掲載日 : [2010-03-17] 照会数 : 9792
フラッシュ同胞企業人<46>「在日の証」にこだわり
[ 1940年京都生まれ。洛陽技芸女子高校卒。89年に韓国料理店「百済」1号店オープン。3男3女、孫5人。 ]
家庭料理から宮廷料理まで
「百済」の金輝子社長
家庭料理から本格的な宮廷料理まで幅広いメニューを提供する「韓国レストラン 百済」(本店)、韓食文化の代表ともいえるスープ専門店「すーぷ房 くだら」(花隈店・湊川店)、そして神戸大丸百貨店のキムチ店「韓菜 百済」の4店舗を運営する。
食材は韓国産
「韓国のスープはコラーゲンが多く、美容・健康にとても良い。滋養強壮・疲労回復に効果のある料理にするには、本場韓国の食材を厳選、使用することが大切。毎月、その食材を求め、韓国に足を運んでいる」と食材への強いこだわりを示す。
スープ専門店の場合、1000円を超えるメニューはない。《安い、うまい、栄養満点》の3拍子がそろうため、口コミで広がり、常連客が多い。ぴり辛とうふスープ、田舎やさいスープなど、オモニの味が人気だ。
在日韓国人のみならず、日本人の顧客も多い。顧客からは「ボリュームたっぷりでおいしいから、つい足を運ぶ」と好評だ。社員は35人、08年度売上額は約1億2000万円。
京都に生まれ、育った。「友人が北に帰国することになり、京都駅から新潟行の列車を見送った姿は今も忘れられない。青春時代は民族心に燃えていた。民団の本部や支部で仕事をしていたこともあった」
結婚後、神戸に居住。「小さい頃から、オモニと一緒に旬の山菜を摘みに行っては料理を作った。それで料理好きになったと思う」
1988年のソウル五輪を契機に、日本人の韓国に対する見方が徐々に変化した。「本物の韓国料理を紹介したい」という思いが高じ、韓国料理店を出すことを決意した。
震災乗り越え
1号店をオープンしたのは89年。店名に「百済」を使用したのは、「日本の古代史を見ると、百済とのつながりが一番深いことがわかった」からだ。「本籍が慶尚北道なので、親戚からは不評だったが、在日の証でもある」と強調する。
なによりも「清潔感」をモットーにし、味だけでなく、食器や店内のインテリアにもこだわりを示し、韓国的な雰囲気を出すようにした。玄関の壁には太極旗をはめ込んだ。「韓国から来られた観光客の場合、韓国料理を食べたくても、どの店がよいのかわからないことが多い。そんな時、玄関の〈太極旗〉を目にすれば、安心して入って来られる」
順調に94年12月に2号店を出したが、1カ月も経たずして95年1月、阪神淡路大震災で壊滅。「この時ほどショックを受けたことはない」。しかし、持ち前の明るさと気丈さで立ち直った。「太極旗を背負ってきたからこそ、ここまで来られたのかもしれない」と振り返る。
結婚後は30年間にわたり、婦人会支部で活動してきた。また、地域の女性団体にも所属しながら、料理教室を開き、韓国料理のPRにも努めてきた。
現在、「韓国料理をアレンジしたものを構想中」だという。「料理の奥は深い。それだけ無限の可能性があるともいえる。2世の立場からチャレンジしたい」。毎日の仕事がいかにも楽しげだ。
◆(株)百済=神戸市中央区下山手通3‐1‐9コスモビル1F(℡078・392・5458)
(2010.3.17 民団新聞)