掲載日 : [2009-08-26] 照会数 : 5000
李明博大統領光復節慶祝辞
21世紀を大韓民国の時代に
分裂と葛藤を克服 共生の成熟社会目指そう
李明博大統領が15日、世宗文化会館で開かれた第64回光復節式典で述べた「光復の光、より大きな大韓民国」と題する慶祝辞の詳録は次の通り。
殉国先烈を追慕して
尊敬する国民の皆さん。愛する北の同胞と700万在外同胞の皆さん。国家有功者と内外貴賓、そして100万の外国人住民の皆さん!
光復と建国を記念するこの場で私は、奇跡の歴史を創ったわが偉大な国民たちに今一度、尊敬と愛する心で語りかけます。
わが国民は波乱万丈であった60余年の現代史のなかで、犠牲と献身を通して希望と機会を見い出した英雄たちです。国を取り戻すために、国を建てるために、国を守るために、身と心を捧げた殉国先烈の魂は、私たちが受け継いだ最も高貴な遺産です。私たちが殉国先烈たちを記憶する限り、大韓民国は万世に光り輝くでしょう。
世界史の中の座標
1948年、国際社会で私たちは一つの点に過ぎませんでした。国を建ててわずか2年で6・25戦争が起き、大韓民国は戦争と貧困に打ちひしがれた、世界が不幸に思う国に過ぎませんでした。
2009年、大韓民国はすでに点ではなく、波動です。自動車や電子製品、船舶など主要製品が全世界から最高の賛辞を受けています。中小企業の品目のなかで、400余個が世界一級の産品です。大韓民国はすべての国が親しくしたいと思う国になりました。
21世紀に入った今日、世界が大きく変わっています。国家の特殊な利益と地球村の普遍的利益は分離できない時代です。外交と経済が分離できず、国の内外のことが分離できず、民族だけを優先する狭い視野では世界の大韓民国をつくることはできません。私たちは世界を地平として、大韓民国の新しい歴史を綴らねばなりません。
これこそが、わが政府が出帆当初から一貫してグローバル外交とグローバル・リーダーシップに国政の優先順位を置き、総力を傾けてきた理由です。この間、多くの成果がありました。
固い信頼を土台に、水も漏らさない韓米共助を築き上げました。豪州、中国、インド、日本、ロシアを始め、アフリカ、ASEAN、EU、中南米、中央アジア、中東など、世界のあらゆる国と真の友人になりました。
大韓民国はそう遠くないうちに、世界人口の半分とFTAを結ぶ唯一の通商国家になるでしょう。このようなグローバル外交を基調に、経済危機を世界で最も早く克服する模範国家になっています。G20の議長国として堂々と、緑色成長と自由貿易という課題を主導しています。
より大きな大韓民国になるためには、国益と世界の利益を調和させる能力がなければなりません。21世紀の文明史を引っ張る未来ビジョンを主導的に提示しなければなりません。
普遍的価値を重視し、地球全体を一つの家族として意識する国際秩序を具現しなければなりません。これこそ文明史と世界史の大きな脈絡において、追求しなければならない中道実用の道です。
中道・実用の道
世界のなかの大韓民国は強いのです。世界のなかの大韓民国は無限の可能性の象徴です。
ですが、私たちの内部を見れば決して楽観はできません。民主化はわが社会を真に躍動的にしました。平等意識を高め、権威主義を弱化させました。社会を透明にしました。しかし、私たちはいまだ成熟した民主主義を打ち立てることができていません。
南北分断は言うまでもなく、地域もまた分かたれています。労使の極限的な対立も繰り返されています。些細な葛藤も緩衝地帯がなく、極端な対立に拡大しています。分裂と葛藤を超えて和合と統合の求心力を創り出すには、中道実用の道を行かねばなりません。
中道は左と右の安易な折衷ではありません。中道は大韓民国を率いてきた憲法精神、すなわち自由民主主義と市場経済の価値を尊重しながら、これをより発展させようとする観点です。中道は機械的な平均ではありません。理想と現実の均衡を探るものです。中道は未来に向かう誰もが避けて通れない、歴史の要衝を占めるものです。
中道は国家の発展を国民の幸福につなげる「為民の国政哲学」であります。実用は、中道を実現する方法論です。実用は、国民の生活と乖離した観念やスローガンから脱し、現実に対する正しい理解をさえぎる、私たちの心の中の偏見や障壁を崩すものです。実用は、創造的実用でなければなりません。
私たちは社会をあまりも簡単に二つに分け、自分が正しく君が誤っていると主張してきました。中道実用は自由と平等、民主化と産業化、成長と福祉、民族と世界を、いずれも共生の価値として見ようとするものです。
緑色成長こそまさしく、このような中道実用の最も典型的な価値であり、ビジョンです。私たちはすでに緑色成長を通じて環境が経済を活性化し、経済が環境をよみがえらせる道を歩んでいます。去る6月のOECD(経済協力開発機構)閣僚会議では、私たちが主導したこの緑色成長を公式綱領として採択しました。
自由主義が冷たいと語る人がいます。ですが、私たちは社会的弱者も幸せに暮らすことができる「温かな自由主義」を追求します。市場経済の効率性を重視しながらも、互いが互いを慈しむ社会をつくることが、私の長年の宿願です。
韓国の民主主義が憎悪の感情に巻き込まれていると語る人がいます。しかし、私たちは対話と合理的な手続きを尊重する「成熟した民主主義」を追求します。温かな自由主義の必要条件が倫理と責任であれば、成熟した民主主義の必要条件は法治です。
私は分裂と葛藤を克服し、温かな自由主義、成熟した民主主義を通じた国民統合を実現するため、大統領直属の「社会統合委員会」を構成するつもりです。社会統合委員会は各界各層の人士が参与し、南北葛藤まで含め、真正な和合と統合の道を模索するでしょう。
