掲載日 : [2009-10-15] 照会数 : 9668
断罪される民族・統一への背信…総連と韓統連
[ 離散家族の悲痛いつまで(9月26日、北韓・金剛山地域で再会した兄弟) ]
共同宣言「固守実践」の本質
「6・15共同宣言、10・4宣言固守実践海外同胞大会」が16日、都内の会場で開かれる。「6・15共同宣言実践海外側委員会」が主催し、その日本地域委員会が主管するという。実態は朝鮮総連と韓統連(在日韓国民主統一連合)の主導だ。彼らは今でも、北韓独裁政権の指図で「統一」を叫んでは、民族が願う民主平和統一への接近を阻害し、最低限の人間的尊厳さえないまま飢餓にあえぐ北民衆から目をそむけて、北体制に阿附追従する。発言・行動が自由な海外にいながら、北韓の代弁に徹するその姿勢は醜悪であり、犯罪的と言わざるを得ない。彼らはどこまで罪過を積み上げていくのか。(編集部)
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総連・韓統連の厚顔無恥
飢餓生活も無視…北独裁に追従、自己延命図る
総連と韓統連の機関紙は「海外同胞大会」について、「祖国統一運動の主体として運動の先頭に立ってきた海外同胞が、固い意志と団結した力を誇示し、海外の運動をより深化・発展させる契機」だと異口同音にアピールしてきた。狙いは大会タイトルが示すように、6・15宣言と10・4宣言の履行を韓国側に迫る形をとりつつ、李明博政府の対北政策を糾弾するところにある。
掲げるキーワードもいつもながらの「『わが民族同士』の理念」だ。総連の機関紙「朝鮮新報」(9月17日付)は、祖国統一闘争の「関鍵」は「北南共同宣言に貫通している『わが民族同士』の理念」であると強調、「われわれは『わが民族同士』の理念のもとに北、南、海外3者の連帯と団合をより強化し、歴史的な6・15共同宣言と10・4宣言を固守貫徹するための闘争をより力強く展開」するとしている。
発言するには応分の資格がなければならない。民族発展や統一実現の運動をしていると自任するのであれば、なおさらのことであろう。総連・韓統連指導部はその点、あまりにも厚顔無恥というほかない。次の3点を見るだけでもそれは明らかだ。
◇6・15、10・4両宣言の合意を無効化し、土台を突き崩したのは北韓であり、それに追従する自分たちであるにもかかわらず、その責任を南側に転嫁しつつ両宣言の「固守実践」を平然と唱えている。
◇北韓独裁政権がかざす「『わが民族同士』の理念」なるものを自分の言葉として語りながら、いつでも可能な南北離散家族再会の約束さえまともに果たさず、南側民族を収奪対象とする一方で、北側民族を餓死や飢餓線上に追いやっている独裁政権に奉仕して恥じない。
◇海外で統一運動の先頭に立っていると自任するのであれば、統一阻害要因が北韓独裁政権にあることが理解できないはずはない。であれば、北民衆の目、耳、口となって体制改革の一翼を担うべきであるにもかかわらず、独裁政権を賛美することで自己正当化の名分を提供し、民衆には幻想を与えて統制強化に一役買っている。
動くほどに卑劣さ露呈
海外であればどの地でも、独裁者が好き勝手に振る舞える北韓とは違い、統一問題についても豊富な情報をもとに的確な判断が可能である。日本でも、北韓の内部事情と対南工作の実態が従前の比ではないほど明るみにさらされている。彼らも自分たちが声を大きくすればするほど、自らの卑劣さと愚かさを露呈することを知らないわけではあるまい。
だが、彼ら指導部が優先するのは、北韓の独裁者への媚びへつらいである。そこに見えるものは、独裁者の延命の片棒を担ぐことによって自分たちの延命を図るという醜い姿でしかない。彼らは民族を語り、統一を論じ、動けば動くほど民族に対する背信の歴史に新たな1ページを加える。
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破綻した6・15と10・4
「核」開発が前提崩す…「同族の情愛」を喰い物に
より具体的に指摘していこう。まず、彼らが「固守実践」にこだわる6・15、10・4の両宣言は現在、どのように位置づけられるのか。
結論から言って「6・15」は、初めての南北首脳会談を経て発表された歴史的な共同宣言であるにもかかわらず、北韓の暴挙‐05年2月の核兵器保有宣言、06年7月のテポドン発射、同年10月の核実験強行‐によって破綻した。
南北首脳会談における緊張緩和・信頼構築・交流協力に関する広範な合意は、92年2月に発効した南北基本合意書(南北間の和解と不可侵及び交流協力に関する合意書)、韓半島非核化宣言など、それまでの南北合意を順守することが前提であった。
基本合意書の和解条項は、大量殺傷兵器の除去を含む段階的軍縮の実施を表明し、非核化宣言は核兵器を実験せず、保持せず、持ち込まず、核再処理施設とウラン濃縮施設を持たないと約束している。北韓の一連の暴挙は、これらに対する明確かつ重大な違反である。北韓はこれにとどまらず、一方の署名者である金大中大統領との信義にも背信した。
00年6月の首脳会談に臨む3カ月前、その道筋をつけたベルリン演説で金大中大統領は、北韓の道路・港湾・鉄道・電力・通信など社会資本の拡充を支援する前提として、▽対南武力挑発の中止▽核兵器開発放棄の約束順守▽長距離弾道ミサイルの放棄を要求し、これをもって韓国国民と世界への公約としていた。
