掲載日 : [2010-01-15] 照会数 : 4762
李明博大統領の新年国政演説(要旨)
[ 昨年末、韓国がアラブ首長国連邦(UAE)と締結した原子力発電建設などの受注額は400億ドルにのぼると推算されている ]
国運隆盛の好機 大きな韓国つくる
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底力発揮した09年
危機を乗り越え自信
尊敬する国民の皆さん!
2010年の庚寅年が明けました。
明けましておめでとうございます。今年はトラの力強い気性が津々浦々にあふれることを祈ります。
昨年9月25日、ピッツバーグのG20首脳会議で、2010年開催国に韓国が選ばれたその日、私の心の中には感激の涙とともに、愛国歌が響きわたりました。12月27日の原子力産業の輸出協定が締結された日には、思わず「大韓民国の国運が開かれた」という言葉が口から出ました。
危機到来をチャンスに
2009年、私たちが得たのは自信感です。
多くの人が、対外依存型である韓国経済は金融危機に最も脆弱だと考えましたが、私たちは、経済危機を世界で最もよく克服した国と考えます。わが企業は危機の中でむしろ海外シェアを高めています。韓国の輸出高は世界9位に上昇しました。
インドやEUなど巨大市場と相次いで自由貿易協定を締結しています。韓国は世界市場の約3分の2、人口の半分近くと自由貿易協定を結ぶことになる唯一の国です。
世界の至る所に大韓民国の旗が翻っています。「危機をチャンスに」という私たちのスローガンは虚言ではなかったのです。わが国民は大韓民国60年、奇跡の歴史を熱心に書き続けてきました。
労使は働き口を分けあう「ワーク・シェアリング」という言葉を広めました。苦痛を分担しようとする政府の政策に国民は実によく耐え、応えてくれました。公務員も2年連続で賃金凍結に甘んじながら、熱心に仕事をしてくれました。
危機の中で輝く、わが国民の底力は、ふたたび遺憾なく発揮されました。深く感謝申し上げます。奇跡を起こし神話を創造する大韓民国国民の大統領であることを、私は常に誇りに思っています。
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共生めざす新秩序
世界主導する気概で
尊敬する国民の皆さん!
2010年、私たちは大きな変化のうねりの中にいます。
現在、世界は旧秩序が解体され、新秩序が登場しています。金融危機で触発された世界経済の危機と気候変化による地球環境の危機が新秩序を促しています。
金融危機を経験しながら、世界は「共倒れではなく、共生が可能な経済」「貪欲ではなく、倫理が生きる市場経済」の必要性を痛感しています。一部先進国が支配するのではなく、先進国と新興国が額を突き合わせながら問題を解決する新たな経済秩序を求めています。G20はこのような世界の熱望が凝縮された新しい国際機構です。
体質変えて温暖化対策
地球温暖化の危機は徐々に蓄積されるため、その深刻さを平素から感じとることは難しいのです。そのため、どうしても行動が遅れがちです。しかし、ある限界地点を超えた瞬間に危機は暴風のように襲って来るため、遅れて対処することは決して許されません。
気候の変化は前もって対応しなければなりません。本質的には、経済の体質と私たちの生活方式を変えなければなりません。「低炭素」を優先的な価値としなければなりません。
いまや言葉ではなく、行動をもって地球の危機に共同対処せざるをえません。
COP会議で私が提案した通り、「Me First」すなわち「みずから実践しよう!」という競争に皆が先を争わなければなりません。気候変化に先んじて本質的に対処することは、緑色(グリーン)産業強国をめざす韓国の発展戦略でもあります。原発の輸出はその一つの象徴です。
世界的な大きな秩序の変化は、私たちに認識の転換と実践の転換を同時に要求しています。古い思考方式で新しい波をかき分けて行くことはできません。世界史の大きな流れを捕らえ、未来へ向かう歴史の道しるべとしなければなりません。
新秩序は国際的な勢力関係を再編するものです。新秩序で主導する国になるか、牽引される国になるかは、私たちがいかなる考えを持ち、いかに行動するかにかかっています。
私たちはすでに、世界の運命と大韓民国の運命が分離できないことを分かっています。国の内と外を区分することはできません。外交と経済を2つにはできません。
未来を開く全方位外交
私たちはこの2年間で重要な教訓を得ました。グローバル外交に成功することが、韓国の明るい未来を開くのに決定的に重要だという事実です。この2年間、私たちは世界の多くの国々と近くなり、あらゆる国が友人や兄弟になりたいと願う国になりました。
軍事的・経済的力は依然として重要です。しかし、いまやそれだけでは世界を主導する国の隊列に加わることはできません。
私たちが掲げるビジョンは、世界が掲げるビジョンとならねばなりません。気候変化に対応しながら経済発展を図る私たちのビジョン、緑色成長はすでに世界のビジョンとして位置づけられています。
世界に対する私たちの責任もますます大きくなりつつあります。
昨年、私たちは世界で初めて、援助を受ける国から援助を与える国に変わりました。援助を受けることより、援助を与えることの方が難しいのです。私たちは援助を受けた時の心境を推し量りながら、他人を助ける時は両手で手助けしなければなりません。援助を受ける国が将来、援助を与えることができるという希望を私たちが与えなければなりません。
大韓民国は今、正しい道を進んでいます。成熟した世界国家の夢はいまや現実のものとなっています。継続してこの流れに乗って進まなければなりません。
世界の変化を大韓民国の偉大な変化として進めなければなりません。国運隆盛の好機を積極的に活用しなければなりません。より大きな大韓民国の道をいっぱいに開かなければなりません。
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一流国家への基盤
視野広く 先進化推進
尊敬する国民の皆さん!
