「食は薬」韓国の知恵生かし
大阪の鶴橋駅近くにあるダイニングバーの「Won16」。代表の元貞子さん(51)が、3年半前の開店と同時に販売しているのが手作りの「薬膳ケーキ」だ。薬材をふんだんに用いており、便秘や冷え性、アトピー性皮膚炎などで悩む人たちからは、症状が改善したという嬉しい声も届いている。さらに体に優しい健康ジュースやスコーンを開発、商品を求める人たちは後を絶たない。
「体に優しい」と人気
娘の喘息治すために考案
元貞子さんが、薬膳ケーキを作ろうと思い立ったのは10年前。長女の喘息を治したいという一念からだった。
ちょうどそのころ、釜山に暮らす元さんの母親が、喘息に効くからと漢方薬を送ってくれていた。また祖父が漢方薬医だったことから、「食は薬」と考える韓国の医食同源の意味を再認識する。
同じ悩みのひと助けに
「そのとき、病気を治すには日常の食事が大切だと、改めて痛感しました」。子どもでも食べられる漢方薬入りのケーキを思いつくが、試行錯誤の毎日が続いた。ケーキを作っては娘に食べさせた。次第に症状は軽くなり、気がつけば喘息は治まっていたという。
「娘が良くなっていく過程を見て、体に優しい食材だと実感しました。同じ悩みを抱えている人たちの助けになるのではと思い、商品化して販売することに決めました」
「薬膳ケーキ」には黒ゴマ、黒豆、生姜、エゴマ、松の実、桑の葉、人参など28種類の薬材が入っている。化学調味料や添加物は使っていない。冷え性、便秘、疲労などに効き目があるという。
女性客は「薬膳ケーキを食べると体がほっとするのか、体が喜んでいるのがわかる」「ケーキを1週間食べて、アトピーが治った」などの感想を話す。
「薬膳ケーキ」以外にも、健康な肌を保つのに必要なビタミンB2、脂肪の代謝を促進するビタミンB群や、アミノ酸などを含む「はと麦薬膳ケーキ」、「ラムレーズン薬膳ケーキ」も人気商品だ。
各ケーキの保存は冷蔵庫で2週間。残った場合は「2㌢ほどの厚みに切り分けてから、ラップに包んで冷凍庫で保存すると、美味しくいただけますよ」と教えてくれた。
すべて一人手づくりで
これらの商品は、元さんが一人で仕上げるため、大量生産はできない。でも「日増しに回復していくお客さまを見ていると、長時間の作業も苦にならない」と笑顔で話す。
元さんは釜山出身。釜山の看護師専門学校を卒業後、在日韓国人のもとに嫁ぐが、長女出産後に離婚。女手一つで長女を育てあげた肝っ玉オモ二だ。
実はケーキ以外にも、顧客との会話から生まれた商品もある。
「納豆健康ジュース」は、鶴橋界隈で密かに人気を呼んでいる。某お笑いタレントも、このジュースの大ファン。メタボリック症候群と医師から告げられ、1食をジュースに変えた人もいるほどだ。また小麦粉や大豆、人参、ヒジキ、もちひえに加え、アマランサスの入った、もちもち感たっぷりのスコーンも開発した。
あまり聞き慣れないアマランサスだが、南米アンデス山脈で、インディオたちの手で古代から栽培されていた苦味のある雑穀。栄養分が豊富で鉄やカルシウム、リン、カリウムなどの成分値が、そば、ハトムギなどの穀物に比較して高い。日本でも技術開発され、新商品の加工と開発に取り組んできた。元さんは現在、岩手や秋田などで栽培しているアマランサスをいち早く取り入れた。
役立つ仕事誇り持って
「この仕事はやりがいがあるし、誇りを持っています。食物を通して、韓国人が医食同源の考えから培ってきた知惠を生かし、皆さんの健康面で役立つことが生きがいです」。子育てを終えた元さん。今後の人生も、この仕事で頑張るという。
各種ケーキは地方発送(梱包料、送料などは別)も受け付けている。薬膳ケーキ1700円ほか。予約・問い合わせは(℡/FAX06・6761・2318)。ホームページは、
http://homepage3.nifty.com/food-gen/
(2009.5.27 民団新聞)