掲載日 : [2009-08-15] 照会数 : 8787
「医聖」許浚編纂『東医宝鑑』 世界記録遺産に
[ 許浚の肖像画(1989年、崔光守の作品) ] [ 25巻25冊の木版本『東医宝鑑』 ]
ユネスコ登録
「医聖」と称えられた朝鮮時代の医師、許浚が中心となって編纂した医学書『東医宝鑑』(略称、『東鑑』)が、貴重な文書や資料の保存をめざす国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記録遺産)に登録された。韓国文化財庁が7月31日、明らかにした。
韓国で7つ目
登録が決まったのは許浚自ら刊行に関与した初版御製本で、韓国の宝物第1085号に指定されている。韓国が昨年3月に申請していた。現在、国立中央図書館と韓国学中央研究院にそれぞれ保管されている。これで、韓国は7つの「世界の記憶」を保有することになった。
『東鑑』は壬辰倭乱の真っ最中から編纂が始まり14年の歳月を費やして1610年に完成した。全25巻の朝鮮医薬学の集大成は「漢方ならぬ韓方の出現」ともいわれ、東アジア諸国の貧困と病苦に苦しむ人々を救ってきた。
日本には対馬藩や朝鮮通信使を介して伝えられた。特に徳川8代将軍、吉宗は『東鑑』を座右の書とし、朝鮮医薬学を取り入れて医療改革を進めたという。95年に訪韓した中国の江沢民国家主席(当時)は、国会演説で、「中国人は長い間、許俊先生の『東鑑』の恩恵にあずかり、心から感謝します」と謝辞を述べている。19世紀末には英訳され、内容の一部は外国雑誌にも紹介された。
許浚を主人公にしたテレビ・ドラマは韓国で空前の視聴率を記録。『小説・東医宝鑑』(李恩成著)もベストセラーになった。日本語版『小説・許浚』は朴菖煕さんが、米極東史が専門で朝鮮現代史にも造詣の深かった豊島哲さん(元上智大学教授)と共に翻訳、結書房から上下2巻組で出版されている。
記念セミナー 韓国と日本で開催
保健福祉家族部と国立中央図書館はユネスコ世界遺産登録を記念、「東アジア伝統医学と『東医宝鑑』の世界化」をテーマに9月3・4の両日、ソウル市内の国立中央図書館国際会議室で国際学術セミナーを開く。日本からは小説の邦訳出版に尽くした中澤俊子さんがそのいきさつと日本と韓国の今後の関係増進について発表する。
中澤さんはまた、『東鑑』の完成400年にあたる来年、その歴史的・現代的意義を日本中に広く伝えようと、NPO法人フレンド・アジア・ロード(通称「ホ・ジュン会」)代表の貫井正之さんらと名古屋市内で国際シンポジウムを開催することを計画している。シンポ開催日は11月14日。日本、韓国、中国、欧米から研究者を招く。
韓国でも東医宝鑑記念事業団を中心に、初版御製本刊行から400年にあたる2013年に東医宝鑑EXPOの開催を準備している。
(2009.8.15 民団新聞)