掲載日 : [2009-08-14] 照会数 : 6006
韓日関係成熟化に尽力 権哲賢大使インタビュー
[ クォン・チョルヒョン 延世大政治外交学科・同行政大学院卒。筑波大学に留学、都市社会学博士号を取得。96年から国会議員(ハンナラ党)に3回連続当選、韓日議連副会長兼幹事長などを歴任。日本大使として08年4月に赴任。62歳。 ]
9月19日から3日間、東京・六本木ヒルズで初の韓日祝祭ハンマダン(別掲参照)が開催されるが、その成功に向けて権哲賢駐日大使が意欲を燃やしている。日本に赴任してから1年4カ月。日本通で知られる権大使に、ハンマダン開催の意義や在日同胞に対する期待などについて聞いた。
■□
初の祝祭ハンマダン
交流拡大の契機に
−−今年は光復64周年、来年は韓日強制併合100年にあたる。韓日間にはいくつかの対立要因はあるものの、善隣関係を発展させることが両国および東アジアの平和と繁栄に欠かせない。
権大使 韓日関係は1965年の国交正常化以来、過去の歴史問題などによる軋轢(あつれき)があったものの、全般的に友好・協力関係を発展、維持してきた。
李明博政府はスタート以来、日本の戦略的重要性を考慮し、新たな韓日関係を模索する中で、これまで9度にわたる両国首脳会談で歴史を直視しながら、未来志向的な成熟したパートナー関係を構築するための努力を続けてきた。
韓日間には歴史や独島など問題の要因は残されているが、未来志向の成熟したパートナー関係をめざし、葛藤要因を安定的に管理するために努力中だ。大変困難なことだと考えるが、私はこのような問題が発生しないように、予防外交の次元から最善を尽くしたい。
−−韓日祝祭ハンマダンが企画されている。
権大使 現在の韓日両国関係は、民間の往来が年間500万人を超す量的成長のみならず、両国国民間の相互の文化や料理、言語に対する関心が高まるなど、情緒面での距離も過去に比べてかなり狭まった。
また、李明博大統領は就任以来、韓日間のシャトル外交を本格化しており、現在の韓日関係は過去のどの時よりも良好な関係を維持している。
しかし、強制併合100周年にあたる来年をはじめ、さまざまな懸案が潜在しているのが現実だ。
駐日大使として本人は、このように良好な韓日関係をさらに発展させるべく、両国国民間の相互理解および友好増進を図り、国民どうしの交流増大のための大きな場を設ける必要があると考えた。
その一環として、大使館では日本における韓日祝祭マダンの開催を本国政府に建議し、外交通商部、文化体育観光部、農林水産食品部の支援を得て、開催する運びとなった。
地方からも多数参加を
今回の祝祭を契機に、多少沈静化しつつある韓流の熱気が、今や韓流スター中心から脱皮し、韓国文化全般にわたる関心事として再びよみがえることを願うとともに、日本在住のわが同胞や韓国人にとっても、わが国に対する文化的誇りを抱く契機になることが期待される。
そういう意味から可能な限り、多くのわが同胞や韓国人が参加して日本人とともに交わりながら、友好と親善の交流の場を築くことを願う。
イベントが実施される東京だけでなく、地方在住の同胞も多数参加してくださるようお願いしたい。同胞みずからが、「9月の大連休は六本木で出会い、ともに楽しい時間を過ごそう」というキャッチフレーズを掲げてほしい。
また、このイベント期間中に、駐日地域公館長会議を東京で開催する計画でおり、各地方の民団関係者や在日同胞の皆さんが東京・六本木ヒルズで一堂に会する契機になることを望んでいる。
■□
在日同胞への期待
世界舞台へ架橋も
韓国語使い民族性涵養
−−日本に赴任して感銘を受けたことは。
権大使 わが同胞や在日韓国人の母国愛について感銘を受けた。在日同胞や在日韓国人が厳しい条件の中にありながらも、母国が困難に直面するたびに必ずや率先して、大韓民国の発展と未来のために熱き愛国心を発揮し、協力してくれた点はよく承知している。
駐日大使として赴任後、わが同胞や在日韓国人に会う機会が多いが、とりわけわが同胞および在日韓国人に最も感銘を受けたのは次の3点だ。
第1に、わが同胞が韓国語を使おうとする動きだ。韓国政府がこれまで余裕がないために、わが同胞の韓国語教育に疎かだった点について私なりの反省をしながら、わが同胞が母国語を忘れてしまっていることに残念な気持ちでいた。
そこで私は、少なくとも同胞の公的な集いの場では母国語を使用するのがいいのではないかと提案したが、皆が賛同し、今からでも母国語を学んで使おうと賛成の意を示してくれた点に感銘を受けた。
韓国から来日した人々も、同胞社会の集いに参席したとき、皆が母国語を使う姿を見て、印象深く受け止めたようだ。
第2に、韓信協など在日の金融機関や日本に進出した本国の銀行など民族系金融機関への「1人1通帳運動」を提案したのに対して、わが同胞や在日韓国人が快く賛同し、実践に移したことだ。これによって、わが在日金融機関は危機を克服するうえで大きな一助になるものと考える。
第3に、東京韓国学校を増築するための資金造成の件で、わが同胞や在日韓国人が積極的に呼応してくれたおかげで、来年度には140人を超す入学待機中の生徒を受け入れられる校舎の増築が可能になった点だ。
困難な状況の中でも、皆が積極的な姿勢を示してくれたことは韓国人の長所であると思う。紙面を借りてお礼を申し上げたい。
原爆犠牲者痛み忘れず
−−広島の韓国人原爆犠牲者慰霊祭に、駐日大使として初めて参列した。
権大使 慰霊祭には個人的に数度参席し、大使就任後にも昨年12月に慰霊塔に献花したことがあるが、大使としての慰霊祭参席は今回が初めてだ。大使として、侵略と戦争の不幸な歴史により、計り知れないほど多数の善良な人々が犠牲になった事実に心を痛めた。
特に、植民地支配下で他国が引き起こした戦争により、唯一の生命まで奪われたわが同胞犠牲者らの無念さに悲痛を禁じえない。このような不幸を招いた戦争と過去の歴史は再び繰り返されてはならない。
後世にも、過去の歴史がよくわかるように教え、異国の地で立派に成功できるように指導してほしい。政府は不幸な過去の歴史の犠牲者の痛みを和らげ、慰めるために全力を尽くしたい。
李明博大統領は、慰霊祭に参席し、犠牲者の霊を鎮魂せよと私に直接指示した。今後も、原爆犠牲者の痛みを治癒しうるよう継続努めたい。
−−民団や同胞に対する期待をひと言。
権大使 わが同胞は困難な状況にありながらも、母国の発展のために全力を尽くしてきた。改めて感謝の意を表したい。今後も、ウリマル教育やその実践を通じて、民族のアイデンティティを維持してもらいたい。
信頼を基礎に団結し、和合の同胞社会をめざし、地域社会への貢献を通じて日本人からも尊敬される、成熟した同胞社会になることを願う。
同胞の皆さんは優れたわが民族の資産である。韓日間の懸け橋的役割および世界の舞台へつなぐ役割を果たせるものと考える。将来の統一に備えても、同胞の皆さんの果たすべき役割は大きいものと期待される。
(2009.8.15 民団新聞)