掲載日 : [2009-03-11] 照会数 : 7522
民団の顔 本紙の使命ご理解を
[ ネットワークに一役「民団ホームページ」 ]
読者の疑問にお答え
郵送協力金 拡大も 「もう一人の読者」支えよう
民団の基本財政は厳しさを増しております。したがって、各種事業の縮小や予算配分、人件費の見直しが真剣に論議されてきました。なかでも、経費節減の主な対象として、単一事業では最も比重の大きい民団新聞の直送経費が俎上にのぼり、その削減が緊要な課題となっています。しかしその一方で、民団新聞の強化を望む声も根強く、また大きいものがあります。私たちは今、経費削減と宣伝機能の強化という、二律背反の課題を同時に追求しなければなりません。この困難な課題をやり遂げるには、読者皆様のご協力が不可欠です。つきましては、民団新聞の現状を一問一答の形式でご案内することで、皆様のご理解とご支援を賜りたいと思います。(民団新聞運営専門委員会)
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民団新聞の役割とは
ネットワーク形成の軸
Q 民団新聞の特性・役割とは何か。
A 民団には機関紙運営規定があって、その「発行目的」には「本団の意思と活動状況を広く弘報し、内には団員の意思と世論を収斂して、団員たちの意思統一と結束を促進し、外には本団の位相を高める」と明記されています。
これがまさしく、私どもの鉄則です。ですが、本紙の役割はもっと幅広いものなのです。
民団の理念は自由・民主主義、平和と共生、人道と人権の尊重を根幹とし、在日同胞社会の安定と発展、祖国南北の平和確保と民主的で平和的な統一の推進、韓日善隣友好の増進を3大課題としています。民団は、この理念と課題に基づいて同胞社会を引っ張る一方で、多様な価値観を持つ同胞たちのエネルギーを組織内部に吸収してきました。
ですから本紙は、一般同胞社会や日本社会における民団理念の具現に役立つ動きについては、それがたとえ民団以外の団体やグループの、間接的な効果にすぎないものであっても注目してきました。同胞の間ばかりか日本人との間でも、お互いに啓発し合いエールを交換し合う場(媒体)となって、民団を中心とする幅広いネットワークを形成してきたと言えるのではないでしょうか。
本紙は民団の機関紙であると同時に、一般紙としての性格を持っています。全在日同胞の機関紙であり、オピニオン紙と言っても過言ではありません。
その点については、読者皆様のほうがよくご存知かと思います。
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なぜ直接郵送なのか
もらさず全団員に配布
Q 現在のように大規模な直接郵送システムになった経緯は。
A 直接郵送(直送)は30年前から始まりました。1979年3月の定期中央委員会で、「完全配布を期すために中央直送制度を導入した」と報告されています。
それまでは、中央本部から地方本部へ、地方本部から支部へ、新聞が梱包状態で配送され、支部から団員のもとに届けていました。
しかし、そのシステムでは全国の団員世帯の2割にしか行き届かなかったんですね。
直送制の実施は「支部活動が弱い僻地団員に大きな好評を得、地方組織に山積みされたまま廃紙に変わる醜悪な現状はほとんど解消された」(中央委報告)と高く評価しています。
いま問題になっている大規模な直送体制は96年、第47回中央委で機関紙規定を定め、団員全世帯への完全直送を決議してからの実施です。直送規模は時を追って拡大し、最大で10万部を数えました。これには大きな理由がありました。
96年は民団創立50周年という歴史的な節目の年で、47回中央委では現行の第6次宣言を採択しました。新宣言は、「反共理念のもとに全僑胞を包摂する」との従来の文言を削除して、「在日同胞社会が不幸な歴史の共有者であり運命共同体であることを認識し、国籍と所属を超えた幅広い交流・和合により同質性回復」に尽力することを盛り込みました。
これは民団にとって、「唯一の同胞指導団体」であることを自覚や自負にとどめず、実体化しようとする一大決意の表明でした。新しい宣言に基づいて、本紙の直送先を団員だけに限定しないで、日本籍か朝鮮籍かあるいは朝総連系同胞かを問わず拡大しました。
また、活発化していた地方参政権獲得運動や共生理念に対する理解を広げようと、国会議員や大都市部の地方議員、学校や図書館を含む各種公共機関や市民団体に送付したことも、数字を押し上げた要因です。
本紙の膨大な直送費が槍玉に上がっている格好ですが、そのような経緯があったことを念頭においていただきたい。そのうえで、大変困難な作業ですが、経費の削減と宣伝機能の強化という結合点に向かって、軟着陸を図る必要があります。
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普及は本・支部負担では
中央が委託を受け代行
Q 普及経費、つまり直送費は地方本部・支部の負担ではないのか。
A 機関紙運営規定は「民団新聞の発行は中央本部が担当」し、地方本部・支部は「これを全団員の世帯に普及する責任を負う。団員世帯に対する配送は直送制を原則とする」と定め、「制作及び配送の諸経費は受益者負担を原則とする。但し、不足経費に関しては、中央本部・地方本部・支部が負担する」と規定しています。
要するに、①発行は中央本部の責任②普及は地方本部・支部の責任③諸経費は受益者負担−−これが3大原則です。しかし、②の普及責任と③の受益者負担の徹底は、それまでの経験から難しいとの判断がありました。そこで、「配送は(地方本部・支部を通さず)直送制を原則とする」、「不足経費については中央本部・地方本部・支部が負担する」との但し書きが入ったわけです。
本来であれば、団費の一部を購読料に当てるか、別途に購読料を集金するかはともかく、また、郵送によるか戸別訪問によるかを問わず、機関紙である本紙を団員に届ける普及業務の経費は、地方本部・支部が負担することになっています。
現行の普及体制は、実態として中央本部が業務を代行しているに過ぎないわけです。
したがって以前は、代行手数料として、地方本部から直送実費の納付がありましたし、納付が滞っていた地方本部には再三督促したこともありました。ですが、団費収入の漸減などで地方本部の財政基盤が弱体化し、遺憾ながら、長期の滞納が当たり前になって現在に至っています。
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受益者(読者)負担をどう見るか
Q 諸経費の受益者(読者)負担原則と郵送協力金の兼ね合いは?