軍事挑発には断固対処する半面、可能な分野から交流協力を推進し、警告・牽制と同時に希望を与えるとして、北韓に包容(太陽)政策で臨んだ金元大統領は、最後までこの政策に執着しながらも、北韓の核兵器開発には怒りを隠さず、痛恨の極みと語っていたことはよく知られている。
6・15宣言はそうした問題以前に、別の側面からも論難がつきまとった。首脳会談から2年後、会談そのものが裏金で売買された疑惑が浮上し、国民の失望を買ったのもその一つだ。この不法送金事件は、国会が任命した特別検事の捜査の結果、金大統領側近の指示により首脳会談直前、会談の代価として5億㌦が現代グループを通じて北首脳に渡っていたことが判明、大法院は「大統領の統治行為」とする被告の主張を否定して有罪を宣告した。
より根源的な欠陥もあった。6・15宣言は第2項で、「南側の連合制案と北側の低い段階での連邦制案には共通性があり、今後この方向で統一を志向する」として連邦制を容認し、韓国が国民的合意に基づいて公式化した統一方案から逸脱したことである。
「韓民族共同体統一方案」と命名された韓国の公式方案は、南北が対話・協力を重ねて民族共同体憲章を採択、南北連合を構成して統一憲法を制定し、総選挙によって「統一民主主義共和国」を樹立することを骨子としている。各分野の専門家と各界各層の国民の意見を総合し、国会公聴会を経て89年9月、大統領が国会で表明した。
統一否定の連邦制固執
連合制と連邦制は似て非なるものだ。連合制では南北が独自国家として主権を持ち、対外的な同盟関係も維持される。しかもそれは、あくまで統一国家に至る過渡的な位置づけであり、南北社会の等質化、共同体回復と統一選挙の推進機構として設定されている。これに対し北の言う連邦制は、連邦政府が主権を持つ中立国となるだけでなく、異質な体制のままをもって南北接合の最高形態としている。
つまり、統一総選挙を回避して北韓の体制維持を図り、実質的には平和・民主・自主の原則に基づく単一国家の形成を忌避する半面、対南撹乱・侵略による統一の余地を残そうとするものだ。連邦政府が主権を握る連邦構成国間の戦争は、国際社会が容易に介入できない内戦と規定されることを度外視してはならない。
6・15宣言が無効化したのであれば、同宣言に依拠した10・4宣言の価値も自ずと底割れすることになる。それでも、核実験を強行した北に核放棄を迫り、それを合意させた上での宣言であればまた別問題であろう。
膨大な支援見返りは核
だが、10・4は核問題を置き去りにしたまま、大規模な経済協力の促進のみを前面に出すものだった。しかも、任期末の盧武鉉大統領が財源捻出の根拠も権限もないまま約束した、所要資金14兆ウォンとも言われる超大規模な経済プロジェクトである。根本的な再検討は免れ得ない。
そうでなくとも、98年〜07年の10年間に実施された対北支援の総額は、政府の無償有償支援、民間の支援、00年南北首脳会談時の送金などを含め約5兆ウォンと推計され、7兆ウォンとの説さえある。その最たる見返りが核兵器開発であり、対南恫喝であった。北韓は韓国から直接搾り取っただけではなく、核開発を放棄する約束の見返りに、韓米日などが設けた国際的な枠組みから詐取した資金は22億㌦以上になる。
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「わが民族同士」の真意
正当な運動圧殺狙う…「負の遺産」だけが残った
6・15や10・4が多くの問題を抱えていても、北韓がその精神と約束を守り、韓国の誠意・期待に応える姿勢で一貫すれば、南北関係の進展という大事の中の小事として、国民を納得させることもできたであろう。しかし、北は南を裏切るだけ裏切り、利用するだけ利用したに過ぎない。その意味でも6・15宣言は大きな「負の資産」をもたらした。
それは、宣言第1項に盛り込まれた「わが民族同士」との文言に起因する。北韓とその追従勢力は、「『わが民族同士』の理念」を有効に活用し、南から援助を最大限に引き出しながら、南からの批判や要求を「反民族」行為として一切受け付けない自らの立場を合理化した。さらには、「わが民族」の名において韓国における従北勢力の増殖を図り、統一戦線を通して韓国国民を直接コントロールすることで、韓国の統治権力を空洞化させようとしてきた。
その表看板が今回、「海外同胞大会」を開くという「海外側委員会」などがつくる「6・15共同宣言実践民族共同委員会」だ。この委員会は北韓主導で結成されたもので、北側代表、南側代表(従北・親北団体が主要)、海外側代表(従北団体など)で構成する。北韓が主張する連邦制の「南北双方同数の代表と適当数の海外同胞」からなる「最高民族連邦会議」を模した政略的な産物であり、破綻しつつある統一戦線戦術の手駒に過ぎない。
韓半島の統一は、民族成員の安全と幸福を確実に増進させ、東アジアの恒久平和を担保するものだ。統一に向かう二つの国家の在り方は自ずと規定され、決して軍事国家であってはならない。同時に、手段も平和的かつ民主的なものに限定され、武力はもちろん政略や権謀術数も許されない。
改革開放が生存への道
統一への当面の最重要課題は自明である。北韓が核兵器と長距離ミサイルを廃棄し、先軍から民生重視へ政策を転換させ、韓国をはじめとする国際社会の支援が可能な改革開放に踏み切ることだ。南を変えることではなく北を変えることである。
独裁者や巧妙な権力保持者は、政略的な運動を組織・扇動することによって、問題の本質から目をそらさせ、本来あってしかるべき大衆運動を潰そうとする。総連・韓統連の「統一」運動なるものは、その典型と言うべきものだ。
(2009.10.14 民団新聞)