掲載日 : [2009-04-01] 照会数 : 4933
韓国とEUがFTA暫定合意 世界最大の経済圏に
[ EU向け輸出の増加が期待される自動車(現代蔚山工場) ]
関税撤廃 原則3年内
貿易拡大に期待
韓国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉が3月23、24の両日、ソウルで開かれ、暫定合意が成立した。3年以内の関税撤廃を原則に、一部は5年以内に撤廃または段階的に縮小することで合意した。正式発表はあす2日、ロンドンで開かれる主要20カ国・地域(G20)緊急首脳会議(金融サミット)で行われるが、世界最大の経済圏誕生は各国に少なからぬ影響を与えそうだ。
対EU=自動車・タイヤ・家電…
対韓=ワイン・豚肉・チーズ…
韓国の李恵民首席代表、EU側のベルセロ首席代表をはじめとする双方代表団は最後の公式交渉となる第8回会合で、暫定的な合意にこぎつけた。
韓国とEUのFTAが予定どおりに来年から発効すれば、米国・カナダ・メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)圏の国内総生産(GDP)16兆3000億㌦を上回り、世界最大の韓国・EU経済圏(GDP17兆8700億㌦)が形成される。
関心を集めていた自動車関税については、向こう5年間で完全撤廃することを原則とした。排気量1500㏄を超える中・大型車は3年以内に、1500㏄以下の小型車は5年以内にそれぞれ撤廃する。当初、即時撤廃を主張していたEU側が一歩譲歩した形だ。自動車部品やワイン、冷蔵庫などの関税は即時撤廃される。
このほか韓国は、ベアリング、基礎化粧品などを5年内関税撤廃品目に定めた。
デリケートな問題を内包した「センシティブ品目」について、韓国は40余りの品目を7年内に撤廃するという例外を得た。関税率が16%に達するその他機械類、純毛織物、一部農産物などがそうだ。
農産物のうち、コメ、トウガラシ、ニンニク、タマネギに対する関税は現行水準が維持される。コメの場合、昨年EU産の輸入額はわずかで、輸入額全体(1億9492万㌦)に比べて微々たる水準にすぎず、トウガラシ、ニンニク、タマネギなどもEU産の比率は1%にも満たない。
このように輸入額全体に占めるEU産の比率は非常に低いものの、韓国にとっては主食や主要調味料に該当するため、「譲歩は困難」との姿勢を貫き、例外措置を取ることで合意を見た。
一方、北韓の開城工業団地で韓国企業が生産した製品を韓国産として認めるかどうかについては、韓米FTAの前例にならって協定が発効した後、別の委員会を設けて協議する方針だ。
《解説》日・中との交渉にも影響
世界経済の危機が叫ばれ、保護貿易主義が頭をもたげつつある中で、今回のFTA妥結は世界経済にも影響を与えるはずだ。その発表をG20サミットに合わせたのも、自由貿易の流れに大きな役割を果たすことを期待してのものだ。米国との早期批准、さらには遅々として進まない韓中、韓日のFTA交渉にも弾みがつくことが期待される。
04年4月の韓国とチリのFTA発効後、両国間の貿易額は71億6000万㌦と、約3・9倍に増加した。チリへの輸出増加にともない、チリ市場に占める韓国製品の割合は03年の3・1%から昨年は5・6%に上昇し、国別順位でも8位から5位にアップした。チリ産ワインの急増がブームに拍車をかけたのは周知の通りだ。
EUとのFTA妥結で韓国が恩恵を受ける代表分野は自動車。現在、EUの乗用車関税率は米国(2・5%)よりはるかに高い10%。欧州の完成車市場では小型車のシェアが高いため、価格競争力が向上し、韓国自動車のシェアが上昇すると予想される。合わせて、自動車部品(3〜4%)やタイヤ(8%)のメーカーにも恩恵が拡大する見込みだ。
テレビ(関税率14%)や冷蔵庫(同1・9%)、エアコン(同2・7%)の関税も直ちに廃止される予定で、韓国の電気機器メーカーにとってシェア拡大が期待される。
半面、韓国内の酒類業界は打撃が予想される。韓・EU間FTAが締結されれば、ワインの15%関税は直ちに撤廃され、スコッチウイスキーの関税が3年以内になくなる。スコッチウイスキーはEUから輸入する農産物のうち金額ベースで15・6%を占める主要輸入品目である。
36%に達するチーズの関税は15年以内に撤廃する代わりに、一種の義務輸入量の関税割当(TRQ)制度を導入する。FTA発効と同時に04〜06年平均輸入量の100%を輸入し、毎年3%ずつ増やす方式だ。チーズの輸入は年々増加していくと予想される。その他の乳製品などもおおむね10年以上の猶予期間が設けられる。
大きな争点だった冷凍サムギョプサル(豚バラ肉)の関税(25%)は10年以内に撤廃する。昨年、豚肉の輸入額は4億698万㌦と、EUから輸入する農産物の25・8%を占めた。このうち冷凍サムギョプサルは7割ほどだ。サムギョプサルを除くその他の冷凍豚肉の関税撤廃期間は5年、冷蔵豚肉は10年とされた。
(2009.4.1 民団新聞)