掲載日 : [2010-04-28] 照会数 : 4770
<4・19 50周年>大統領記念辞を読む
[ 不義・不正に抗して立ち上がった学生たち(1960年4月19日=ソウルで) ]
国民結束なしに先進化はない
李明博大統領は4・19革命50周年記念辞で、同革命の歴史的意義を再確認しつつ現在の韓国が抱える主要な問題を指摘し、一身を賭して政治的・社会的な正義を打ち立てようとした4・19精神を手本に、「産業化」と「民主化」という世代・理念的葛藤を超え、新たな先進韓国を創造しようと訴えた。記念辞が訴えるところの意味とその背景を考える。
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涸れぬ泉の今日的意義
純粋性ゆえに偉大…理念・世代の葛藤に警鐘
国家発展の堅固な礎石
まず、歴史的意義について李大統領は、「4・19は多くの試練にもかかわらず、自由大韓民国が守らなければならない崇高な価値を回復しようとした」ものであり、「その精神は憲法前文に明記され、大韓民国の誇らしい歴史において民主理念の涸れることのない泉」になったと強調。いかなる対価も求めない純粋性がゆえにいっそう偉大であり、「国民の声に耳を傾け、歴史の流れに応えた時代の代弁者」であったと言い添えた。
韓日併合から今日までの100年間のスパーンで見ても、4・19革命の占める位置は極めて重要だ。現在の韓国をつくるうえで、4・19以前までの努力が敷地の確保・整備だとするならば、4・19はその敷地に堅固な礎石を打ち込んだものと言えるだろう。
1919年の3・1運動はわが民族の集合的なアイデンティティ形成の金字塔となって、韓国の国家としての法統の基礎となる臨時政府の樹立につながり、その後の独立運動を支えて1948年の建国を担保した。しかし、以後の12年間、自由・民主主義と市場経済という建国理念の「幼い芽」は、「絶対的貧困と政治的無秩序」のなかで枯れ死にしかねない状況にあった。
革命の主体となった学生たちは、特定の政治理念に突き動かされたのではない。求めたものはあくまで、不義不正を打破して枯れ死にしかけた建国理念を蘇生させることであった。
前近代的な社会意識を克服し、建国理念を根づかせながら、豊かな経済力量と広い市民的空間を形成し、普遍的な価値観が支配する国家に発展させる堅固な礎石となったのである。
限界論への反証は実績
進歩あるいは左派と称される人々のなかには、4・19は指導的組織を持たなかったがゆえに限界があり、民主政権を樹立できなかったばかりか翌年には5・16軍事クーデターを招いたとし、過小評価する傾向がある。しかし、韓国のこの50年の実績そのものがそれへの力強い反証となっている。
「4・19に続く5・16軍事クーデターは、民主化と産業化の優先順位を『先民主化』から『先産業化』にかえただけで、大韓民国は民主化が留保された産業化過程にあっても民主化の火種を消すことなく守り続けてきた」(朝鮮日報4月19日付社説)。
李大統領が「民主理念の涸れることのない泉」と形容したようにその精神は生き続け、4・19主体勢力自らが産業化の先頭に立ち、民主化を可能にする経済発展を成し遂げたことを忘れまい。
李大統領は4・19のこうした歴史的意義を確認したうえで、韓国の現在の政治状況に言及し、狭い抽象的な理念にとらわれて庶民の切迫した生活と国難にそっぽを向いていないか、分裂を助長する地域主義と人気に迎合するポピュリズムに陥っていないか、警鐘を鳴らした。さらに、韓国社会にはいまだ旧来の権力型、土着型、教育型の不正が根強く残っていると指摘した。
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進行中の「未完の革命」
不義・腐敗の一掃急務…世界競争での生存かけ
より大きな大韓民国へ
4・19は「未完のまま終わった革命」では決してない。現在も進行中の「未完の革命」である。
「大韓民国の先進化の新しい奇跡を成就するために」「もう一度すべての同胞が一つの心、一つの志となって国運隆盛に力強く立ち上がるときだ」
4・19精神の要求に即して不正腐敗を果敢にえぐり取り、「より大きな大韓民国」に跳躍する道を開く決意を明らかにした李大統領の記念辞は、4・19が現在進行形の革命であることを十分に意識したものと言えるだろう。
4・19革命当時の韓国は、1人当たり国民所得が79㌦と世界でも最貧国であった。それが07年には1人当たりGDP(国民総生産)で2万㌦台に乗った。韓国のこれまでの発展は、レンガを一つずつ着実に積み重ねた結果ではない。大きなセメントブロックを性急に積み上げてきたようなものだ。
韓国という国家を形づくる各種構造に、歪(ひずみ)と腐食がかなり目立つ。朝鮮朝時代の党争を想起させるような先鋭化した理念間の対立、それと関連した国家の正統性や対北韓政策をめぐる激しい葛藤、政策の立法・執行に対する過剰な反発、経済効率や産業競争力を顧みない労働運動、政・官界に絶えない不正、自発性をはじめ信頼・協同・合意の精神・システムの未成熟などがそうだ。
新興国から追い上げ急
国土・資源・人口などの基本要件から、韓国が強大国になるには大きな制約がある。しかも、南北分断という重石さえ抱えている。しかし、韓国より天賦の与件に恵まれていない小国でも、所得水準の高い先進強国は少なくない。
こうしたいわば「強小国」には必ず、個人・企業・社会・国家という各次元において、そして葛藤の程度において、段階的な処方が法・制度としてはもちろん、社会的な慣行としても整備されている。例えばルクセンブルクは1921年以降、1件の労使紛争も報告されていない。
韓国の1人当たりGDPは07年の2万㌦超えをピークに、1万7000㌦水準で足踏み状態にある。その韓国は今、国を挙げて4万㌦達成を目指している。それを可能にするためには、旧来からの不正腐敗構造の解体と、急速成長がもたらした歪の解消が絶対条件として爼上にのった。
韓国はこれまで全力疾走してきた。これからも走り続けなければならない。先進国の背中はなお遠い半面、新興国の追い上げは急だ。前途有為の韓国ではあっても、国民的な統合力が現状のままでは、いつしか落伍者になりかねない。
所得4万ドル是が非でも
90年代初頭以降10年間の日本経済は、国際社会で「黄金の不景気」と呼ばれている。長期不況のなかでも1人当たりGDPが3万㌦台を維持してきたからだ。これは、4万㌦水準になれば内外からの衝撃にある程度耐えられる吸収能力が育つことによる。
李明博政府が掲げる4万㌦時代実現、先進一流国家建設の目標は、先進国と新興国の間で挟撃されても生き抜き、「安保と経済の二つの側面での大変革期」(李大統領記念辞)に対応し、北韓の崩壊を含む激変にも備えようとするものだ。
美辞麗句によって装飾された理念の名のもとに、社会的な葛藤を増幅させてはばからない傾向を封鎖し、国民的な団結を回復するためにも、今こそ4・19精神の蘇生が求められる。
(2010.4.28 民団新聞)