掲載日 : [2010-04-28] 照会数 : 6166
宙に浮く徴用韓国人の遺骨2601体
見えてきた課題、問題点
調査着手から5年 返還方策なお混迷
韓日両国政府が合意して始まった韓半島出身者の遺骨奉還事業が明暗を分けている。東京・目黒区の祐天寺に安置されている旧軍人・軍属についてはすでに3回にわたって追悼式を行い、204体を韓国の遺族へ返還したものの、旧民間徴用者については2601体を確認しているが、調査から5年を経ていまだに一体も返還されていない。日本政府の要請を受けて遺骨調査に取り組んできた宗教界からはいらだちの声も。
宗教法人曹洞宗宗務庁は22日、都内で記者会見し、「調査の進展とは裏腹、遺骨の返還はいま危機的状況。魂がさらにさまよい続ける」と強い危機感を表明した。
曹洞宗は日本政府の要請に応え、05年11月から仏教界でもとりわけ熱心に遺骨調査に取り組んできた。これは日本の皇民化政策に便乗し、東アジアで民族の尊厳を踏みにじる開教(伝道)を行ってきたことへの反省に立っている。
調査対象としたのは全国の宗門1万4000カ寺。ダイレクトメールや機関誌で協力を呼びかけるなどして、今年4月1日までに個別に骨壺や骨箱に収められた韓半島出身者の遺骨105体の所在を確認した。このうち遺族が判明した遺骨は1体だけ。名前と本籍まで判明しているのは30体にすぎず、部分的にしか判明していない遺骨が大多数を占めている。
調査当初、曹洞宗側は、少なくとも遺骨の半数は返還への手がかりが見つかるものと楽観的に考えていたという。しかし、国や自治体、徴用に関係した企業からは思ったような協力を得られず、「このままでは遺骨の95%以上が無縁仏になる可能性がある」と顔を曇らせている。
これは、遺骨の身元を特定するうえで必要な死亡者情報の含まれている各種名簿や埋火葬認可証、戸籍受付簿などの公開が進んでいないため。強制動員に関わった産業団体や企業が持っている名簿類についての調査もほとんど成果を上げられていない。
調査業務を担当している厚労省所管の人道調査室からは、「(旧軍人・軍属と違い)、旧民間徴用者は日本国家と直接の雇用関係がない」といった声も聞かれる。
曹洞宗のある遺骨調査員は、韓国政府との外交窓口となっている外務省から聞いた断片的な情報をもとに、「勝手に日本に来た行方不明者の遺骨として、軍人軍属の返還とは違う返還方法を考えているようだ。荷物としてモノとして返還するというならば、各寺院が拒否するのでは」と話している。
「遺骨が見つからなくても、せめて遺族にどこでどのようになくなったのか、死亡者情報だけでも届けたい」というのが曹洞宗関係者たちの願いだ。
日本政府に対しては、「無縁遺骨の事情はそれぞれ複雑だが、曹洞宗で調査した限りではこの多くが日本の国策の犠牲者だ。旧軍人・軍属と区別することなく、1日も早く返還方針を明らかにするよう」求めている。
(2010.4.28 民団新聞)