民団が総連に要望書…「総連は北韓に自制呼びかけを」
北韓の「ミサイル」発射問題で民団中央本部の鄭進団長は2日、朝総連の徐万述議長に対し、発射を自制するよう、朝総連自らが北韓当局に強く呼びかけることを求めた要望書を送った。
鄭進団長は同日午後、民団中央本部で記者会見を持ち、「ミサイル発射は東北アジアの平和と安定に著しい脅威を与えているだけでなく、在日同胞社会に緊張をもたらしている。深い憂慮を表明し、断固抗議する」としながら、「朝総連は傘下同胞の声なき声を北韓に正しく伝えるよう努力すべきであり、私たちの声を正しく、北韓政府に伝えるよう要求する」と呼びかけた。
要望書は同日午前、発送したものの、朝総連側が受け取りを拒否したため、午後にFAXで送信した。
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朝鮮総連に送付した要望書(全文)
北韓の所謂「ミサイル」発射の自制を求める要望書
在日本朝鮮人総連合会 徐萬述 議長殿
在日朝鮮人の権益の伸張と朝鮮民主主義人民共和国の準公館としての役割を果たしておられる徐万述議長に次のように要望いたします。
すでに議長もご存じの通り、私たち在日本大韓民国民団は、北韓が4月4日から8日の間に所謂「人工衛星」を打ち上げると予告していることに対して、深い憂慮と抗議を申し入れます。東北アジアの平和と安定に著しい脅威を与えているだけでなく、在日同胞社会に緊張をもたらしているからです。特に、その「打ち上げロケット」の軌道が日本上空を通過することから、去る3月31日に日本国国会は「北韓に抗議し、発射の自制を求める決議」を衆参両院において全会一致で採択され、日本国政府および国民の憂慮は頂点に達していると言っても過言ではありません。
北韓当局は「宇宙開発は権利」であり「何が飛ぶかは見ていれば分かる」としています。しかし、北韓が如何に取り繕おうとも、その「ロケット」が核弾頭搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」であるとする国際社会の目をごまかすことはできません。
過去において、北韓は1993年5月、東海(日本海)海上に向けて「ノドン」の発射、98年8月には「テポドン1号」を発射し、その弾頭部分が日本列島越しに三陸東方沖に着弾させ、その後に「人工衛星だった」と主張した前歴があります。さらに2006年7月に、テポドン2号やノドンなど7発のミサイルを「軍事訓練の一環」として発射した際、テポドン2号が発射に失敗し、弾頭部分が東海に着弾したとの記憶も鮮明に残っています。このような北韓の行為が、東北アジアの各国を危機に巻き込みかねないとして、国際連合の安全保障理事会は全会一致で非難決議を採択しました。
核兵器の所有を宣言する北韓が、日本上空を軌道に核弾頭の搭載が可能な長距離弾道ミサイルを発射することは、日本をはじめ東アジア•太平洋地域の平和と安全を大きく脅かし、軍事的な緊張を一挙に高めるだけでなく、日本に居住する私たち同胞に手ひどい打撃をもたらすことは余りにも明らかであります。
改めて申し上げるまでもなく、日本の地方自治体はこれまでにない、危機管理体制に入りました。特に、自治体の教育委員会から各教育機関にその対策を指示するなど、私たちの子弟が通う学校教育の現場にまで、北韓の脅威が語られ、深刻な影響を憂慮せざるをえません。もし、発射が失敗することによって、ミサイルの一部が日本の領土?領海に落下することになれば、私たちの懸念はいっそう深刻なものとなるでしょう。
私たち在日韓国人を代表する韓国民団は、この北韓の一連の行為に対し、同族として到底理解することが出来ないばかりか、怒りすら覚えます。韓国をはじめ、中国、ロシアの周辺国も自制を求める声明を発表しております。私たちは、北韓の準公館的役割を担っている朝鮮総連に、韓半島と東アジアの平和を願い、在日同胞の生活と安全を守る立場から、北韓に対しミサイル発射計画の即時撤回を働きかけるよう断固要求いたします。
また、北韓は南北政府間の対話再開や6者会談などの平和の組みづくりに速やかに応じるべきだと要求いたします。自らの国民の人権と生命を犠牲にし、東アジア•太平洋地域の平和破壊をもたらす、これらの行為を蛮行といわず何と表現できるのでしょうか。これらの行為を継続するならば、北韓が得るものは、自壊作用の加速化だけであると指摘せざるをえません。
私たちは、北韓に対する国際的な働きかけはまだ、改革•開放に望みをつないでいると確信しております。一日も早く国際社会の要求に応えるべきではないでしょうか。北韓はいまこそ、住民の生活と生命を犠牲にする軍事最優先の「先軍政治」を放棄し、一切の威嚇•挑発策動を打ち切らねばならないと、改めて朝鮮総連を通じて北韓に要望いたします。どうか朝鮮総連が、在日同胞の総意を受け止め、北韓が「ロケット」の発射を自制するよう、北韓当局に強く呼びかけるよう要望いたします。
2009年4月2日
在日本大韓民国民団中央本部
団長 鄭 進
(2009.4.2)