掲載日 : [2010-04-14] 照会数 : 7118
<社説>「4・19革命」50周年を迎える韓国
決起精神の蘇生 今こそ
「3・1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統及び、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚して、正義、人道及び同胞愛により民族の団結を強固にし、すべての社会的弊習と不義を打破し……」
大韓民国憲法の前文に3・1独立運動(1919年)と肩を並べ、その継承が謳われている「4・19民主理念」が発現されてから、今月19日で50周年になる。
建国理念を具現
執権12年に及んで腐敗・無能を曝け出す自由党政権下で、1960年3月15日の第4代大統領・第5代副統領選挙は、当初から政府各機関や軍・警までを動員した露骨な不正が横行するものとなった。これにまず、地方の高校生らが決起し、次いでソウルを中心とする大学生が運動主体として前面に登場、民衆の呼応を得て一歩も退かず、ついに李承晩大統領を下野せしめた。
ソウルなど全国各地の大規模な学生デモは4月19日の1日だけで、警官隊との衝突によって死者186人、負傷者6026人を出した。「4・19」とは、「血の火曜日」と名づけられたほどの凄惨な犠牲を払ったこの日を、闘いの象徴として冠したものだ。
4・19は学生が主体であったことから当然、「革命勢力」が執権して決起理念を具現するに至っていない。しかし、その歴史的な意義の尊さから「革命」と称されてきた。
野党も腐敗・無能と無縁ではなく、知識・言論人も本分を果たせないまま、建国理念が朽ち果てようとする危機にあって、「象牙の塔」から打って出た学生たちが真っ先に掲げたのは「既成世代は覚醒せよ!」であった。
学生たちは特定の政治理念によって突き動かされたのではない。あくまで建国理念の実践と社会正義を求めたこと、国民としての権利、即ち憲法にも保障された示威権を行使しての合法的な闘争に終始したことは、改めて確認される必要があろう。混乱の極みにありながら、李承晩大統領に対しても建国大統領として遇する節度を失うことはなかった。
貴重な社会資本
3・1運動は民族性を解体しようとする日帝の圧政に抗して、わが民族の集合的なアイデンティティの形成に決定的役割を果たし、大韓民国の法統の基礎となる臨時政府の樹立につながった。4・19は前近代的な社会意識を克服し、深刻化する東西冷戦のなかで韓国が選択することになった自由・民主主義と市場経済体制を根づかせ、豊かな経済力量と市民的空間を形成し、平和と人権の尊重という普遍的な価値観が支配する国家に発展させる礎(いしずえ)となった。
4・19はまさしく、植民地時代を含む革命前50年が受難と忍耐の時期とするならば、それ以降を難関克服と雄飛の50年とするまでに、韓国を転換させる貴重な社会資本となった。4・19世代自身が高度成長を牽引し、その成果の上に民主化を支えてきたことも記憶されるべきだろう。
それから50年後の韓国はどうか。「市民のいない市民社会」との自嘲もあるように、市民組織は社会的活力を結集することに成功していない。むしろ、民主化過程で過度に政治化し、理念的にも両極に先鋭化することで、国民一般の情緒や期待から遠ざかっている。
市民意識確立を
4・19を「永遠なる未完の革命」として安易に懐古することなく、「進行中の革命」としてその精神は想起されねばならない。
韓国の腐敗指数は先進国水準からかけ離れている。各種政策の立法・執行に対する過剰反発、経済効率や産業競争力を犠牲にする過激な労働運動、北韓従属勢力による反政府のための反政府行動など、韓国の集会・デモの発生率は米国の3・5倍を数える。三星経済研究所の2009年報告書は、社会葛藤指数がOECD(経済協力開発機構)国家の平均値になるだけで、韓国の一人当たりGDPは27%増えると指摘した。これほどまでに、百害あって一利なしの紛糾が頻発している。
1960年当時の韓国は、援助なしには生きられない最貧国であった。世界が驚嘆する躍進を遂げながらも現在、1人当たりGDPは2万㌦の手前で足踏み状態にある。一流先進国になるには、規範を尊重するのはもちろん、信頼・協力・参与など社会的な共同利益を創出する社会資本の充実が焦眉の課題だ。政治的・社会的正義を打ちたてようとした4・19革命精神を今一度社会に蘇生させるときである。
(2010.4.14 民団新聞)