を待つだけでなく、在日社会のあり方について10年、20年先の将来像を提示する必要がある」との見解を示した。
民団山口本部の李相福団長は「セミナーを早期開催し、地方参政権へムードを盛り上げる。選挙になれば党派を超えて、地方参政権に理解を示す候補者を応援したい」と話し、「釜山フェスティバルなどを活用して、交流の輪を広げる。円高を背景にフェリーでの訪韓者を増やし、韓国経済活性化に微力ながら貢献するつもりだ」と語った。
民団福島本部の禹日生団長は、「福島は婦人会が活発だし、青年会も昨年再建された。若い力をしっかり育てていく」と述べるとともに、団員のキムチ製造業者が地元の野菜で新商品を開発したのを契機に、韓日親善事業に弾みがつき、県の予算がついた地域の例をあげながら、「韓日友好に創意工夫して取り組み、地方参政権時代を準備したい」と力説した。
体育会中央本部の朴安淳会長は、「今年の韓国国体は90周年の記念大会なので、例年以上に力を入れる。オリニフットサル大会も盛り上げたい。また、婦人会愛知が実施しているオモニバレーが35回目を迎えるので、これを契機に全国レベルに広げられないか、検討していく」と述べたあと、「この2月にハルビンで開催されるユニバーシアード冬季大会に、在日の金彩華選手が出場するので、ぜひ応援を」と呼びかけた。
民団のパワー改めて感じる
元ノルウェー大使でソウル芸場ロータリークラブ会長を務める梁世勲氏は、「韓日を代表する国会議員が多く駆けつけたのを見て、民団のパワーを改めて感じた」と評し、「地方参政権を獲得するには在日だけでなく、本国国民や在外同胞とも連携すべきだ。今、世界に必要なのは、民族・国家・国籍の壁を超えた、人権を尊重する共生の価値観だ。在日同胞は民団を中心に、日本の地域社会に多大な貢献をしてきた。参政権の機は熟している」と力説した。
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韓日来賓のあいさつ 発言順(敬称略)
「参政権付与の年に」
■三原朝彦(自民党国際局長・衆院議員)〓全国各地で日韓交流のために苦労していることに感謝するとともに、さらなる増進を図ってほしい。私たちは、両国の一層の関係増進に意を尽くしたい。今後も、これまで以上に連携を深め、アジアの地域で両国がともに手を携え発展していく機会を作っていきましょう。
■森喜朗(日韓議員連盟会長・元首相)〓新大統領の誕生により日韓の関係は非常に良いものになった。北東アジアの平和のための一番大事な拠点が日韓だという気持で,政治家も両国の関係を深めるのに一層努力しなければならぬ。経済的に厳しい時にこそ、民団の皆さんがたも、経済活動を積極的に行ってほしい。そのことが結果的に日本の経済活動の資質を高めていく。
■直嶋正行(民主党政調会長・参院議員)〓日韓の関係は、経済関係はいうまでもなく、国民の相互の交流を通じて生活面でも大変強い絆ができつつある。日本の将来を考えるときに、韓国の皆さんとのつきあい抜きにしては考えられない。地方参政権の問題については、党として一生懸命に取り組んでいく。今年の日本は選挙の年です。日本の政治も変わっていかねばならない。
■浜四津敏子(公明党代表代行・参院議員)〓地方参政権問題も取り組んで16年になるとうかがっている。公明党は、なんとか今年、これを実現したいと決意している。今年は選挙の年といわれている。これからも地方参政権問題をはじめ、日韓親善のために全力をあげていきたい。
■志位和夫(日本共産党委員長・衆院議員)〓歴史の真実に対する正しい認識を両国の国民が共有することが、日韓の末永い友好の土台です。地方参政権の問題については、永住外国人に選挙権はもちろん被選挙権も含めて一刻も早く実現するために力を尽くしたい。日韓両国民の友好と交流がさらに発展することを願っている。
■福島みずほ(社会民主党代表・参院議員)〓韓日共生社会、人権が大事にされることが必要だ思っている。差別・排除する社会ではなく、外国人を含めて、すべての人が生きていて良かったと実感する社会の実現のために頑張る。そのためにも地方参政権は必要です。代表なければ課税なし。全力をあげて地方参政権の実現のために頑張ることを約束します。
■田中康夫(新党日本代表・参院議員)〓すでに25カ国が日本国籍の人に地方参政権を付与している。韓国も日本国籍者に付与している。もらえるものだけはもらって、くれた人にはあげないというのは、外交の互恵主義に著しく反する。真の意味での外交の互恵主義に基づき外国人への地方参政権を付与しなければならない。付与に踏み出す1年にしたい。
■江田五月(参院議長)〓民団の皆さん、あるいは朝鮮半島の皆さんと、日本人との間には本当に心に通う人間の関係ができていると思う。地方参政権問題をどうするという議論については、議長なのでどちらとも言えないが、仲のいい関係を、どこでもつくっていこうという新しい時代の幕開けに、この新年会がなればと思っている。
■太田昭宏(公明党代表・衆院議員)〓日本の社会は共生、地方分権、そして人権ということを大事にしていかなければならない。地方参政権については、この三つの角度からも早期に付与されなければならない。すべてにわたり皆様方と連携して前進する1年にしたいと決意している。
■鳩山由紀夫(民主党幹事長・衆院議員)〓アジアの中で日韓両国が、その役割をしっかり果たすことで、平和と経済の発展に大いに貢献できると確信している。日本と韓国は、少なくとも国民同士は壁はなくなったと思っている。地方参政権の問題など、もっともっと真剣に取り組む1年にしていく。
■李相得(韓日議員連盟会長・前国会副議長)〓世界経済危機にさいし韓国では大統領、企業、国民が一丸となり危機克服に取り組んでおり、日本にいる皆さんにはこれ以上心配をかけないようにしたい。民団の皆さんにも苦労があると思うが、必ず克服して成功されるよう祈願する。議連会長として、韓日関係の新時代の発展のために協力、努力を惜しまないことを約束する。
■金守漢(韓日親善協会中央会会長)〓国内をはじめ、特に在日同胞の皆さん、そして世界の各地で活躍している同胞が、互いに助け合い協力して果敢に前進するならば金融危機も速やかに克服できるでしょう。それに、この結実は民団の皆さんの宿願である地方参政権について、付与せざるをえないと日本が認識を転換する大きな原動力にもなると信じている。
■朴振(国会外交通商統一委員会委員長)〓韓日両国関係のより一層の発展のために一生懸命努力する。在日同胞への地方参政権付与を積極的に応援してくれる日本政党の代表のみなさまに感謝する。本国においては、在外国民の国政参政権実現のために尽力する。
(2009.1.14 民団新聞)