A 現在、全国の民団幹部に1口3000円の郵送協力金をお願いしていますが、これと受益者負担との兼ね合いについてはまず、読者層を団員と非団員の二つに大別して考える必要があります。
非団員のジャンルには朝鮮籍同胞や朝総連系同胞のほか、日本の各種公共機関、政党・言論機関、日韓親善協会など多様な市民団体、国や地方の議員、学識者などが含まれます。非団員の配送先は全体の2割前後ですが、これは民団の理念や運動に対する理解と支持を広げる、いわば世論対策として無償が前提になっています。
それでも、非団員からも年間1万円とか、3万円の入金が少なからずあり、朝総連の機関や個人からも送金があることをご報告しておきます。今後は、非団員に対しても徐々に、郵送協力金の振り込みをお願いしていくつもりです。
次に、団員読者についてですが、団員への直送は本来なら団費納入者だけが対象です。そうは言っても、▽高齢化や生業からの引退で団費を払えないが、本紙を楽しみにしている熱心な団員▽団員としての自覚も弱く団費も未納だが、民団周辺で何らかの協力をしている同胞▽民団と何らつながりがないが今後、団員になるか協力者になり得る同胞など、読者対象として決して無視はできません。
民団はあくまで運動団体であり、その機関紙である本紙は採算性だけで運営するわけにはいかないのです。同胞を啓発し組織化する、オルガナイザーとしての使命が最優先だからです。
本紙はこの間、家族で民団、婦人会、青年会の役員をしている世帯に3部配送されていたとか、あるいは自宅と会社にダブルで配送されていたなどのケースについて、ほとんど整理をつけてきました。現行の部数は相当に底堅い水準にまで来ています。高齢化や死亡、日本国籍の取得などで漸減しているに過ぎません。
ですから、経費の削減は当然としても、それだけを考えて直送対象をむやみに縮小することに、運動論の観点から抵抗を覚える幹部がたくさんいます。
直送経費の負担はままならないが、そうかと言って組織運営上、読者を減らすこともマイナスになる、というジレンマです。
そうしたところから、受益者負担の枠を超えた郵送協力金の話が出てきました。現在これをお願いしているのは、全国の支部役員までですが、その対象は団費を払っているいないにかかわらず、一般団員にまで漸次広がっていかざるを得ないと思います。
団費を負担している団員、団費もしくは賛助金を出したうえに、手弁当で活動している幹部たちに、さらに郵送協力金をお願いするのは心苦しい限りです。
この点について幹部や団費納入団員の皆様には、自分たちが拠出した1口の郵送協力金が、もう1人の読者(非団員の無償配布先もしくは団費・購読料が支払い困難な団員)を支えることになると理解していただきたい。これも重要な民団運動だとの観点をもっていただけたら、と切に願っています。
支払い能力があるにもかかわらず、団費も購読料も支払っていない、そういう方にも郵送協力金のお願いが行くことになります。それでももし支払っていただけない場合、今後、状況によってはお届けできなくなる場合もあることを、予めお断りしたいと思います。
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情報発信のあり方は
電子版より新聞が強い
Q 民団新聞の今後のあり方について、特に言及すべきことは?
A まず、よく言われてきたことに、今は新聞紙の時代ではなくインターネット時代だ、なぜ大量直送するのか、というのがあります。
本紙には日本語と韓国語のインターネット版がありますが、アクセス数は1日平均で約21万件です。しかし、そのほとんどが日本人や本国、海外同胞からのもので、在日同胞の場合は若い世代に限られています。日本の各自治体の行政広報でも、利用者は紙・誌が9割で、インターネットは1割に過ぎないという統計があります。
新聞紙は目の前まで届けられ、さっと広げるだけで記事や論説のありようが目に入り、意外な発見をする喜びもあれば、興味のあるものから読める手軽さもあります。いくつかの段階を踏んで自分で特定の記事を検索するのと、目に飛び込んでくるのとは大違いです。まだまだ紙の威力が大きいし、中高年の多い本紙読者にとっては特にそうです。
ただ、インターネットを駆使する団員・読者の皆様には、なるべく電子版を活用するようにすることで、郵送を中止してほしい旨の連絡を本紙に一報いただきたい。これは繰り返し呼びかけていきます。
最後になりますが、あえて強調したいのは、本紙は「民団の顔」であり「同胞の声」そのものだということです。私たちの現状や意思と未来への意欲を如実に映し出します。
民団の組織内外の条件は大きく変わろうとしています。在日同胞の人口構成も、私たちを取り巻く政治的、経済的条件も予断を許しません。本紙は情報発信機能を強化して、如何なる苦境も克服する尖兵になっていく覚悟です。ご支援のほど宜しくお願いします。
(2009.3.11 民団新聞)