予断排し制裁貫徹を
内外の国民は結束固めよ
強固な意志を世界に向けて
「4月にソウルにいった際、天安艦犠牲者の追悼所で献花した。胸が痛み、怒りがこみ上げた。北韓の暴挙は同じ民族として恥ずかしい。許せない。北韓や総連はいつものように、デッチ上げと騒いでいるが、一日も早く非を認め、謝罪すべきだ」(民団大阪・枚岡支部団員、張忠雄さん)。
「平和と核廃絶を願うヒロシマの団長として、北韓の蛮行を到底許せない。在日の歴史は戦争による犠牲の歴史だ。広島では多くの同胞が被爆した。戦争・武力挑発ほど憎むものはない。北韓は金正日独裁政権を解体し、平和に向かえと強く言いたい」(民団広島本部・権五源団長)。
「腹立たしい。この一語に尽きる。今回の暴挙には今までにない強い姿勢を示すべきだ。それは中国にも向けたい。耳と目と口があっても何もできない総連には、早く目を覚まし、正しい認識を持って欲しい。でなければ、総連との交流は今後、自粛せざるを得ない。民団大阪は卑劣な軍事蛮行に強く抗議していく」(民団大阪本部・金漢翊団長)。
民団団員や在日同胞の憤りは根深い。できることは限られているとしても、「自分たちに課せられるのは、軍事挑発を絶対許さないとの、明確で強固な意志を北韓や国際社会に届けることだ。これができなければ、在日同胞の存在意義にかかわる」(民団宮城本部・李根団長)との思いは募っている。
北韓の軍事的蛮行を糾弾し、韓半島の平和を守る集会・行進が行われた5日は、哨戒艦「天安」が撃沈されてから71日、多国籍の軍民合同調査団の公式発表から16日が経っている。衝撃波を正面から受けとめつつ、韓半島南北と周辺情勢を冷静に判断した上での、絶対許せないとの意志を示す行動だった。
団員たちは当初から、天安艦事態が北韓の犯行であることを疑ってはいない。ただ、それがどう科学的かつ客観的に裏づけられるのかを見守り、結果発表がどんな影響を内外にもたらすのか見極めようとしてきた。
この間、北韓は天安艦事件を韓国側の捏造だとし、制裁には制裁で応じ全面戦争も辞さないなどと騒ぎ立ててきた。中国・ロシアは慎重姿勢を示し、特に中国は韓国・米国・日本に強く自制を求めている。
加えて、さる2日の統一地方選挙で与党ハンナラが大敗を喫したのは、李明博政府の対北政策に対する批判の表明であり、今後の対北制裁の推進力が弱まるのではないか、との観測もしきりと流れはじめていた。
6・5行動は、北韓独裁を糾弾する一方、日本社会に韓国との協調強化を訴え、総連系同胞にはともに立ち上がることを呼びかけた。だが、最も重要なメッセージは、韓国の政府と国民に毅然とした対応を求め、内外国民の結束を促すところにあったと言える。
韓国政府は天安艦問題を国連安全保障理事会に提起した。安保理による新たな制裁決議は、中国の慎重姿勢によって困難としても、北韓を非難する一般決議あるいは安保理議長声明の採択は必ず勝ち取る構えだ。
核実験や弾道ミサイル発射によるこれまでの、安保理レベルの対北制裁決議をより厳格に実施するためにも、中国にタガをはめるためにも譲れない一線である。
政治的な葛藤超えて毅然と
北韓独裁政権を後悔させ、政策を転換させるためには、国際世論の後押し、なかでも、それぞれの国情から北韓を擁護するか、制裁に消極的な諸国に理解、翻意を求めねばならない。それを可能にするのは、政治的な葛藤を超えた韓国国民の強力な意思だ。
与党の敗北は、党運営や候補公認過程をめぐる内部紛争、世宗市問題など内政上の隘路、世論調査が優勢を示していたゆえの油断など、いくつかの要因が重なっている。
もちろん、不測の事態を招きかねない制裁強化に反対し、南北緊張緩和を求める世論も作用した。だが、これの選挙への影響については、今後より精密に検証する必要がある。何よりも、対北姿勢で国内に亀裂が広がることを抑制する、本格的なシステムの稼働が求められよう。
在日2世で山梨県立大学国際政策学部の徐正根准教授は、「市場の混乱や選挙結果で対応が変わるような軽々しい態度では、国民の理解と信頼、支持は得られないだろう」と述べ、こう問いかける。
