掲載日 : [2003-05-14] 照会数 : 3627
アイデンティティ保障へ一歩 重国籍者の実態把握(03.5.14)
市外教・担当者研修で指示
【大阪】大阪市外国人教育研究協議会(大阪市外教、高橋均会長・大阪市立大池中学校校長)は増え続ける重国籍児童・生徒の実態を把握し、韓国と日本といった2つの民族的背景を尊重できる校内環境作りに本格的に取り組んでいく。調査の結果、重国籍者とわかれば本人の了解を得て在日外国人として扱い、公簿にも本名を記載するよう教職員の意識改革を求めている。
「民族名」使用勧める
重国籍者の把握は市外教が2日、大阪市教育センターで開いた外国人教育主担者研修会の場で指示した。これは「本名を呼び名乗る教育」の具体化をうたった大阪市教委の「在日外国人教育基本方針」に基づく。
重国籍の児童・生徒は戸籍上、複数の民族的背景をもった子どもとして処遇されているわけではない。生まれたときから住民票にもとづき、日本人として入学してくる。そのため学校現場で在日外国人として認識するのはなかなか困難だ。研修会でも「丁寧な家庭訪問と個人懇談」の大切さが強調された。
市外教では、親のルーツが在日外国人とわかれば子どもについても在日外国人として認識するよう教職員に求めている。具体的には出席簿や卒業証書など公簿への本名記載と本名印の作成。さらに民族学級への入級も勧めていく。
こうした子どもたちの民族的アイデンティティを保障していくには、教育環境の整備も必要だ。市外教はこの日の研修会で、学校として在日外国人教育のための教材や資料の計画的購入、校内授業研究会の実施を呼びかけた。また、教員自ら白頭学院や金剛学園など民族教育の現場を実体験するよう求めている。
市外教の調査によれば92年当時、韓国・朝鮮籍の児童・生徒は大阪市内で1万人を超えていた。その後、少子化に日本国籍取得、国際結婚の増加などが加わり02年には6000人を切っている。
一方で韓半島に民族的ルーツを持つ児童生徒数の総体は現在、約1万5000人と推計されている。市外教としてもなかなか目に見えにくい存在となっている重国籍者の実態把握がここ数年来の懸案となっていた。
市外協の松田香事務局長は「ダブルの子供たちが2つの民族のどちらも大切だと思えるよう『本名を呼び名乗る教育』指導の徹底に努め、全教職員の共通認識にしていきたい」と話している。教員向けの具体的な指導資料「在日外国人教育指導案」も6月にはできあがるという。
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大阪市外教とは
大阪市教育委員会の委託研究機関として在日外国人教育の研究、推進を行っている団体。大阪市内の公立幼・少・中・高校すべての教職員を会員としている。各校に外国人教育主担者を置き、主担当者を中心に活躍している。その数527人。
(2003.5.14 民団新聞)