伝統の拝礼 このように
李瑛子さんに教わる
2月14日は韓国のソルナル(旧正月)。各家庭ではこの日の朝、祖父母や親にチョル(拝礼)という伝統的なあいさつを行う。チョルには最も丁寧なお辞儀の大拝礼(クンジョル)と、平常時のお辞儀、平拝(ピョンジョル)がある。女性が行う2つのチョルの美しい所作について、韓国茶道・伝統礼節協会に所属する東京茶礼房の李瑛子さんに教わった。
チョルは、相手へ恭敬を表す基本的な行動礼節です。チョルは人に対してだけではなく、恭敬をしなければならない対象(先祖供養など)に対しても行います。
今月は新正月、成人式が行われました。成人式では在日女性の新成人たちが韓服を身にまとい、喜ぶ姿を見て胸が一杯になりました。
そのとき、その新成人たちが私たち韓民族が守り、伝承してきた伝統拝礼を習い、両親、目上の方々へのあいさつ、その先の婚姻礼の際などに役立てばと思いました。
このチョルの手順は1599年、韓国の礼学の権威者である沙渓・金長生(1548〜1631年)著「家礼輯覧」に、記載されている挿絵を元に統一され、現在まで伝わってきました。しかし、最近では簡素化が進み、地域や各家庭によって多少、異なります。
伝統的なチョルを学び、美しいお辞儀のできる女性になりましょう。
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クンジョル(大拝礼)所作は李瑛子さん
クンジョルは自分がチョルをしても、答拝(タッペ)されなくてもよい、最も敬意を表す年長者に対して行われます。儀式行事、名節茶礼、祭儀礼、婚姻礼、自分と配偶者の直系年長者などに対する伝統的なあいさつです。
①右手を上にして両手を軽く合わせ(拱手)、相手に向かってまっすぐ立つ。
②拱手した手を肩の高さまで、水平になるように上げる。
③頭を少し下げ、額を拱手した手の甲へ近づける(こぶし1つが入るくらい)。
④左膝を先に曲げるので、左足をまず、後ろへおくる。
⑤左膝を曲げる。
⑥右膝も曲げ、正座のようにする。
⑦右足を下にして足の甲を重ねる。かかとを外に向けてお尻を下げて深く座る。
⑧上体を約45度曲げる(このとき、手の甲が額からあまり離れてはいけない)。
⑨3秒位の間をおいてから上体を起こす。
⑩右膝を先に立てる。
⑪右膝に力を入れ立ち上がる。
⑫立ち上がりながら左足を右足とそろえる。
⑬合わせていた両手をゆっくり下げ、頭を起こす。
ポイント
ゆっくりと流れるよう
一連の動きは、ゆっくり流れるように行うことが大事です。クンジョルは、同じ動きを2回繰り返します。1回目が終わったとき、手は下げずにそのまま、2度目に移ります。
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ピョンジョル(平拝)所作は陳蔦江さん
①拱手し、相手に向かってまっすぐ立つ。
②拱手した手を解き、両側に下げながら、同時に左足を後ろに下げる。
③左膝を先に曲げる。
④右膝も曲げ、正座のようにする。
⑤右足を下にして足の甲を重ねる。かかとを外に向けてお尻を下げて深く座り、両方の手の指を揃えながら、指先を少し外側にして床につける。
⑥上体を約45度に倒し、両手のひらを床につける。
⑦3秒位の間をおき、上体を起こしながら両手のひらを床から離す。
⑧右足から先に立ち上がる。
⑨立ち上がったら両足を合わせながら、右手を上にして最初の姿勢に戻る。
ポイント
ピョンジョルの場合、回数は1回でかまいません。
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タッペ(答拝)
チョルに答えて、目上が行うのが答拝(タッペ)です。このタッペには立った状態と、座った状態で行う女性の半拝(パンジョル)があります。座ったまま行うパンジョルの2つのやり方を紹介します。
①立て膝で座った年長者は、両手を外側に向けて床につく(手は膝の位置くらい)。頭は軽く下げる程度で礼をする。
②立て膝で座り、片手を外側に向けて床につき、立てた膝と同じ側の手を膝上に軽く添える。
いずれも目下が最初に頭を下げてから礼をし、年長者が先に頭をあげた後、相手が頭を上げる。
(2010.1.27 民団新聞)