掲載日 : [2009-03-11] 照会数 : 6136
国民年金開放も周知不足 永住者に手続きもれ
[ 森田定和さん ]
行政の対応格差が浮上
【大阪】「年金特別便」が届いて初めて、国民年金の手続き漏れに気づくという外国人が多いのではないだろうか。大阪の在日韓国人3世も厚生年金に加入して初めて過去の国民年金保険料の未納通知が届いたという。相談を受けた社会保険労務士は、行政側の対応の格差による手続き漏れの可能性があるとして、「時効後の事後納付制度の確立」を求めている。そもそも在日外国人は日本人のような「うっかり未納」とは性格が違うのだという。
事後納付阻む時効2年
外国人が20歳にさかのぼって保険料を納付したくても、「時効2年」を理由に過去2年分しか納付できない現状に異を唱えているのは、大阪府内で社会保険労務士事務所を開業している森田定和さん。森田さんの主張は朝日新聞「私の視点」(09年2月11日付)で取り上げられた。森田さんのもとには「指摘の通り全く同感の思い」「誠に有益な視点」といった声が届いているという。
森田さんが当事者の在日韓国人3世から相談を受けたのは昨年秋。05年5月、現在の勤務先に採用され、厚生年金に加入してはじめて、過去2年分の国民年金保険料の未納通知及び納付書が届いたというもの。大学卒業後は家業の手伝いをしていたが、20歳になっても国民年金の年金手帳と納付書などを受け取っていなかった。
森田さんが、調べた結果、国民年金加入手続きにあたって国の方針が示されず、市町村の対応に差が出た。
厚生年金などは別として、自営業者などを対象とした国民年金については1959年の制定当時から国籍要件が明文で定められていた。在日外国人が加入できるようになったのは82年1月からだ。82年1月1日以降、20歳に到達した外国人については日本人と同様、強制的に加入手続きをしなければならなかった。
しかし、市町村によっては加入しても25年も滞在しない一時滞在者の存在を考慮してか、特別永住者も含めて一律に加入の意向を確認したところがあれば、当事者の意向をまったく聞かなかったところも。森田さんが相談を受けた在日韓国人も、国民年金に加入しなければならない20歳の時、意思確認の書類すら受け取っていなかった。
森田さんは永住外国人の高齢者が無年金のまま放置されていること、あるいは保険料の追加納付を認められず、年齢が高いほど年金額が小額になっている現状を指摘。「日本に永住する外国人が20歳になった場合、過去の経緯があるだけに、日本人以上に丁寧な行政対応が求められた。ところが行政サービスの格差により、将来受け取る年金額に差が出る」という。
すみやかに時効後の事後納付を認めるよう求めている。
当事者から救済求める声
10数年前から年金制度の国籍条項完全撤廃を訴えている全国連絡会代表の李幸宏さん(福岡市在住)は、国民年金から国籍要件がなくなった時点で60歳未満であった方に各自治体から丁寧な連絡がされていたとは、少なくとも福岡では聞いたことがないと話している。「これは行政の運用上の問題。これでさえ当事者の不利益にされてはたまったものではありません。在日外国人にはこれまで様々な不備をしているのだから、幅広い理由で20歳からの納付や経過措置としての追加納付が認められるべきだ」。
また、年金特別便が届いて記録照会したところ、消えた年金が発覚したという柴田文恵さん(「在日無年金関東ネットワーク」事務局担当)は、「きちんとした処理がなされているかどうか、私たちが知ることができない。行政のミスによって生じた不利益については時効の適用除外とし、すべて救済するべきです」と語った。
(2009.3.11 民団新聞)