政治先進化のために
政治の先進化なくして、国家の先進化はありません。私はこれまで、元老や宗教指導者をはじめ各界各層の国民と会い、言葉に耳を傾けてきました。意見や処方は違っても共通したのは、統合より分裂に走るわが政治をこのまま放置してはならないということでした。
私はここでさらに一歩進めて訴えたいと思います。政治先進化の重要な点は、「清潔な政治」と「生産的な政治」です。韓国の政治が数度の政治改革を通じて、過去より清潔になったのは事実です。しかし、道程はまだまだ続きます。
私は大統領選挙を行いながら、史上初めて不法政治資金の連鎖を断ち切りました。あわせて、在任期間中は誰からも不法資金を受けることのない大統領になることを改めて約束します。また、親類縁者の不正についていささかも許すことなく、常時、監視体制を強化します。これにとどまらず、公職社会の不正に断固対処します。
「生産的な政治」は国民と国家を中心に据えた政治です。選挙は民主主義の華ですが、あまりに多すぎる選挙は「生産的な政治」の障害となります。回数を減らし、合理的に調整するための本格的な論議が必要です。
非生産的政治の根源は、地域主義がはびこっているところにあります。現行の選挙制度では、地域主義から脱することはできません。100年前に作られた古い行政区域は、地域主義を深化させ、効率的な地域発展を阻害する障壁となっています。私たちが地域主義をなくすことを願うならば、選挙制度を変えなければなりません。
各地域で与野党からあまねく当選し、国会議員が議会活動に集中できるように選挙制度を改編する必要があります。政治改革は実に困難なことです。政党の利益から離れて政治の先進化と国の未来について熟慮し、政治改革を実現してくださるようお願いします。
庶民に温かく中産層を厚く
愛する国民の皆さん。
私は新年の演説で、今年1年を非常経済政府として運営すると約束しました。また、経済危機のもとで困難になった民生にきめ細かく配慮する国政を推進すると約束しました。
昨年1年間、多くの危機説が私たちを揺さぶりましたが、私たちはこれを克服しました。今、韓国経済はOECDで、最も早い回復傾向を示しています。ですが、まだ緊張を緩めてはなりません。雇用と投資、そして内需が生き返るよう、もう少し努力しなければなりません。経済が良くなっても、最も遅く恩恵を受ける庶民のために、政府は腐心しています。
「庶民に温かく、中産層を厚く」という政策基調は李明博政府の間はもちろん、大韓民国が一貫して推進しなければならない方向です。政府は希望勤労事業をはじめ、保育支援政策、登録金支援政策など、多様な親庶民政策を通じて庶民生活の困難を緩和するために努力しています。また、家のない庶民が家を持つことができる画期的な住宅政策を講じています。
あわせて、露店を営む方でも、日雇い勤労者でも、わずかな金さえ求めることができず、大変な困難に直面している方々の心配を減らすことのできる制度をつくります。また、所得、雇用、教育、住居、安全など「国民民生5大指標」を開発し、国民の生活の質と幸福度を高めていきます。
温かい社会をつくるためには、社会指導層のノブレス・オブリージュが切実です。世界で尊敬を受ける指導層たちは、奉仕と分かち合いの精神を自ら実践する人々です。指導者になろうとするなら、国のために献身し、隣人のために奉仕する美しい風土を、私たちもつくっていかなければなりません。
私たちの民族は、昔から他人に徳を施して生きることを五福(寿、富、康寧、攸好徳、考終命=出典「書経」)の中の一つと感じてきました。奉仕と分かち合いの文化が新しい精神運動、生活運動として発展していくことを期待してやみません。
今こそ対話すべき時
愛する国内外同胞の皆さん。
この場を借りて私は北韓当局に切に願います。核兵器は北韓の安全を保障するのではなくむしろ北韓の将来をよりいっそう難しくするだけです。
私は、どのようにすれば北韓が核を放棄できるのか、心を開いて対話できることを心より期待します。北韓が自らを守ることができ、南北が共に繁栄できる道を探せればと思います。
北韓がそのような決心を見せるならば、わが政府は韓半島の新しい平和構想を推進するでしょう。
北韓経済を発展させ、住民の生活を画期的に向上させる国際協力プログラムを積極的に模索するでしょう。
南北経済共同体実現のための高位級会議を設置し、関連国および国際機構との協力で経済、教育、財政、インフラ、生活向上分野にわたる対北5大開発プロジェクトを推進するでしょう。
韓半島の非核化とともに、南北間通常兵器の縮小も議論しなければなりません。わずか4㌔を挟んでこれほど重火器と兵力を半世紀以上も集中させている例は、世界のどこにも見当たりません。
兵器と兵力を互いに減らし後退させてこそ、真の平和を築くことができるでしょう。
わが政府はいつ、いかなる水準でも、南北間のすべての問題について対話と協力を始める準備ができていることを明らかにするものです。
結び
尊敬する国民の皆さん。臨時政府樹立90年、解放64年、建国61年を迎えて、私たち皆が固く誓いましょう。
世界にそびえ立つ大韓民国をつくろうと固く誓いましょう。今、大韓民国は先進一流国家進入の岐路に立っています。李明博政府は先進一流国家の基礎をつくるのに全力をつくします。
分裂すれば小さくなり、統合すれば大きくなります。
私たちの内部が分裂と葛藤を克服できなければ、前に進むことができません。私たちが互いに隣の人の手を握れば、もっと大きな大韓民国が待っています。
21世紀を大韓民国の時代にしましょう。私たちはできます。
(2009.8.26 民団新聞)