掲載日 : [2009-05-13] 照会数 : 6181
在日ゆえに「調和」の心 伝統舞踊家金利惠さん
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24日に東京公演
在日韓国人2世の韓国伝統舞踊家、金利惠さんは24日、東京・千代田区のカスケードホール(いきいきプラザ一番町地下1階)で、分野の異なるフォークシンガー、青木まり子さんとの初のコラボレーション「ふるさとは、アジア〜風がはこんでくれた出会い」公演を開く。伝統舞踊のほか、初めて歌声も披露するなど、これまで知らなかった利惠さんの意外な一面を見ることができそうだ。
日本のフォークとコラボ
違う文化で共感を
「華やかに優雅に、そして自由に楽しくです」と、公演イメージを表現する利惠さん。
共演者の青木まり子さんは、五つの赤い風船再結成のメンバー。出会ったのは、昨年春のことだ。京都で開かれた、きたやまおさむさんがプロデュースした青木さんのコンサートに、足を運んだのが縁で知りあった。2人は、舞踊と音楽、韓国と日本などの差違を飛び越えて意気投合、公演の開催につながった。
「私も想像もしない出会いになりました」と話しながらも、わくわくしている様子がうかがえる。当日は2人が韓国と日本の話を紹介したり、日本の童謡に登場する擬音語や、擬態語を韓国語に置き換えて歌ったりと趣向を凝らす。
利惠さんには青木さんのコンサートで初めて耳にし、感慨を覚えた曲があった。きたやまさんが新たな歌詞をつけた「イムジン河〜春」だ。分断された祖国を思い、この公演のために「イムジン河〜春」の韓国語歌詞を手がけた。舞台で歌う。
利惠さんは1981年、本格的に舞踊を学ぶために単身、帰国移住し人間国宝・李梅芳さんの門下生となり現在に至る。重要無形文化財第97号「サルプリ舞」、第27号「舞僧」履修者として文化財庁に登録。韓国、日本などで精力的な活動を行っている。
本国での摩擦も乗り越えて
だが、ここに来るまでの道のりは平坦ではなかった。在日であるがゆえに、本国の人たちとの摩擦も経験した。
「私が求めていたのは韓国舞踊を通して、そのなかにある民族のエキスのようなものを自分のものにしたかったし、知りたかった」。その思いが強くなるほど、自分の体にしみこんだ日本的なものを排除しようと思った時期もあった。
韓国に渡った当時、「道先案内人は誰もいなかった。だから自分でぶつかって、ひっくり返ったり遠回りもした」。この経験があったからこそ、分かることがあった。それは日本的なものも、韓国で育んだものも受け入れる「あるがままの自分」でいいということだった。今、「調和」することの素敵さを実感している。
「在日は、豊かになれる素材をたくさん持っている存在だと思います。現に私はいろいろな過程を経て、韓国で暮らしていますが、在日であるおかげで本国の方には見えないもの、感じないものを楽しむことができます。調和というのは、違ったもの同士が一つになって新しいものが生まれるということ」。ただ、それには韓日の文化や社会、そして両国の人たちが何を考えているかを知ることが前提だと指摘する。
「ジャンルの異なるアーティストと舞台を作ることは、発見がいくつもあります。いろいろなアイデアがわいてくるので楽しい」。異なった者同士が、舞台でどのような調和を生み出すのだろうか。
開演は13時半、17時。入場料5700円。チケット、問い合わせは青い鳥創業(℡03・3486・7727)。
(2009.5.13 民団新聞)