「どういう国づくりをするにしろ、南北問題の『解決』はその大前提になる。理想主義的な太陽政策を破棄して現実主義的な路線を採択した以上、今回のような事態は当然想定し得ることであった。現在、国際的な圧力をかけようとしているが、核に対応した軍事オプション、混乱収拾のシナリオ、経済的負担の甘受など、最悪の場合に備えてどのようなプランが用意されているのか」
李明博大統領は5月24日の国民向け談話で、「軍にも過ちがあった」ことを認め、綱紀再確立・改革加速化を通じ、戦力を画期的に強化することを約束した。李大統領は談話発表以前に、「北韓という好戦的な存在を等閑視していた」と述懐し、指導層・国民に北韓に対する意識の覚醒を促した。
天安艦事件を今後の戒めとするには、この蛮行が今後、北韓によって引き起こされるであろうあらゆる事態の、小さな現われに過ぎないとの意識のもとに、万全の安保体制を確立することだ。
北韓の数ある凶行のなかでも天安艦撃沈は、青瓦台襲撃ゲリラ事件(68年)、アウンサン廟爆殺事件(83年)、大韓航空機爆破事件(87年)など、南北が敵対一辺倒とも言えた80年代までのそれとは次元が異なる。
90年代早々から南北は「南北基本合意書」・「韓半島非核化共同宣言」(ともに92年2月発効)の締結交渉を推進し、それ以降、中断事態があったものの交流・協力を深め、金大中・盧武鉉両政府の10年間にわたる「太陽政策」の下で北韓は、韓国からの莫大な支援を享受してきた。天安艦撃沈は、こうした20年にわたる韓国側の関係改善への努力に、決定的に背信するものだ。
「民団組織もタガ締めて」
在日同胞社会においても、韓国における努力に歩調を合わせ、91年の世界卓球選手権千葉大会の共同応援事業を皮切りに、民団は総連との親睦・人道・福祉・文化の分野で協力・交流を進めてきた。06年の5・17事態以降、縮小したとはいえ、それは今でも続いている。総連は今回も、北韓の主張をオウム返しするにとどまっている。金大阪団長の言葉にもあるように、今後は総連との交流を徹底して自粛せざるを得なくなろう。
「日本においても北韓の工作は強化されるはず。民団は組織のタガを引き締めるとともに、総連など従北勢力の動向に目を光らせ、適切な具体的措置をとるべきだ」。これは元総連幹部たちからの忠告である。如何に時間がかかろうと、今度ばかりは北韓が天安艦事件を謝罪し、責任者を処罰するまで、手を緩めるわけにはいかない。
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謝罪せよ!糾弾集会でアピール文を読み上げる鄭進民団団長 |
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集会で「北韓の軍事テロ断固糾弾」の意思をひとつにした |
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抗議のカードをかかげ、シュプレヒコールをしながら行進する団員たち |
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沿道の人たちからも賛同の声が寄せられた |
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鄭進団長(中央)ら三機関長、常任顧問を先頭に行進した。右端の韓禄春中央常任顧問は88歳ながら大阪から駆けつけ、最後まで歩き通した |
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太極旗と民団旗を打ち振り進む平和行進の隊列 |
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女性たちも抗議の声を張り上げて |
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宣伝カーでシュプレヒコールを先唱する青年会員 |
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集会では殉国将兵への弔慰募金も |
(2010.6.9 民団新聞)