私は新年の国政を「視野は広く、仕事は着実に」という姿勢で、遂行します。国民が肯定的な変化を体感できるようにすることに力点をおきます。2010年、先進一流国家への基盤を確実にしていく年にします。そのために私は、3大国政運営の基調を設定しようと思います。
最大課題は経済の再生
まず最初にグローバル外交の強化、次に、経済活力の向上および先進化改革推進、3番目に庶民寄り・中道実用政策の維持です。これらの基礎のもとに、とくに5大重要課題に力を入れます。
2010年李明博政府の最初の国政課題は、経済を蘇らすことです。その中心は働き口を作ることです。上半期には非常経済体制を完了し、下半期には庶民たちも経済回復を体感できるように総力を傾注します。
今年の政府は「働き口政府」と位置づけます。「雇用なき成長」を克服するには、政府と企業、国民がともに力を合わせなければなりません。労働力の需要と供給の不一致を解消するため、統合情報網を構築し、職業訓練体制を刷新します。
次に、教育改革に邁進します。教育競争力こそまさに国家競争力です。創意的な人材育成と公教育の正常化、私教育費の節減を目標に、李明博政府は一貫した教育改革を進めていきます。
大学入試を自由化し、私教育依存の入試制度を廃止することに力を傾けます。全寮制高校やマイスター高校も支障なく推進します。私教育に依存しなくても、望む大学に行くことができる環境を必ずつくり出します。
3番目は、各地の特性に合った地域発展の転機をつくる1年にします。李明博政府は分権・特化・共生の原則のもと、5+2広域発展モデルを推進してきました。各地域の宿願事業を解決し、特性化発展戦略を支援してきました。
今年は各地域の発展戦略が顕著な成果をあげ、地方でも経済回復が肌で感じられるよう注力します。地域が望む産業育成、人材養成、インフラ拡充、定住条件の改善などに、5年間で100兆〓規模を支援します。
全国72市・郡・区を経由する4大河川活性化事業が、地域の働き口と所得創出のための画期的転機になるよう、地域の意見を最大限反映します。企業都市、経済自由区域などが早期に活性化できるよう、制度改善や財政支援などを強化していきます。
今年は、地方自治制実施から15年間にわたり議論されてきた地方消費税と地方所得税がいよいよ導入されます。長年の宿願が実現します。これが地方自主財源拡充の基盤となるようにします。
4番目に、政治の先進化改革を推進します。私たちが先進一流国家として進むのであれば、あらゆる分野で先進化されなければなりません。私たちの思考、私たちの行動様式、私たちの制度を先進化しなければなりません。私たちの大切な自由を守る土台の法秩序を確立し、また先進化しなければなりません。労働法の改正を契機に先進労使文化も定着させなければなりません。
急を要する政治の改革
すべての国民が生産的な政治、合理的な政治、国民を統合する政治を期待しています。政治の先進化改革をこれ以上先送りすることはできません。政治制度改革の基盤を築き、政治文化改革の花を咲かせなければなりません。
幸いにも、行政区域の改編がすでに日程にのぼりました。自主統合を進める自治団体には積極的に支援します。排他的地域主義を緩和し、対決政治を克服するための選挙制度改革も必ず今年中に完遂すべき課題です。
5番目は、5大洋6大陸のあらゆる国々と全方位外交を繰り広げ、南北関係も実質的改善がなされるよう努力します。今年はG20首脳会議を含めた大小の国際会議が韓国で継続開催されます。これは、「さらに大きな大韓民国」へと進んでいく大きな転機となることでしょう。
今回の会議では、世界経済を早く回復させると同時に、最貧国を支援し、新興国が持続的に成長しうる制度的装置を設けることになるでしょう。また、国際通貨基金(IMF)や世界銀行を含めた世界金融秩序の改革も意味ある成果を出すことになるでしょう。こうして世界が均衡ある発展をし、持続可能な成長ができる契機を作るように努めます。すべての国が考えと責任を共有し、皆が共感できる会議となるようにします。
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「6・25」60周年
北と遺骨発掘作業を
韓米関係はかつてないほど強化されました。新年には韓中日関係をより一層緊密にし、新アジア外交に一層拍車をかけることになるでしょう。
今年は特にアフリカ外交を強化します。国際的責任を強化するためにODA(政府開発援助)を増やし、PKO(国連平和維持活動)参加を拡大します。アフガニスタン平和維持活動にも参加します。
対話可能な常時機構に
今年は南北関係にも新たな転機を作り出さなければなりません。北韓が早期に6者会談に復帰することを促します。そして、韓半島の非核化が進展し、本格的な南北協力の糸口を見いだせることを期待します。
このためにはまず、南と北の間に常時対話ができる機構を設けなければなりません。北韓も本当に心を開き、対話と協力の道に進むことを期待します。
今年は「6・25」60周年です。今年は北韓との対話を通じて、北に埋もれている国軍勇士らの遺骨発掘事業を本格的に推進します。見知らぬ土地において生命を捧げた参戦勇士らをわが大韓民国は忘れないでしょう。
尊敬する国民の皆さん!
任期の中盤を通過する今年、私は「一労永逸」の姿勢で働きます。難しいからと、回避はしません。疲れたからと、決して放棄しません。煩わしいことも躊躇しません。
今年の暮れには、庶民たちの暮らしが豊かになり、大韓民国の品格がさらに向上し、私たちの自信感がより満たされるよう、最善を尽くします。
すでに大韓民国は偉大な変化へと進み始めました。この偉大な変化を私たちは、必ず成し遂げることでしょう。先進一流国家に向かい、私たちの歩みは一瞬も止まることができません。私たち全てがともに力を合わせて行きましょう。
(2010.1.13 民団新聞)