掲載日 : [2009-03-25] 照会数 : 8583
在日同胞が「区長代理」…市政に住民意思反映
[ 金英裕さん ]
【三重】伊賀市は04年の市町村合併で誕生して以降、これまでの町村を「地区」と位置づけ、その下に自治会に相当する「区」を設けることで狭域自治を進めている全国でも珍しい自治体だ。府中地区に住む金英裕さん(60、民団三重県本部監察委員)は、同地区で2番目に大きいハイツ芭蕉区の区長代理を務めて1年になった。区長に代わって地域と行政窓口とのパイプ役となっている。
伊賀市芭蕉区 生活上の諸問題で
金さんは芭蕉区に移り住んですでに35年余り。この間に地域の世帯数は当初の10から150に拡大した。居住歴の浅い住民からは、「地元をよく知る生き字引」と称えられている。昨年4月、新たな区長の片腕として推薦された。
区長は自治会長として住民自治の役割を果たすだけでなく、自治体から任命を受けて行政と住民の間を取り持つ地区委員としての重責も担う。各区でつくる住民自治協議会は、市長の諮問機関として、市の重要事項に関する当該地区の同意・決定機関の役割を果たす。
市は市民が主役となって自主的かつ主体的に行う住民自治活動を支援していく立場だ。ここが従来の中央集権型とは異なる伊賀市の特色といえる。
金さんはもともと人なつこい性格に加え、協力精神も旺盛だ。「自分の空いた時間を使って、地域の役に立つならば貢献したい」と、道路の舗装や下水道など、住民に困った問題があれば自ら率先して自治体に掛け合ってきた。伊賀市誕生以前にも自治会長や管理組合理事長に推薦されたこともあり、住民の多数決で区長代理が決まったというのも自然な成り行きだった。
月1回の役員会では住民を交え、約30人でさまざまな生活上の問題点を話し合う。金さんは話し合いをもとに、この1年間だけでも交通事故の起きやすい道路でのカーブミラーやポールの設置、陥没した私道の補修、通学路の作成などを行政や教育委員会に訴えてきた。
ハイツ芭蕉会館で長年事務を担当しながら金さんと接してきた上林幸子さんは、「何ごとにも一生懸命。人柄もとてもいい」と話している。
金さんは「地域との信頼関係は日々の積み重ねの証。区長代理は自分にとってもいい勉強になる。これからも地域で共存共栄の橋渡し役をしてきたい」と前向き。
同市は県北西部。総人口10万人足らず。外国人人口は5%ほど。芭蕉区は150世帯が道を挟んで両サイドに並び、一つの集落のような様相を呈している。
(2009.3.25 民団新聞)